照射食品の検知公定法（CEN標準法の改定、コーデックス標準分析法）

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作成： 2005/02/04 等々力節子データ番号　　　：020242 照射食品の検知公定法（CEN標準法の改定、コーデックス標準分析法）目的　　　　　　：検知法技術(標準分析法)の開発放射線の種別　　：ガンマ線,電子放射線源　　　　：電子加速器、⁶⁰Co線源線量（率）　　　：0.1-10kGy 照射条件　　　　：常温(空気中)、冷凍、冷蔵応用分野　　　　：食品照射、食品製造、食品衛生概要　　　　　　：　EUの標準化委員会は、1996年12月に、2つのESR法、２つの化学分析法、食品に付着した無機物を対象とした熱発光法の5つの標準分析法を作成した。その後、2003年までに、既存の分析法の改訂と、糖ラジカルのESR法、DNAコメットアッセイ、DEFT/APC法、光励起発光法の４つの標準分析法を新たに制定した。これら合計９つの分析法はコーデックス標準分析法にも採択されている。詳細説明　　　　：　欧州連合では、1999年に食品照射に関する統一規制を制定しているが、その前提条件として、表示の裏付けとして、検知技術の標準化が不可欠の課題であった。欧州連合の標準化委員会:BCR(Community Bureau of Reference)は、プロジェクト研究（BCRプロジェクト:1990-1993）を実施し、既往の研究成果の整理につづいて、有望な方法についてのプロトコール作成と試験室間共同試験を行なった。　　このプロジェクトでは、ESR法５種類、熱発光（TL）法、炭化水素法、2-アルキルシクロブタノン法、微生物を分析するDEFT/APC法2種類を含む合計10種類のプロトコールが作成された。平行して行われたFAO/IAEA主催の国際研究プロジェクト(ADMIT；1990-1994)の結果もふまえ、ヨーロッパ標準分析委員会（CEN）は、1996年12月に、EN1784-1788までの５つの標準分析法（ESR法2種、TL法、化学分析法2種）を制定した。（本データベース　020210）　新たに追加された分析法：　　2003年までに、既存の分析法の改定と新たな4つの分析方法の追加が行われた。追加された分析法は、３番目のESR法として、乾燥果実などの食品を対象に糖由来のラジカルを検出する方法、測定試料の前処理が簡便な光励起発光法の他、DNAコメットアッセイ法やDEFT/APC法など、照射処理に対する特異性の低い方法がスクリーニング法として取り入れられている。これら分析法の原理は、データベースの他項も参照にされたい。　　また、2004年には、イギリスの公定法に採用されているLAL/GNB法がCEN標準に追加された。この方法はグラム陰性菌についてLimulus amoebocyte lysate（LAL＝リムルス）試験から得られるエンドトキシンユニットと生菌数（GNB:グラム陰性基菌数）との差を指標に、照射処理の可能性を判断するものである。　改訂された分析法の内容：　 EN1784　炭化水素法では、前処理法のオプションとしてその後の発展を考慮して、超臨界流体抽出法（SFE）などの情報が追加されている。　 EN1785　シクロブタノン法では、抽出法のオプションの他、分析対象食品として、2003年の改定でカマンベールチーズ、サケ肉（1kGy以上）が加えられた。　 EN1785　骨のESRラジカル測定は、1996年から改訂されていない。　 EN1786　セルロースラジカルの測定では、分析対象食品として、2000年にイチゴが追加された。　 EN1786　熱発光法では、2001年改定で、貝類、生鮮および乾燥野菜、青果物、バレイショが分析可能な品目に加えられると同時に、判別基準となるTL比を0.1に切り下げ、バレイショなど低線量照射農産物の再照射の線量を250Gyに設定している。貝類については従来の比重分配法に加え、酸分解抽出法を試料の精製法として認めている。　　2003年までに採択された９つの分析法は、Codex食品規格において、TypeⅡの参照試験法、または、規制や検査などの行政目的には有効なTypeⅢの試験法との位置付けで、Codex標準分析法（General Codex Methods for detection of irradiated Food）に採択されている。2003年改定の照射食品に関する一般規格基準（Codex STAN-106　2003）には、採択された標準分析法を必要に応じて照射後の検査に適用することが追加された。表１にこれらの関係をまとめ、分析対象食品と線量範囲を示した。ただし、ここに挙げられた食品は、試験室間共同試験の結果、妥当性が検証されているものであり、これ以外の応用の可能性を報告した論文が存在する。（表１）表1　ヨーロッパ標準法(CEN standards)とコーデックス標準分析法（策定途中のものも含む）方法分析法番号分析対象食品＊＊ Codex標準分析法における位置付けガスクロマトグラフによる炭化水素測定 EN　1784 (1996) (2003改定) 鶏肉(0.5)、豚肉(0.5)、牛肉(0.5)、アボガド(0.3)、マンゴ(0.3)、パパイア(0.3)、カマンベールチーズ(0.5) TypeⅡ　2001年採択 2-アルキルシクロブタノン類の分析（GC/MS） EN　1785 (1996) (2003改定) 鶏肉(0.5)、豚肉(１)、液体全卵(１) カマンベールチーズ(１)、サケ(１) TypeⅢ　2001年採択骨のESR測定 EN　1786 (1996) 鶏肉(0.5)、肉(0.5)、魚(マス) (0.5)、カエルの足(0.5) TypeⅡ　2001年採択セルロースのESR 測定 EN　1787 (1996) (2000改定) パプリカ粉末(5)、ピスタチオナッツの殻(2)、イチゴ(1.5) TypeⅡ　2001年採択ケイ酸塩無機物の熱ルミネッセンス測定（TL） EN　1788 (1996) (2001改定) ハーブ・スパイス類(6)、エビ(1) 貝類一般(0.5)、生鮮(1)及び乾燥野菜果物(8)、ジャガイモ(0.05) TypeⅡ　2001年採択　 TypeⅡ　2003年採択＊糖結晶のESR測定 EN　13708 (2001) 乾燥パパイア(3)、乾燥マンゴ(3)、乾燥イチジク(3)、干ブドウ(3) TypeⅡ　2003年採択光励起ルミネッセンス（PSL） EN　13751 (2002) ハーブ・スパイス類(10)、貝類(0.5) TypeⅢ　2003年採択直接フィルター蛍光観測法/プレート法による微生物測定(DEFT/APC)　　　(スクリーニング) EN　13783 (2001) ハーブ・スパイス類(5) TypeⅢ　2003年採択 (スクリーニング法) DNAコメットアッセイ（スクリーニング） EN　13784 (2001) 鶏肉(1)、豚肉(1)、植物細胞（種子類）(1) TypeⅢ　2003年採択 (スクリーニング法) LAL/GNB法（スクリーニング） EN　14569 (2004) 鶏肉　　　＊2001年改定を反映＊＊CEN標準法の中で妥当性が検証されたものみを示した、カッコ内の数字は検出限界線量(kGy) コメント　　　　：　　検知法開発は、1990年代に主要な部分が終了したと思われる向きもあるが、その後も標準分析法の追加や改訂が実施されている。これは、線量範囲や成分の異なる多種類の照射食品について、複数の分析法が求められている結果であるとも言える。また、新たに追加された分析法について言えば、照射処理に対する特異性が低くても簡便性や迅速性などが優先されて標準分析法に取り入れられている。原論文１ Data source 1： Foodstuffs. Detection of irradiated food containing fat. Gas chromatographic analysis of hydrocarbons Anonymous European Committee for Sanitation, Brussels Belgium EN 1784:2003E 原論文２ Data source 2： Foodstuffs. Detection of irradiated food containing fat. Gas chromatographic analysis of hydrocarbons Anonymous European Committee for Sanitation, Brussels Belgium EN 1784:1996E 原論文３ Data source 3： Foodstuffs. Detection of irradiated food containing fat. Gas chromatographic/mass spectrometric analysis of 2-alkylcyclobutanones (2003) Anonymous European Committee for Sanitation, Brussels Belgium EN 1785:2003E 原論文４ Data source 4： Foodstuffs. Detection of irradiated food containing fat. Gas chromatographic/mass spectrometric analysis of 2-alkylcyclobutanones Anonymous European Committee for Sanitation, Brussels Belgium EN 1785:1996E 原論文５ Data source 5： Foodstuffs. Detection of irradiated food containing bone. Method by ESR spectroscopy Anonymous European Committee for Sanitation, Brussels Belgium EN 1786:1996E 原論文６ Data source 6： Foodstuffs. Detection of irradiated food containing cellulose by ESR spectroscopy Anonymous European Committee for Sanitation, Brussels Belgium EN 1787:2000E 原論文７ Data source 7： Foodstuffs. Detection of irradiated food containing cellulose by ESR spectroscopy Anonymous European Committee for Sanitation, Brussels Belgium EN 1787:1996E 原論文８ Data source 8： Foodstuffs. Thermoluminescence detection of irradiated food from which silicate minerals can be isolated Anonymous European Committee for Sanitation, Brussels Belgium EN 1788:2001E 原論文９ Data source 9： Foodstuffs. Thermoluminescence detection of irradiated food from which silicate minerals can be isolated Anonymous European Committee for Sanitation, Brussels Belgium EN 1788:1996E 原論文10 Data source 10： Foodstuffs. Detection of irradiated food containing crystalline sugar by ESR spectroscopy Anonymous European Committee for Sanitation, Brussels Belgium EN 13708:2000E 原論文11 Data source 11： Foodstuffs. Detection of irradiated food using photostimulated luminescence Anonymous European Committee for Sanitation, Brussels Belgium EN 13751:2002E 原論文12 Data source 12： Foodstuffs. Detection of irradiated food using Direct Epifluorescent Filter Technique/Aerobic Plate Count (DEFT/APC). Screening method Anonymous European Committee for Sanitation, Brussels Belgium EN 13783:2001E 原論文13 Data source 13： Foodstuffs. DNA comet assay for the detection of irradiatied foodstuffs. Screening method Anonymous European Committee for Sanitation, Brussels Belgium EN 13784:2001E 原論文14 Data source 14： Foodstuffs. Microbiological screening for irradiated food using LAL/GNB procedures Anonymous European Committee for Sanitation, Brussels Belgium EN 14569:2004E キーワード：検知、ESR、熱発光法、炭化水素法、シクロブタノン法、DNAコメットアッセイ、DEFT/APC、光励起発光法、スクリーニング法、ヨーロッパ(CEN)標準法、コーデックス標準分析法 detection, ESR,　Thermoluminescence,　Hydrocarbon analysis, Cyclobutanone analysis, DNA comet assay, DFT/APC, Photosimulated Luminescence, CEN standard protocol, General Codex Methods for the Detection of Irradiated foods 分類コード：020404
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方法	分析法番号	分析対象食品＊＊	Codex標準分析法における位置付け
ガスクロマトグラフによる炭化水素測定	EN　1784 (1996) (2003改定)	鶏肉(0.5)、豚肉(0.5)、牛肉(0.5)、アボガド(0.3)、マンゴ(0.3)、パパイア(0.3)、カマンベールチーズ(0.5)	TypeⅡ　2001年採択
2-アルキルシクロブタノン類の分析（GC/MS）	EN　1785 (1996) (2003改定)	鶏肉(0.5)、豚肉(１)、液体全卵(１) カマンベールチーズ(１)、サケ(１)	TypeⅢ　2001年採択
骨のESR測定	EN　1786 (1996)	鶏肉(0.5)、肉(0.5)、魚(マス) (0.5)、カエルの足(0.5)	TypeⅡ　2001年採択
セルロースのESR 測定	EN　1787 (1996) (2000改定)	パプリカ粉末(5)、ピスタチオナッツの殻(2)、イチゴ(1.5)	TypeⅡ　2001年採択
ケイ酸塩無機物の熱ルミネッセンス測定（TL）	EN　1788 (1996) (2001改定)	ハーブ・スパイス類(6)、エビ(1) 貝類一般(0.5)、生鮮(1)及び乾燥野菜果物(8)、ジャガイモ(0.05)	TypeⅡ　2001年採択　 TypeⅡ　2003年採択＊
糖結晶のESR測定	EN　13708 (2001)	乾燥パパイア(3)、乾燥マンゴ(3)、乾燥イチジク(3)、干ブドウ(3)	TypeⅡ　2003年採択
光励起ルミネッセンス（PSL）	EN　13751 (2002)	ハーブ・スパイス類(10)、貝類(0.5)	TypeⅢ　2003年採択
直接フィルター蛍光観測法/プレート法による微生物測定(DEFT/APC)　　　(スクリーニング)	EN　13783 (2001)	ハーブ・スパイス類(5)	TypeⅢ　2003年採択 (スクリーニング法)
DNAコメットアッセイ（スクリーニング）	EN　13784 (2001)	鶏肉(1)、豚肉(1)、植物細胞（種子類）(1)	TypeⅢ　2003年採択 (スクリーニング法)
LAL/GNB法（スクリーニング）	EN　14569 (2004)	鶏肉