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作成: 1996/12/01 鷲野 弘明

データ番号   :030008
骨シンチグラフィ用注射剤
目的      :骨シンチグラフィ用注射剤の特徴の説明
放射線の種別  :ガンマ線
放射線源    :99mTc
応用分野    :医学、診断、検査

概要      :
 骨シンチグラフィ用注射剤として、我が国ではヒドロキシメチレンジホスホン酸テクネチウム(99mTc)注射液とメチレンジホスホン酸テクネチウム(99mTc)注射液の2種類が多く利用されている。これら注射剤は、静脈内投与後速やかに全身の骨組織に分布し、投与後3時間程度で高画質の骨シンチグラムが得られる。特に骨の病的部位に高集積を示すため、癌の骨転移の早期診断、骨髄炎・関節炎の診断、骨折の部位診断や経過観察などに有用である。

詳細説明    :
 骨シンチグラフィ用放射性医薬品として、臨床的に使用できるものは85Sr,87mSr,157Dyキレートおよび99mTcリン化合物がある。この中で入手および標識のし易さ、像の鮮明さ、被曝線量、価格の点より99mTcリン化合物が最も優れている。そこで骨シンチグラフィ用注射剤として、我が国では、ヒドロキシメチレンジホスホン酸テクネチウム(99mTc)注射液(以下99mTc-HMDP注射液)とメチレンジホスホン酸テクネチウム(99mTc)注射液(以下99mTc-MDP注射液)の2種類が製造販売されている。
 これら注射剤は、静脈内に注射されると速やかに全身の骨組織に分布し、血液、腹腔内臓器や軟部組織から速やかに消失する。従って、一般に投与後3時間程度で画質の良い骨シンチグラムが得られ、悪性腫瘍の骨転移の早期診断をはじめ、骨髄炎、関節炎の診断、骨折の部位診断や経過観察など種々の骨疾患の診断に有用である。これら注射剤中のテクネチウム-99m(99mTc)は、物理的半減期(6.01時間)が短くβ線を放出しないため患者の被曝が極めて少なく、放出されるγ線エネルギー(140.5keV)がシンチレーションカメラに適しているため鮮明なシンチグラムが得られる。99mTc-HMDP注射液と99mTc-MDP注射液は、ほとんど同じ化学的特徴及び臨床的有用性を有するため、以下では99mTc-HMDP注射液を例に説明する。

1. 99mTc-HMDP注射液の組成
 本注射液は、水性の注射液で、99mTcをヒドロキシメチレンジホスホン酸テクネチウムの形で含む。注射液の組成や特徴は、表1に示した。

表1 ヒドロキシメチレンジホスホン酸テクネチウム(99mTc)注射液の組成・性状(原論文2より引用)
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組成   99mTcとして(検定日時において)           370 MBq/ml
     メタン-1-ヒドロキシ-1,1-ジホスホン酸ジナトリウム  0.127 mg/ml
     添加物  無水塩化第一スズ              0.059 mg/ml
     添加物  アスコルビン酸               0.157 mg/ml
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性状   無色澄明の液
pH   4.0〜6.0
浸透圧比 約 0.5(0.9 %塩化ナトリウム溶液に対する比)
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2. 99mTc-HMDP注射液の効能又は効果
 骨シンチグラムによる骨疾患の診断。

3. 99mTc-HMDP注射液の用法及び用量
 通常、成人には本注射液555〜740 MBqを肘静脈内に注射し、1〜3時間の経過を待ってシンチレーションカメラにより被検部の骨シンチグラムをとる。投与量は、年齢、体重により適宜増減する。

4. 99mTc-HMDP注射液の薬効薬理
 本注射液の骨に取り込まれる機構の全容は、明らかではない。骨親和性物質の集積増加の見られる病変部には、血流の増加があることが知られている。また、陰イオンとしての性質を有することから、骨のハイドロキシアパタイト結晶にイオン結合することにより、骨、特に骨新生の盛んな部分に多く集まるものと考えられる。

5. 99mTc-HMDP注射液の体内薬物動態
 各種骨疾患患者について試験した結果、本注射液は投与後30分まで急速に血液より消失し、それ以降はややゆっくりと減少した。また、投与後短時間で骨に集積し、他臓器への集積は少なかった。尿中排泄は、投与後2時間まで増加し(投与量の約40 %)、以後増加はほとんど見られなかった。

6. 99mTc-HMDP注射液の臨床適用
 本注射液が、臨床試験において有効と報告された適応症は次のとおりである。
(1) 転移性骨腫瘍 (302例/302例、有効率 100 %)
  原発:肺癌、乳癌、前立腺癌、胃癌、子宮癌、膀胱癌、他
(2) 原発性骨腫瘍 (31例/31例、有効率 100 %)
  骨肉腫、骨髄腫、他
(3) その他の骨疾患(79例/79例、有効率 100 %)
  骨折、関節炎、骨髄炎、他
 臨床試験全例において良好なシンチグラムが得られた。代表的なシンチグラムの例を図1に示す。


図1 肺癌の骨転移患者の99mTc-HMDPシンチグラム(原論文1より引用)

 図1の正常例では、ほとんど99mTc-HMDP蓄積が認められない、しかし肺癌の骨転移があるような場合、右側の肺癌骨転移例写真の前面像及び後面像の肋骨及び胸椎部分など矢印なる各所に顕著な集積が認められ、転移の存在が指摘できる。

7. 99mTc-HMDP注射液の副作用
 臨床試験及び使用成績調査(全12,387例)において副作用が認められた例はなかった。また、平成7年7月現在、99mTc-HMDP注射液では、副作用自発報告においててんかん様発作、チアノーゼ、徐脈、嘔吐、悪心、冷汗、気分不良、発疹が各1件、血圧低下が2件報告されている。

コメント    :
骨シンチグラフィで病巣が描出できてもその正常を知るのは困難で、骨折か炎症か腫瘍かを確定診断するには、他の検査法との併用が重要である。骨シンチグラフィ用医薬品は、腎から速やかに排泄されるので腎の形態・機能の診断にも利用できる。

原論文1 Data source 1:
クリアボーン注、放射性医薬品基準 ヒドロキシメチレンジホスホン酸テクネチウム(99mTc)注射液
日本メジフィジックス株式会社
パンフレット

原論文2 Data source 2:
放射性医薬品基準 ヒドロキシメチレンジホスホン酸テクネチウム(99mTc)注射液
(社)日本アイソトープ協会
インビボ放射性医薬品添付文書集,平成7年7月, p.110-111

参考資料1 Reference 1:
福永仁夫 他
核医学, 18,p.863-867, 1981

参考資料2 Reference 2:
鳥塚 莞爾、菅原 努、脇坂 行一 編
臨床核医学(南江堂,東京), p.441-442, 1981

参考資料3 Reference 3:
芝辻 洋 他
現代の診療, 23,p.701-705, 1981

キーワード:放射性医薬品, ヒドロキシメチレンジホスホン酸テクネチウム(99mTc)注射液, メチレンジホスホン酸テクネチウム(99mTc)注射液, 骨シンチグラフィ, 骨疾患, 癌, 骨転移, radiopharmaceutical, 99mTc-HMDP, 99mTc-MDP, bone scintigraphy, bone diseases, cancer, bone metastasis
分類コード:030502,030301,040204

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