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作成: 1998/09/10 徳永 興公

データ番号   :実用化例:排煙処理
目的      :実用化例としての紹介
利用原理    :放射線による酸化

概要      :
 電子ビーム照射による排煙の脱硫脱硝処理技術の開発が進展した。パイロット試験によって経済性を含む実用的特長が明らかになったことから、実用化への動きが進展し、中国では実用規模プラントの運転が行われている。我が国においても中電が現在プラント建設中である。


製造(処理)技術 :
 電子ビームのエネルギーの大部分が排煙の主成分分子に吸収され、多くの反応性に富んだラジカル(OH, O, HO2)を生成し、それによって硫黄酸化物、窒素酸化物は酸化され、それぞれ硫酸、硝酸に転換する。それをアンモニアガスと反応させ、粉末状の硫安、硝安として捕集する。反応プロセス及び工学的検討結果に基づいて確立された電子ビーム排煙処理法の基本プロセスを図2に示す。排煙は、まず冷却塔で水スプレー蒸発により冷却され、反応器手前で添加されたアンモニアの共存下で約65℃で電子ビーム照射される。
照射によって図1の反応が短時間に進行し、この反応によって生成した粉末状の硫安、硝安は電気集じん器で捕集される。この様なプロセスによって脱硫、脱硝処理され、きれいになった排煙は煙突から大気中へ排出される。


図1 反応メカニズム



図2 電子ビーム排煙処理設備構成例



処理効果の特徴 :
 電子ビーム排煙処理法は従来の排煙処理法と比べると次のような実用的特長を有している。
―萢の過程で廃水を生じない乾式法であるため、排水処理が不要である。
脱硫、脱硝が電子ビーム照射で同時に行うことができる。
K槓法では、従来法で必要な高価な触媒を必要としない。
システム構成が単純であるため、プラント設計、プラント運転が比較的容易である。
ど生品は窒素肥料として有効利用することができる。
ゥ廛薀鵐箸侶設費、運転費とも従来法に比べて優れている。

用途(応用分野) :
1) 石炭・石油火力発電所からの排煙の脱硫脱硝処理
2) ごみ焼却施設からの排煙の脱硫脱硝処理
3) 自動車道路トンネル換気ガスの脱硫脱硝処理

展開の可能性  :
 電子ビーム排煙処理法は、従来の排煙処理法にない実用的特長を有しており、経済的にも優れた方法であることが明らかになっている。更に、地球環境・資源のリサイクルの観点から極めて重要な電子ビーム法のメリットとして、副生品を今後重要度が増すと思われる農業用肥料として有効利用できることが挙げられる。一方、経済性を更に高めるためには、遮蔽室、電子加速器、冷却塔等機器のコンパクト化、価格低減化が求められる。

実施している企業:
 日本原子力研究所(原研)と(株)荏原製作所(荏原)の長年月に渡る基礎試験、さらに中部電力(株)(中電)を加えた共同実施のパイロット試験によって、実用化への動きが進展した。中電信名古屋火力発電所構内パイロット試験装置(パイロット試験)
中電西名古屋火力発電所1号機用実用規模装置(実証)
中国の成都発電所実用規模装置(実証)


図3 (写真)中国成都発電所で稼働している電子ビーム排煙処理実用規模の実証プラント((株)荏原製作所のご厚意による)

 また、中電西名古屋火力発電所において、1号機(出力22万kW、重油燃焼ボイラー)からの排煙62万 Nm3/hを処理する実用規模プラントの建設が現在進行中、1999年に運転開始予定。 ポーランドでは、国際原子力機関(IAEA)、日本国政府等の支援の下に中国のプラントと同規模のプラント建設が進められている。ブルガリアにおいては、自国産の高硫黄炭の燃焼排煙(約5000 ppm SO2)を電子ビーム法で処理するパイロット試験計画がIAEA、原研の協力の下に進められている。

生産量、処理量等:
 中国の成都発電所におけるプラント(写真)では、20万kW石炭発電用ボイラーからの排煙の半分量(30万 Nm3/h)を処理することができる。目標とする除去性能(1800 ppm SO2 の 80 % 除去)を3 - 4 kGyで達成し、運転に伴って生成する副生品の量は700トンを越え、全てを近隣の肥料工場へ輸送している。

参考資料1 Reference 1:
Electron-beam Technology for Purification of Flue Gas
Okihiro Tokunaga
Japan Atomic Energy Research Institute
Environmental Application of Ionizing Radiation, Edited by W.J.Cooper, R.D.Curry, K.E.O'Shea (1998, John Wiley & Sons, Inc.)

参考資料2 Reference 2:
西名古屋火力発電所1号機 電子ビーム排煙処理研究装置設置計画
火力部
中部電力(株)
ひかりとねつ、p.6-9 、第49巻(7号)(1998) 

キーワード:排煙処理、電子ビーム、放射線利用、脱硫、脱硝、環境保全、乾式、同時除去法、肥料
flue gas treatment, electron beam, radiation utilization technology, desulfurization, denitrization,
environmental conservation, dry process, simultaneous removal process, fertilizer
分類コード:010501

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