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作成: 1999/10/26 鈴木 良治

データ番号   :018019
実用化例:電子ビーム照射による化石燃料の燃焼排ガスの脱硫・脱硝技術
目的      :電子ビームを使用した燃焼排ガスの脱硫・脱硝技術及びその実用化例の紹介
利用原理    : 電子ビームを化石燃料の燃焼排ガスに照射するとOH,O,HO2等の活生種が生成する。その高い酸化力を利用して、排ガス中では安定なSO2及びNOxを酸化させ、それらを最終的に有用な副生品(硫安と硝安の混合肥料)として回収する。

概要      :
 石炭、重油等硫黄を含む化石燃料の燃焼により生成する硫黄酸化物(SOx)及び窒素酸化物 (NOx)が原因の酸性雨は、生態系に様々な影響を与え、その度合いは増々深刻となって来ている。このような環境汚染を防止する為、排ガスに電子ビームを照射することにより、排ガス中に含まれるSOx・NOxを乾式で同時に除去するとともに、副生品を有用な窒素肥料として回収する技術である。

詳細説明    :
<プロセスフロー>


図1 プロセスフロー(参考資料2より引用)


 電子ビーム照射による脱硫・脱硝プロセス(図1)は、排ガスの冷却工程、反応工程(アンモニア添加+電子ビーム照射)及び副生品分離工程より構成される。
 排ガスは、冷却塔で反応に適した温度(65℃程度)に冷却された後反応器に導入される。反応器では、排ガス中のSOx濃度とNOx濃度及びそれらの除去率により定まる量のアンモニアを添加し、電子ビームを照射する。排ガスに電子ビームを照射することにより、非常に酸化力の強いラジカル(活性種)が生成し、排ガス中のSOx及びNOxは極めて短時間に酸化され、それぞれ中間生成物の硫酸と硝酸となる。これら中間生成物はアンモニアとの中和反応によって、硫安及び硝安の粉体になる。この副生品を分離、回収した後、清浄化された排ガスは煙突から大気に放出される。

<脱硫・脱硝反応メカニズム>


図2 脱硫・脱硝反応メカニズム(参考資料4より引用)


 本プロセスでの脱硫・脱硝反応は、図2に示す以下三つの過程で進行する。
 
(1) ラジカル(活性種)の生成
  電子ビーム照射によって、排ガスの主成分であるO2、H2O分子から瞬時に非常に酸化力の強い、
  OH、O、HO2などのラジカルが生成する。
(2) SOx及びNOxの酸化
  排ガス中に生成したラジカルがSOx及びNOxを酸化し、硫酸(H2SO4)と硝酸(HNO3)を生成する。
(3) 硫安及び硝安の生成
  硫酸、硝酸は予め排ガスに添加されているアンモニア(NH3)との中和反応によって、硫安
  ((NH4)2SO4)と硝安(NH4NO3)の粉体粒子となる。

<脱硫率と脱硝率>


図3 吸収線量に対する脱硫率と脱硝率の関係(参考資料4より引用) 


 脱硫・脱硝の一例を図3に示す。吸収線量(電子ビーム照射量)と処理ガス温度等の処理条件を適切に選ぶことにより、高い脱硫率(90%以上)及び脱硝率(80%以上)が得られる。
 
<副生品の利用>
 硫安及び硝安の混合物である副生品を用いて植害試験、肥効試験を実施した結果、市販の硫安、尿素肥料と同等以上であり、肥料として充分使用できることが証明され、農林水産省より副産窒素肥料として認可された。

処理効果の特徴 :
1) 高濃度SOx・NOxを高効率で同時除去できる
2) 排水処理設備が不要である
3) 設備構成が単純で運転が容易である
4) 副生品が肥料として利用でき、廃棄物が出ない
5) 建設費及び運転コストが安い

用途(応用分野) :
1) 石炭・重油等の化石燃料の燃焼排ガスの脱硫・脱硝
2) 鉄鋼焼結排ガスの脱硫・脱硝等

展開の可能性  :
 本技術は排ガス処理(同時脱硫・脱硝)と同時に、肥料生産が可能であるため、北米、日本等の先進国のみならず、中国、南米、東欧諸国等の農業国への展開が期待できる。

実施している企業:
1) (株)荏原製作所

生産量、処理量等:
1) 中国四川省成都発電所:排ガス量30万m3/h(NTP)(90MW相当、97年運転開始)
2) 日本国中部電力西名古屋火力発電所:排ガス量62万m3/h(NTP)(220MW、2000年運転開始)

コメント    :
 本技術は酸性雨対策技術であると同時に有用な窒素肥料を回収し、酸性雨の解決と食料増産の両方に貢献し得るゼロエミッション技術であり、資源循環型社会の促進に役立つことが期待できる。

参考資料1 Reference 1:
電子ビーム排煙処理技術の石炭火力発電所への適用
土居 祥孝、仲西 郁郎、他10名
(株)荏原製作所
エバラ時報No.183(1999-4)

参考資料2 Reference 2:
電子ビームによる酸性雨対策技術
鈴木 良治
(株)荏原製作所
Isotope News 1999年5月号

参考資料3 Reference 3:
西名古屋火力発電所1号機電子ビーム排煙処理研究装置設置計画
火力部
中部電力株式会社
ひかりとねつ 第49巻7号(平成10年7月号)

参考資料4 Reference 4:
エバラ電子ビーム排ガス処理装置
(株)荏原製作所
(株)荏原製作所
カタログ

キーワード:電子ビーム、硫黄酸化物、窒素酸化物、酸性雨、脱硫、脱硝、排ガス処理、窒素肥料、発電所、活生種
electron beam, sulfur oxides(SOx), nitrogen oxides(NOx), acid rain, desulfurization, denitration, flue gas treatment, nitrogen fertilizer, thermal power plant, radical
分類コード:010501

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