放射線利用技術データベースのメインページへ

作成: 2000/02/14 吉井 文男

データ番号   :018018
放射線加硫天然ゴムラテックスの応用
目的      :実用化例としての紹介
放射線加硫天然ゴムラテックスの開発とその応用の実用化について紹介する
利用原理    :放射線照射による橋かけ技術である

概要      :
 天然ゴムラテックスにアクリル酸ノルマルブチルをを5phr添加し、コバルト-60からのγ線により15から20kGy照射することにより放射線加硫天然ゴムラテックス(RVNRLと呼ぶ)を得る。マレーシア原子力研究ではこのRVNRLを製造するセミプラントを設置した。本装置の概要を紹介する。

詳細説明    :
 RVNRLは次のような特長があることを見出されている。

  1.発ガン性物質のニトロソアミンを生成しない
  2.細胞毒性が低い
  3.透明なゴムフィルムが得られる
  4.焼却時に有毒ガスと灰の生成が少ない
  5.たんぱく質が放射線分解するため、タンパク質アレルギーが防げる
  6.自然環境下で容易に分解する

これは硫黄加硫のような加硫促進剤のジチオカルバミン酸塩を使用しないためである。
 図1にRVNRLの製造プロセスを示す。


図1 放射線加硫天然ゴムラテックス製造プロセス(参考資料1より引用)


 原研はこれらの技術を国際協力の一環として東南アジア諸国に技術移転した。現在マレーシア原子力研究所がコバルト-60からのγ線を使用し、 RVNRLを製造するためのセミプラントを設置した。このセミプラントをレイミンテックと名づけ、昨年40トンを製造し、マレーシア国内のゴム加工メーカーが検査用手袋、風船、指サックに加工した。現在市場の拡大を計っているところである。
 図2にセミプラントの概略を示す。本装置はアマーシャム(UK)製で1996年3月に設置され、コバルト-60の貯蔵最大容量は1Mciで、6千トン/年のRVNRLの製造能力がある。現在のコバルト-60の強度は10万Ciである。 RVNRL製造には加硫促進剤としてアクリル酸ノルマルブチル(n-BA)を使う。天然ゴムラテックスとn-BAをタンク1と2で配合し、パイプ1から照射室内に送る。天然ゴムラテックスは、パイプ内をゆっくり移動することにより加硫されRVNRLとなってタンク3に集められる。パイプ内を移動する間に約13kGy照射され、加硫される。


図2 マレーシア原子力研究所の放射線加硫天然ゴムラテックス製造セミプラント. (参考資料2より引用。 Reproduced from Radiat. Phys. Chem., 52, 611 - 616 (1998), Fig.2(p.614), Wan Manshol Bin W. Zin, Semi Industrial Scale RVNRL Preparation, Products Manufacturing and Properties; Copyright(1998), with permission from Elsevier Science.)



処理効果の特徴 :
 本装置の加硫装置はバッチ方式ではなく、パイプ内をゆっくり移動することにより連続的に行うことができる。加硫したRVNRLフィルムの強度は27.1Mpa,伸び1100%である。

用途(応用分野) :
 検査用手袋、カテーテル、輸血用チューブ、その他のゴム製品に応用できる。

展開の可能性  :
 本ラテックス製品はタンパク質アレルギーを起こさないため、タンパク質フリーのラテックスとして用途の拡大が期待できる。

実施している企業:
 マレーシア原子力研究所(連続製造装置)、オカモト(株)によるタイ照射センター及びインドゴム研究所(いずれもバッチシステム)。

生産量、処理量等:
 マレーシア原子力研究所の昨年の生産、40トン、オカモト(株)によるタイ照射センターの照射ではゴム手袋を製造し、日本の原子力発電所に納めている。インドの生産はわずかである。

参考資料1 Reference 1:
ポリマーの放射線加工(第5回)放射線橋かけのラテックスの応用
幕内 恵三
日本原子力研究所高崎研究所
ポリマーダイジェスト5月号、43 - 65 (1999)

参考資料2 Reference 2:
Semi Industrial Scale RVNRL Preparation, Products Manufacturing and Properties
Wan Manshol Bin W. Zin
Malaysia Institute for Nuclear Technology Research (MINT) Bangi,, 43000Kajang, Selangor,Malaysia
Radiat. Phys. Chem., 52, 611 - 616 (1998)

キーワード:天然ゴムラテックス、放射線加硫、セミプラント、マレーシア、タイ、インド、ゴム製品
natural rubber latex, radiation crosslinking, semi plant, Malaysia, Thailand, India, rubber products
分類コード:010101

放射線利用技術データベースのメインページへ