放射線治療について

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作成： 1996/09/05 加藤　博敏データ番号　　　：030005 放射線治療について目的　　　　　　：放射線治療に関する概説放射線の種別　　：エックス線,陽子,重イオン放射線源　　　　：X線管、陽子加速器、重イオン加速器応用分野　　　　：医学概要　　　　　　：　放射線治療とは、物質内に電離を引き起こす電離放射線を用いて、病巣の組織を障害させる治療法である。放射線治療の歴史は、レントゲンがＸ線を発見した1895年から始まっており、創成期から既に癌（咽頭癌、皮膚癌）の治療法として応用され、その後も様々な癌の治療法として発展してきている。ここで使用する放射線の種類、放射線治療法による癌の治癒率さらに放射線を照射する方法について紹介する。詳細説明　　　　：　放射線治療は、物質内に電離を引き起こす電離放射線を用いて、病巣の組織を障害させる治療法である。電離性放射線の種類、選択した放射線に対応する治療法の分類さらに癌の治療効果を示す治癒率について紹介する。また、使用する放射線の効果を引き出す照射方法についても紹介する。　 1.放射線の分類　治療に使われている放射線を分類して図１に示す。図1　放射線の種類（原論文1より引用）　放射線は:[電磁波]:(:[X線]:、:[γ線]:）と:[粒子線]:（:[電子]:、:[陽子]:、:[中性子]:、:[パイ中間子]:、:[重イオン]:）とに分けられる。前者は、エネルギーのみの伝達であるが、後者は、エネルギー伝達とともに電子や原子が注入されるという特徴がある。　 2.放射線治療法の分類　放射線治療には、大きく分けて２つの分類法があり、目的別分類と手段別分類とに分けられる。 1)　目的別分類：次の3種の目的がある。　　①:[根治照射]:：治癒手術可能症例に対して根治を目指して行なう　　②:[準根治照射]:：局所進展例で治癒手術が不可能な症例に対して行なわれる　　③:[症状寛解照射]:：疼痛等の癌由来の症状を緩和する目的で行なう 2)　手段別分類：次の3種の手段がある。　　①:[外部照射]:法　　②:[小線源照射]:法(腔内照射、組織内照射) 　　③:[RI投与]:法　 3.照射方法　手段別分類で分けた照射方法について説明する。 1):[外部照射]:法　体外から病巣をねらって照射する方法を外部照射法という。図1の第３列Ｘ線、γ線、電子線が今まで一般的に用いられたが、近年、病巣への線量集中性に優れた特性を持つ粒子線による治療の研究が世界的に行なわれるようになり、良好な成績が集積されつつある。 2):[小線源照射]:法(腔内照射、組織内照射) 　子宮、膣、食道などの体腔内に:[癌]:が存在する場合、体腔内の癌の近傍に放射線源を位置させて治療する方法を腔内照射という。また、舌癌のように体表に存在する場合に腫瘍組織内に放射線源を入れる方法を組織内照射という。ともに線量の集中性に優れた方法であり、総称して小線源照射法と呼ぶ。 3):[RI投与]:法　:[甲状腺癌]:に対する¹³¹Iの内服治療が代表である。:[ヨウ素]:が甲状腺に選択的に取り込まれることを応用し¹³¹Iから出るβ線による組織破壊を目的とした治療法である。例えば、甲状腺全摘後に低線量の¹³¹Iを投与し、全身スキャンを行い、甲状腺部に残存した場合や転移巣が認められた場合には、高線量の¹³¹Iを内服させて治療を行なう。　 4.放射線治療の実際　:[癌]:の:[放射線治療]:に関するアメリカの統計(1993年)では、患者総数110万人、放射線単独治療が11%、手術、化学療法との併用を合わせて一次治療の段階で26%に利用されていること、また再発、転移例を含めると癌患者の全経過中の放射線治療利用率は40～50%であることが示されている。　国際原子力機関からの報告(IAEA Report 1994)では、癌の治療率についての統計が出されており、それを表１に示す。表1　癌の治癒率（原論文2より引用） ------------------------------------------------- 腫瘍が局所に止まっているもの　　 65% 　　手術単独で治癒 22% 放射線単独で治癒　　　　　　 12% 手術＋放射線で治癒　　　　　 6% 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　治癒可能　　　　　　 40% 治癒不能 25% ------------------------------------------------- 腫瘍が手術不能または遠隔転移を伴うもの 35% 集学治療で治癒 5% 　治癒可能 5% 治癒不能 30% ------------------------------------------------- 合計 100% 治癒可能　　　　　　　　　　　　　 45% 　　　　治癒不能　　　　　　　　　　　　　 55% ---------------------------------------------- 　癌の:[治癒率]:については、全体で45%が治癒しているが、手術単独で22%、放射線治療単独で12%、手術と放射線で6%、集学的治療で5%が治癒している。日本での放射線治療法の利用度については、1990年の日本放射線腫瘍学会による実態調査によると、全癌患者の26%が放射線治療を受けている。コメント　　　　：　放射線治療を遂行するに当たり、まず病変の進展度や全身状態、年齢等に応じて根治、準根治、症状寛解の内のどの目的を達成するか明確にすることが重要である。具体的な治療手段は、臓器および癌の種類により既に確立または研究され確立されており、外部照射、小線源照射、RI投与、のいずれかが行なわれることになる。原論文１ Data source 1：膵癌の重粒子線治療加藤　博敏、辻井　博彦、森田　皓三放射線医学総合研究所　重粒子治療センター胆と膵,16(6),pp.501-508,1995 原論文２ Data source 2：難治癌の対策-臨床面から- 辻井　博彦放射線医学総合研究所　重粒子治療センター癌の臨床,41(6),pp.731-735,1995 参考資料１ Reference 1：放射線治療の適応の選択森田　皓三愛知県がんセンター癌放射線療法　篠原出版参考資料２ Reference 2：放射線治療の現状と将来辻井　博彦放射線医学総合研究所　重粒子治療センター癌の臨床,39(11),1993 参考資料３ Reference 3：放射線治療実態調査委員会　編、日本の放射線治療の現状-1990年における実態調査の概要-,pl-30,日本放射線腫瘍学会発行,1992 参考資料４ Reference 4：重荷電粒子線治療辻井　博彦、辻　比呂志、奥村　敏之放射線医学総合研究所　重粒子治療センター画像医学プログレスシリーズ４　放射線腫瘍学・免疫核医学　中山書店キーワード：放射線治療,radiotherapy、根治照射,curative radiation、準根治照射,semiradical radiation、症状寛解照射,palliative radiation、外部照射法(電磁波、粒子),external radiation、小線源照射法(腔内照射、組織内照射),internal radiation,RI投与法,radioisotope injection 分類コード：030298
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