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作成: 1996/09/13 古田 雅一

データ番号   :020007
ESRによる照射食品の検知
目的      :ESR法による放射線照射食品の検知。
放射線の種別  :ガンマ線
放射線源    :60Coガンマ線源
線量(率)   :0.6-12 kGy, 0.7 kGy/h
利用施設名   :
照射条件    :空気中、室温
応用分野    :食品照射、流通管理

概要      :
 種々の香辛料、肉類、果物、魚介類、ゼラチン、乾燥キノコ等についてESR法による放射線照射の検知の可能性について検討した。放射線照射により試料中に生じたフリーラジカルは安定に保持されており、ESR法により十分測定可能であることが明らかになった。特に肉類や魚介類の骨の部分におけるラジカルは残存性が高く、精度の高い検知が可能であった。

詳細説明    :
 
 放射線照射により食品中に生じるフリーラジカルが、骨の部分に長期間残存していることがESR測定により見いだされ、放射線照射の検知の指標になることが示されて以来、IAEA/FAOのプロジェクト、「Analytical Detection Methods of Irradiation Treatment of Food, ADMIT」等を中心に種々の食品について有効性が検討されてきた。ここでは豚肉、牛肉、食鳥肉(鶏肉、鴨肉、七面鳥肉、ガチョウ肉)、魚介類(コイ、ローチ、マス、貝類、甲殻類、タラ)、卵殻、30種以上の果物の種子、乾燥果物(ナツメヤシ、イチジク、ブドウ)、25種の香辛料、ハーブ類、乾燥野菜及びキノコ、乾燥ゼラチン、マカロニについて検討が行われた。
 
 まず肉類については、骨部分について測定したところ、最低 0.1 kGyの照射で検知可能であり、2 kGyから12 kGyまでの範囲で線量依存性が見られた。魚介類については1 kGyまたは2 kGy照射した骨について測定を行ったところ、いずれの試料においても類似の位置にピークが現れたが、その強度は魚の種類によって大きく異なっていた。最大のピーク強度が得られたのはコイであったが、その量は鶏肉の場合の3分の1程度であった。 
 
 またコイについてはヒレやウロコからも同様のピークが検出された。これらのピークは照射後1年経っても検出可能であった。乾燥果物についてはナツメヤシとイチジクに0.6から2 kGyの範囲で有効な結果が得られた。照射された果物から単離した種子について得られたピークは複雑であり、照射後数週間で急速な低下が見られたが、それ以後安定し、1年後でも検知可能であった。乾燥キノコに対する測定結果は7 kGy照射により複雑なピークが現れ急速に減少したが、3週間後においてもピークの検出が可能であった。乾燥ゼラチンに関しては7kGy照射で現れたピークが数カ月間検出可能であり、また同量照射したマカロニについては9カ月間検知可能であった。 

コメント    :
 ESR法は骨や種子を含む食品に対しては有効であるが、その他の食品については精度は低くなる。したがってこれらの食品について信頼性の高い検知を行うためには他の方法を併用する必要性があろう。

原論文1 Data source 1:
THE EPR DETECTION OF FOODS PRESERVED WITH THE USE OF IONIZING RADIATION
W. Stachowicz*, G. Burlinska*, J. Michalik*, A. Dziedzic-Goclawska1**, K. Ostrowski**
*Institute of Nuclear Chemistry and Technology, Dorodna 16, 03-195 Warsaw, Poland.** Medical School, Chalubinskiego 5, 02-004 Warsaw, Poland.
Radiat. Phys. Chem. Vol. 46, Nos. 4-6, pp. 771-777

原論文2 Data source 2:
Elektronenspinresonanz-spektroskopische Untersuchungen an frischen Fruchten Nachweis der Behandlung mit ionisierender Strahlung.
Norbert Helle*, Anne Wolbert**, Bettina Linke***, Dorothea Ehlers**, Karl-Ernst Kruger*
*Staatliches Veterinaruntersuchungsamt fur Fische und Fischwaren Cuxhaven, Schleusenstrasse D-27472 Cuxhaven, Germany. **Technische Fachhochschule Berlin, Fachbereich Lebensmitteltechnologie, Kurfurstenstrasse 141, D-10785 Berlin, Germany. ***Bundesinstitut fur gesundheitlichen Verbraucherschutz und Veterinarmedizin, Fachgebiet Lebensmittelbestrahlung, General Pape Strasse 62-66, D-12101 Berlin, Germany
Z Leebensm Unters Forsch (1995) 201, 355-360

参考資料1 Reference 1:
Use of ESR to identify irradiated food.
Dodd N., A. J. Swallow, and F. Ley
Radiat. Phys. Chem. 26, pp. 451-453, 1985

キーワード:食品、放射線照射、検知法、EPR(ESR)分光測定、果物
food, irradiation, detection method, epr(esr) spectroscopy, fruits
分類コード:020404,020402,020403,020405

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