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作成: 1998/11/11 藤村 俊一

データ番号   :018001
実用化例:耐熱電線・ケーブル
目的      :実用化例としての紹介
利用原理    :橋かけ反応

概要      :
電線の被覆材(例えばポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ふっ素系樹脂)に電子線を照射し、ポリマーに三次元構造を形成させて耐熱性を向上させた電線、ケーブル

詳細説明    :
 電線の被覆材は、ポリマーの他に電子線の照射線量が低くても効率的に反応を進行させるための架橋助剤や劣化を抑制するための酸化防止剤などが添加されるが、これらは混練機(バンバリー、ニーダーなど)で混ぜ合わされる。この被覆材を押出機で加熱溶融して銅線の上に被覆して電線を製造するが、スピードは数十〜数百m/分である。その後、電子線加速器にて数十〜数百kGyの照射を行うが、被覆材に均一に照射するため電線を数十回ターンさせている。


図1 製造プロセスの模式図



図2 製造プロセスのブロックダイアグラム


表1 放射線架橋と従来法の比較
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                   電子線架橋      水蒸気架橋  シラン架橋   架橋なし
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プロセスの特徴   架橋速度が早い        遅い        遅い        −
                設備費が高い          高い        安い       安い
                太物電線は不可        可能        可能       可能
                                                                    
製品の特徴       架橋度は低い          高い        低い       なし
                有機溶剤にとけない   とけない    とけない    とける
                半田コテでとけない   とけない    とけない    とける
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用途(応用分野) :
1)家電、電子機器の等の内部配線
2)電車、自動車、航空機などの機器用電線(例えばモーターリード線)
3)ビル、工場などの受電盤から配電盤への電源線

展開の可能性  :
1)低線量で高い架橋度が得られる原料の開発
2)高充填被覆材(ゴム、ノンハロゲン)の電子線架橋
3)高電圧ケーブルへの適用

実施している企業:
殆どの電線メーカが製造している。
海外でもRaychem, Siemens, BICC, SILECなど多数

生産量、処理量等:
電源線、配線材は他の製造方法と分離できない
機器用電線の出荷量は2300億円(1997年度、電線工業会調べ)
経済効果は大きい。

参考資料1 Reference 1:
特許:特公昭38-14999号「電子線ビーム照射装置」
特許:特公昭48-15560号「加速電子線を物品に照射するための装置」

参考資料2 Reference 2:
プラスチック成型加工(高分子学会編集"高分子講座6")昭和41年、地仁書館発行

参考資料3 Reference 3:
実用プラスチック成型加工事典(大柳康編集)平成9年、産業調査会発行

キーワード:ケーブル cable、被覆材 covering material、耐熱性 heat resistant、耐油性 oil resistant、架橋助剤 closslinking agent、酸化防止剤 antioxidant、難燃剤 flame retardant、押出し機 extruder、混練機 compounding machine、ニーダー needer、機器用電線 switchboard wire
分類コード:010105

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