ESR法およびTL法による照射食品の検知法

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作成： 1998/10/30 田辺　寛子データ番号　　　：020123 ESR法およびTL法による照射食品の検知法目的　　　　　　：照射食品の検知のためのESR法およびTL法の検討放射線の種別　　：ガンマ線放射線源　　　　：⁶⁰Co線源(185TBq) 線量（率）　　　：0.23-12kGy 利用施設名　　　：東京都立産業技術研究所放射線利用施設 ⁶⁰Co照射施設照射条件　　　　：室温、低温、空気中応用分野　　　　：食品照射、照射食品の検知概要　　　　　　：　照射食品の検知法として、骨付き鶏肉を用いてESR法の検討を行った.また初期線量推定では線量付加法を試みた.TL法では、黒コショウ等の香辛料およびモデル系として石英砂に対して標準化法を適用し、その実用的可能性,判別のために有効な温度範囲および照射前歴効果について検討した. 詳細説明　　　　：　 1.電子スピン共鳴吸収法（ESR法）による照射鶏肉の線量の推定　　照射骨付き鶏肉の線量を推定するため、ESR法の適用を試みた。検知法の実用性の観点から、試料調整法、線量付加法を用いる際の具体的条件について検討し、以下のような結論が得られた。　 ①ラジカル量を、ピ-クからピ-クへの高さで表し、試料の調整は、骨端を取り除き、骨幹中央部をよく削り取り、緻密骨を取り出した方が誤差は少なくなる。　 ②試料の大きさは、1～2mmが妥当である。ESR装置の磁場の均一性を考えて、試料量は約100mgが適当である。　　 ③個体差の影響をなくすために、同一の骨試料から分取した多数の試料について測定する。　 ④0.23kGyから12kGyの範囲では、線量とシグナルの高さの間に直線関係が認められた(r=0.99)。経時変化では照射後数日間で10～20%、数カ月で30%近く減少した。その後は比較的安定した。　 ⑤線量付加法による照射線量推定の際には、付加線量は5kGy程度までとし、この範囲で1次回帰直線を適用する。　 ⑥同時照射法を用いた線量付加法は、実用上は簡便で迅速な方法である。　 ⑦シグナル強度の経時変化を考えると、どのような状況で保管されていたか等の条件を把握しておくことが重要である。図1　Estimation of irradiated doses by additive re-irradiation up to 5kGy.（原論文2より引用）　このようにして、3.0kGy、1.0kGy照射した試料に線量付加法を適用したところ、図1のように、3.4kGy、1.3kGyの値を得た。　 2.熱ルミネッセンス法(TL法)による照射食品の検知　　CENの標準分析法を黒コショウ等の香辛料及びモデル系として石英砂に対して適用し、その実用的可能性、判別のために有効な温度範囲及び照射前歴効果について検討した。　結果：　 ①TLの経日変化：コショウからの抽出鉱物の発光強度の経時変化を調べた所、5.2kGy照射では照射直後は減少が大きいが、照射後70日で安定してきた。3kGy照射試料では、1年4カ月経っても照射後70日の発光強度と変わらず、照射の有無の判別が可能なことが明らかである。　 ②TL曲線の特性：〇同じコショウの48日後のTL強度は10kGyまでは線量に依存しているが、抽出鉱物質の濃度や純度に差があるため、試料にはバラツキが大きいものもある。〇付着鉱物質が混合物であるため、産地や粒度の違いにより異なるTL発光パタ-ンを示すことを明らかにした。〇外国で入手した藻類や照射した赤とうがらしについてもTL測定が可能であった。いずれの試料でも230℃付近ピークと同時に、強度はいろいろであるが360℃付近にもはっきりとしたTLピークがみられた。　 ③標準化法：純粋な鉱物質を分離することが困難なため標準化法が適用される。照射後2年9カ月経過したコショウのTL比を図2に示す。図2　黒コショウのTL強度とTL比（原論文4より引用）　未照射試料のTL比は0.012～0.033となった。　 ④360℃ピークの分離：コショウのTLピークの経日変化を調べた結果、210～260℃ピークより360℃ピークの方が安定していた。24時間後のTL曲線は不安定である。そのため経時変化の少ない360℃ピークのTL強度を使う精度よい標準化法を石英砂を用いて検討した。360℃より低く、かつ消去すべきTLピーク温度より高い温度まで昇温し、その後同温度で10秒間保持し、冷却後再度50℃から450℃まで昇温し、TL測定をする360℃ピーク分離法を確立した。　 ⑤照射前歴効果：高線量照射された鉱物質はその照射前歴が記憶されるため、1kGy再照射時のTL強度も大きくなり、TL比は最初の線量と1:1対応ができなくなっている。図3-aにCEN法の石英砂のTL比を、図3　Effect of doses initially irradiated on TL ratio(glow 1/glow 2)of quartz（原論文3より引用）図3-bに1kGy再照射前に450℃3時間アニールしたTL比の結果を示す.低線量ではTL比は変わらないが高線量では明らかに照射前歴効果が小さくなり、特に360℃ピークではTL比も大きくなり、アニールによる効果が明らかになった。標準化の際には,鉱物質の結晶構造を損なわないようなアニールをし前歴を消し、1kGyの照射を行えばより正確な判定ができると考える。コメント　　　　：　ESR法およびTL法に関してはCEN法が出されているが,検討の結果,実用的には各段階における条件設定が必要である. 原論文１ Data source 1：照射食品の検知技術の検討および研究田辺　寛子,宝月　大輔東京都立アイソトープ総合研究所平成6年度年報,38-40 原論文２ Data source 2： ESR法による照射骨付き鶏肉の線量の推定田辺　寛子東京都立産業技術研究所食品照射,32,1-12(1997) 原論文３ Data source 3：照射食品の検知に際して初期線量が熱ルミネッセンス強度に与える影響田辺　寛子東京都立産業技術研究所食品照射,33,19-28(1998) 原論文４ Data source 4：化学的検知法による照射食品の判別法　TL標準化法による照射食品の検知田辺　寛子,宝月　大輔東京都立産業技術研究所平成9年度年報　44頁原論文５ Data source 5：照射食品の検知のための熱ルミネッセンス法におけるTLピークの分離田辺　寛子東京都立産業技術研究所東京都立産業技術研究所研究報告第1号　投稿中キーワード：食品照射、照射食品、検知法、γ線照射、ESR、線量付加法、骨、鶏肉、熱ルミネッセンス法、TL、TLピーク、香辛料、コショウ、石英砂 Food irradiation,irradiated food, detection method, gamma ray irradiation, ESR, additive re-irradiation method, bone, chicken, thermoluminescence, TL, TL peak, spice, pepper, quartz, electron spin resonamce 分類コード：020404
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