米の放射線殺虫(日本での研究)

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作成： 1997/10/30 等々力　節子データ番号　　　：020033 米の放射線殺虫(日本での研究) 目的　　　　　　：米の放射線殺虫放射線源　　　　：⁶⁰Co線源線量（率）　　　：0.2-0.5kGy、利用施設名　　　：東海区水産研究所　ガンマ線照射施設、日本原子力研究所・高崎研究所　ガンマ線照射施設、食品総合研究所　ガンマセル220 照射条件　　　　：空気中、室温応用分野　　　　：食品照射、動物飼料概要　　　　　　：　米に0.2kGy程度の放射線を照射することによりコクゾウ、ココクゾウ、コクヌストモドキを殺虫しノシメコクガを不妊化することができた。照射米を使った栄養試験、毒性試験の結果、0.5kGyまでは米の食品としての健全性は損なわれることは無かった。しかし、米の食味について検討を行ったところ、品種によっては照射による食味に変化が現れるものがあった。詳細説明　　　　：　　日本における米の放射線殺虫は、原子力特定総合研究のなかで、昭和42年から取り上げられ、昭和58年までに研究の成果が報告された。　 1)照射効果　 ①殺虫効果：　図1にコクゾウ及びココクゾウの成虫の生存率に対するガンマ線の影響を示す。図1　照射したコクゾウ(a)及びココクゾウ(b)の成虫の生存率（原論文2より引用）　ガンマ線照射によって、コクゾウ、ココクゾウ、ノシメコクガ、コクヌストモドキを殺虫または不妊化するための適性線量は表1のようにまとめられる。0.2kGyでこれらの殺虫、不妊化が可能である。表1　ガンマ線による貯穀害虫の適性照射線量 ---------------------------------------------------- 　害虫　　　　　　　　　　　効果　　　　　線量(kGy) ---------------------------------------------------- コクゾウ、ココクゾウ　　　　不妊化　　　　　0.1 　　　　　　　　　　　　　　殺虫　　　　　　0.14 ノシメコクガ　　　　　　　　不妊化　　　　　0.2 　　　　　　　　　　　　　　羽化阻止　　　　0.355 コクヌストモドキ　　　　　　殺虫　　　　　　0.1 ---------------------------------------------------- ②品質に対する影響：　0.2～0.5kGyの範囲でガンマ線照射し、照射直後及び室温に保存したものを用いて成分分析を行った。また、ささしぐれ、こしひかり、こしじわせ、きんまぜ、農林18号及びはつゆきの6種について食味検査を行った。その結果、粘弾性、炊飯時の揮発性分、一般成分及びアミラーゼ活性等については照射による顕著な変化は認められなかった。米の食味については、変化が現れる限界線量はこしひかりでは、0.5kGy、ふじみのりでは0.2kGyと品種によって違いが見られた。また、低線量照射でも、照射直後には官能評価が低下した。付着微生物について見ると米では、0.2、0.4kGy照射で糸状菌の生存率が60%、20%に低下した。米の水分含量が13～14%の時0.2～0.3kGyの照射で糸状菌の発生が抑制された。　 ③実用化技術：　バラ積み穀物を対象としたサイロ型照射装置及びクラフト紙袋詰の穀物を対象にしたパッケージ型照射装置について、技術的経済的検討を行った。線量を0.2-0.5kGyとした場合1000kCiの⁶⁰Coを用いるとパッケージ型照射では年間48万トン、サイロ型照射では、年間94万トンの米、小麦が処理でき、そのコストは、トン当たり420円及び250円(昭和56年価格)と試算された。　　 2)健全性　 ①栄養試験：　主な栄養成分、脂質、糖質、タンパク質およびビタミンの変化を、非照射、0.1、0.2及び0.3kGy照射の各群について照射直後、6ヶ月及び12ヶ月貯蔵後に検討したところ、照射による影響は見られなかった。上記線量で処理した米を含む飼料で、ラットの飼育試験をした結果、消化吸収率、主要臓器重量、血液性状及び性ホルモンの量について照射の影響は認められなかった。　 ②毒性試験慢性毒性試験：　0.5kGyおよび1kGy照射の米を含む調製飼料をマウスおよびラット及びアカゲザルに20ないし24ヶ月にわたって投与し、血液学的、生化学的、臓器重量測定、病理組織学的検査を行った結果、照射の影響と考えられる変化は認められなかった。世代試験：非照射、0.5ならび1kGy照射の米を含む飼料を使って3世代まで飼育し、各世代についての外見、体重、繁殖生理値及び骨格等を検査したところ照射による影響は認められなかった。　 ③変異原性試験：　非照射及び0.5kGy照射の小麦について細菌の遺伝子突然変異試験、マウスを用いた宿主経由試験、哺乳動物培養細胞を用いた遺伝子突然変異及び染色体異常試験、マウスの生体を用いた染色体異常試験及び優性致死試験を行った。その結果照射による影響はいずれの場合にも認められなかった。コメント　　　　：ガンマ線を使った米の殺虫では、十分な殺虫効果が達成でき、また、米の付着微生物である糸状菌の発生を押さえる効果も期待できる。ただし米の品種によっては食味の低下を引き起こし、その線量も、品種によってばらつくことから、本技術を応用する際は、品種に関して十分留意する必要がある。原論文１ Data source 1：食品照射研究運営会議放射線照射による米の殺虫に関する研究成果報告書（資料編）原論文２ Data source 2：食品照射研究運営会議放射線照射による小麦の殺虫に関する研究成果報告書(資料編) キーワード：米、ガンマ線照射、貯穀害虫、放射線殺虫、官能評価、健全性、rice, gamma-irradiation cereal insect, radiation disinfestation, sensory evaluation, wholesomeness 分類コード：020402,020201
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