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作成: 1998/11/16 伊藤 貴和

データ番号   :018002
実用化例:ポリエチレン発泡体
目的      :実用化例としての紹介
利用原理    :橋かけ反応

概要      :
 ポリエチレンに発泡剤を混合してシート状に押し出した後、電子線照射によって架橋する。架橋後のポリエチレンシートを発泡剤の分解温度以上に加熱するとポリエチレン発泡体が得られる。

詳細説明    :
 ベース樹脂(ポリエチレン、酢酸ビニル樹脂等)に発泡剤や劣化を抑制するための酸化防止剤などが添加されるが、これらは混練機(バンバリー,ニーダーなど)で混ぜ合わされる。この樹脂組成物を押出機で加熱溶融してシート状に押出し、製造ラインに組み込んだ電子加速器にて数十kGyの照射を行う。照射によって架橋されたフィルムは加熱炉に送られ、組成物中の発泡剤の加熱分解により生じたガスにより気泡が生じ発泡体となる。なお押出し後、電子線照射後にそれぞれ一旦取り置く方法もある。


図1 製造プロセスの模式図



処理効果の特徴 :
放射線架橋法は化学発泡法、ガス発泡法に比較して以下の特徴がある
1)架橋方法が大気中で行える、また助材を用いる必要が無い。
2)架橋工程と発泡工程が別々であることから表面がきれいになる。
3)架橋度が自由に調製できる。
4)表皮から中心まで架橋度が均一なものを製造することができる。
5)架橋剤の影響を受けないので色が鮮やかに出せる。

用途(応用分野) :
1)ネオプレンゴムスポンジ代替のガスケットや、建材のパッキン,テープ基材
2)衝撃吸収性を利用して防振材、スポーツシューズの緩衝材
3)衛生的であることから医療用バッドやむちうち症プロテクターの緩衝材

展開の可能性  :
1)添加物が更に少なく環境ホルモンなどの心配の無い発泡体
2)ポリエチレンに変わる汎用樹脂発泡体(PVC、ポリプロピレン、ポリスチレン)
3)電子線架橋による高充填発泡体(ゴム,ノンハロゲン難燃剤)の製造

実施している企業:
国内積水化学、東レ、古河電工など
海外ではHULS, FREUDENBERG, PILON PLASTICS, 映甫化学など

生産量、処理量等:
電子線架橋高発泡ポリエチレンは 1.3万トン/年(1997)

参考資料1 Reference 1:
発泡プラスチック, 大崎政利, 放射線化学, 51, 40-42(1991)

参考資料2 Reference 2:
実用プラスチック成型加工事典(大柳康編集)平成9年,産業調査会発行

参考資料3 Reference 3:
特許:特公昭41-6278号「シート状ないしフィルム状ポリエチレンフォームの製造法」
特許:特公平4-56057号「無機物高充填高発泡倍率発泡体シート」

キーワード:電子線 Electron beam, ポリエチレン Polyethylene, 橋かけ Crosslinking, 発泡体 Foam,工業製品Industry product, 製造方法 Manufacturing, 押出し機 extruder,混練機 compounding machine
分類コード:010107

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