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作成: 1998/10/25 関 育雄

データ番号   :018017
実用化例:自己制御性発熱体
目的      :実用化例としての紹介
利用原理    :電子線照射架橋

概要      :
 ポリエチレン又はふっ素樹脂などの熱可塑性樹脂にカ-ボンブラックを添加した組成は温度により抵抗が可逆的に変化するため,自己制御性発熱体として利用できる。しかし、使用時に熱暴走し、発火に至る危険性がある。この問題を電子線を照射し、分子間を結合させる架橋処理を施すことにより、防止し、火災に対する信頼性を向上させた。

詳細説明    :
<製造工程の説明>


図1 製造工程の模式図

 ポリエチレン(またはポリ弗化ビニリデン樹脂または他のふっ素樹脂)に 導電性カーボンブラックを分散させたコンパウンドを幅が約8mmの一対の平行電極に溶融しながら被覆することにより適当な導電性を持つ発熱体を形成する。次にこの発熱体に絶縁体を被覆後、窒素気流中で電子線照射器により電子線を照射し、発熱体であるポリエチレン(またはポリ弗化ビニリデン樹脂または他のふっ素樹脂)にラジカル活性点を生成させることにより、分子間に橋かけ(架橋)点を形成する。

製造、プロセス、電子線照射効果の特徴
 
<ポリエチレン用>
 ポリエチレンに導電性カーボンブラックを混和しこれを平行電極上に被覆することで、適当な導電性をもたせた抵抗体は、電気抵抗が温度とともに可逆的に変化し、自らが温度制御機能を持ついわゆる自己制御性発熱体となる。この時の抵抗変化はポリエチレンの結晶融点近くで急激に上昇する。しかし、長期間課電し、使用しているとポリエチレン中のカーボンブラックが僅かずつ移動することで、次第に抵抗が下がっていき(発熱し易くなり)、ついには結晶が融解する温度に到達する。結晶が融解するとカーボンブラックの分散が大きく変化し、抵抗値の急激な低下をもたらし、異常発熱(熱暴走)を生じ、最終的には発火に至る。
 以上の現象を抑えるには、分子間に橋かけ点を形成するいわゆる架橋処理を施すことが効果的である。架橋点形成には電子線照射以外に有機過酸化物を添加し、高温で分解することにより、ラジカルを形成させ、実施する方法があるが、高熱下にさらされるときに抵抗が大きく変化するため、安定な抵抗値のものを得ることが困難となる。これに対し、電子線照射法は照射時に多少発熱は見られるものの、抵抗値への影響は僅かなため、長さ方向の抵抗バラツキの少ない安定な発熱体が得られる。


図2 システム構成

<ポリ弗化ビニリデン樹脂用>
 基本的にはポリエチレンをマトリックスとした発熱体と同じであるが、ポリエチレンに比べて融点が高く、抵抗が大きく上昇する温度が高温側にずれるため、高出力の発熱体が得られる。ポリエチレンに比べて弾性率が高いため、可とう性に劣る。
 
<可とう性ふっ素樹脂用>
 融点はポリ弗化ビニリデン樹脂よりもさらに高く、従ってさらに高出力の発熱体が得られる。弾性率はポリエチレンよりは高いが、ポリ弗化ビニリデン樹脂に比べると低く、可とう性に優れる。また課電時の出力安定性は使用電圧(交流200V)はもちろん240Vの高い電圧でも比較的安定である。

用途(応用分野)


図3 用途

1) 水道管の凍結防止
2) 化学プラントの配管保温
3) 鉄塔融雪

 展開の可能性
1) 面状発熱体

 製造している企業名
レイケム コーポレーション
日立電線株式会社 他

 生産量等
約500km/年

参考資料1 Reference 1:
自己制御性ヒータ「ハイトレース*」の開発

キーワード:電子線,発熱体,カ-ボンブラック,自己温度制御,ポリエチレン,弗化ビニリデン樹脂,抵抗,PTC, 架橋,
electron beam,heater,carbonblack,temperature self control,polyethylene,poly-vinyrideneflluoride,electrical resistance,positive temperature coefficient,cross-linking
分類コード:010202

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