全身PETによるがんスクリーニング

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作成： 1996/12/24 山本　和高データ番号　　　：030013 全身PETによるがんスクリーニング目的　　　　　　：フッ素18標識フルオロデオキシグルコースを用いた全身PET検査によるがんスクリーニング放射線の種別　　：ガンマ線,陽電子,消滅放射線放射線源　　　　：¹⁸F 利用施設名　　　：山中湖クリニック応用分野　　　　：医学、診断、農学、生物学概要　　　　　　：　フッ素(F)の放射性同位元素であるF-18で標識したフルオロデオキシグルコース(F-18 FDG) を用いて全身の PET 検査を行った結果、治癒可能な早期のがんを簡単に発見することができ、F-18 FDGを用いる全身 PET 検査は、がんのスクリーニングに有用である。詳細説明　　　　： 1．1 度の検査でいろいろながんがわかる　がん(悪性腫瘍)は、我が国における死因の第 1 位であり、4 人に 1 人はがんで亡くなっている。現時点で、がんの治癒率をあげるためには早期発見が最も重要である。悪性腫瘍は、がんの種類にあまり関係なく、一般的にブドウ糖代謝が亢進している。フッ素(F)の放射性同位元素である F-18 で標識したフルオロデオキシグルコース(FDGと略)はブドウ糖と同様に悪性腫瘍に取り込まれる性質があり、ポジトロンカメラで撮影する PET 検査は、肺癌においては 90% 程度の検出率が報告されており、CT など他の画像検査では診断できなかった小さなリンパ節転移などの診断にも優れている。脳腫瘍、肝細胞癌、膵癌、悪性リンパ腫など様々な悪性腫瘍の診断にも有効で、直径 1 cm以下のかなり小さな腫瘤も簡単に見つけることができると報告されている。胃癌、肺癌、乳癌、子宮癌等において、それぞれのがんを対象とするがん検診が行われているが、F-18 FDG を用いて全身 PET 検査を実施すれば、一度に全身のがんを調べることが可能になる。　 2．注射 1 回、あとはねているだけ　検査法は、空腹時に FDG を静脈内に注射し、安静にして約 45 分待ち、排尿後にポジトロンカメラのベッド上に仰臥し、撮像を開始する。大腿部から頚部までの撮像に要する時間は 30～45 分程度である。この検査による被曝線量は全身に対し、3.6mGy 程度と微量である。図 1 に全身 PET 診断装置(ポジトロンカメラ)の外観を示す。図1　ポジトロンカメラ。（原論文1より引用）　ベッド上にじっと寝ているだけで検査は完了する。　 3．小さな早期のがんをみつけることができる　山中湖クリニックでは 1105 名に対し、FDG を用いた全身 PET 検診を 1138回行い、肺癌 2 例、大腸癌 2 例、乳癌、甲状腺癌、胃癌、腎癌、悪性リンパ腫各1 例の計 9 例の悪性腫瘍を発見した。図 2 は 55 才、女性の頚～下腹部の PET投影像と冠状断層像で、左甲状腺癌(矢印)が発見された。一番小さなものは直径9 mmの肺癌であった。悪性リンパ腫を除いて外科的切除が行われ、全例でリンパ節転移はなく、完全治癒的手術ができたと報告されており、FDG を用いた全身 PET 検診が治癒可能な早期がんの検出に役立つことが示された。図2　女性(55才)の FDG を用いた頚～下腹部 PET 投影像(左)、冠状断層像(右)。（原論文2より引用）左右の写真で左甲状腺癌(矢印)が明瞭に描出されている。　全身 PET によるがんスクリーニングの最大の利点は、非侵襲的に臓器の区別なく広い範囲のがんを検索できることである。また、活動的な肺結核、サルコイドーシス(図 3)といった炎症性疾患や、耳下腺腫瘍など一部の良性腫瘍も描出される。図3　男性(72才)の FDG を用いた頚～下腹部 PET 投影像(左)、冠状断層像(右)。（原論文2より引用）　サルコイドーシスの病変にも FDG の集積がみられる。　 4．がん以外の病気の診断にも役立つ　脳梗塞や痴呆の原因となるアルツハイマー病の早期診断にも有用。また、狭心症など心疾患の診断にも利用される。このように、FDG を用いた PET 検査は、がんのスクリーニングばかりではなく、脳疾患や心疾患の検出にも有用である。コメント　　　　：　前立腺癌では異常を示さない割合が高く、膀胱腫瘍は尿中に放射能が排泄されるため診断困難である。また、正常の脳灰白質への集積も強いので脳腫瘍の検出には磁気共鳴画像(MRI)の方が有用である。FDG を用いた全身 PET 検診で全ての悪性腫瘍が診断できるわけではない。また、現状では検査費用がかなり高価で,PET検査の実施できる施設数も非常に限られているが、がんのスクリーニング検査としては最も優れた検査法と考えられ、今後の普及が期待される。原論文１ Data source 1：全身用ポジトロンECT装置 HEADTOME-Ⅳ SET-1400W-10 ㈱島津製作所、島津メデイカル㈱パンフレット原論文２ Data source 2： PET を用いた検診システムの現況　　　　　太田　明、大塚　康世、中島　恭彦、清王　尊仁、内田　雅弘、他山中湖クリニック映像情報 28,pp.1073-1078,1996 参考資料１ Reference 1：全身 PET によるがんスクリーニングの試み安田　聖栄、井出　満、高木　繁治、正津　晃山中湖クリニック核医学 33,pp.1066-1071,1996 キーワード：がん検診,cancer screening、全身PET,wholebody positron emission tomography、フッ素 18 標識フルオロデオキシグルコース,F-18 fluorodeoxyglucose、肺ガン,lung cancer,悪性腫瘍、 malignant tumor, 甲状腺癌、struma,サルコイドーシス、surcoidosis,痴呆、dementia, 分類コード：030102,030301,030401,040301
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