生分解性ポリブチレンサクシネートの高温下での放射線架橋

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作成： 2002/8/1 早味　宏データ番号　　　：010235 生分解性ポリブチレンサクシネートの高温下での放射線架橋目的　　　　　　：生分解性ポリマーの放射線架橋放射線の種別　　：ガンマ線放射線源　　　　：⁶⁰Co線源線量（率）　　　：10kGy/h 照射条件　　　　：減圧下(10^-³torr(0.13Pa))、室温～120℃ 応用分野　　　　：生分解性耐熱フィルム、生分解性耐熱繊維概要　　　　　　：　ポリブチレンサクシネート（PBS）のγ線照射による架橋を検討した。照射時の雰囲気温度が高いほどゲル分率が増加し、融点以上の温度で急激に増加した。また、2段階照射、すなわち、室温で照射した後、溶融状態で照射すると架橋効率がさらに向上し、ゲル分率は58％に達した。架橋により耐熱性は大幅に向上したが、生分解性（酵素分解、土壌埋設）は未照射品に比べるとやや低下することがわかった。詳細説明　　　　：　環境負荷の低減を目的に各種の生分解性ポリマーが開発されている。生分解性ポリマーはコストや耐熱性の点から用途が限られているが、放射線照射による架橋は耐熱性向上の有効な手段になり得る。ポリブチレンサクシネート（PBS、商品名ビオノーレ）はコハク酸とブタンジオールの重縮合によって得られる合成系の生分解性ポリマーであり、融点、分子量の異なる3種類のPBSについて、雰囲気温度を変えてγ線を照射し、耐熱性および生分解性（酵素分解試験、土中埋設試験）を評価した。　昭和高分子㈱製の3種のPBS（PBS1:mp=91℃、MFR=1、PBS2:mp=112℃, MFR=5、PBS3:mp=114℃、MFR=29）のペレット及び熱プレスで作製した0.5mm厚のシートを照射用の試料とした。ペレットとシートを試験管中に減圧状態(10^-³torr)で封入し、⁶⁰Co源のγ線(線量率10kGy/h)を各種の温度雰囲気で照射した。耐熱性は0.3cm×2cm×0.05cm厚の試料を恒温槽内に吊り下げ、シートの下部に荷重を加えて、破断するまでの時間を計測する方法で行った。ゲル分率測定の抽出溶媒には沸騰クロロホルムを用い、抽出時間を48時間とした。生分解性は酵素分解試験と土中埋設試験により行い、何れも試験前後の重量変化を測定する方法で行った。　　図1は3種のPBSを各温度で210kGy照射した時のゲル分率である。3種ともに融点以上の温度で急激に増加する傾向が見られた。また、同一温度での照射では、融点が低く、高分子量であるPBS1のゲル分率が最も高かった。これは、架橋反応がポリマーの化学構造とモルフォロジーに依存するためであると考えられる。図1　Gel fraction of PBS irradiated with a dose of 210 kGy at different temperature in vacuum.(原論文のFig.2)（原論文1より引用）　図2はPBS1を2段階照射、すなわち、室温で160kGy照射した後、100℃の溶融状態でさらに照射した試料のゲル分率の測定結果である。ゲル分率は58％に達し、単純に100℃で照射した試料のゲル分率が210kGyで41％であったのと比べて17％も高い値を示した。これは、ポリマーが溶融状態になると、ポリマー鎖の移動度が向上するので、ラジカルの再結合の効率が高まるためであり、また、室温での1段階目の照射は、ポリマーのネットワークを形成して分解を抑制する効果があると考えられる。図2　Gel fraction of PBS1 irradiated at molten state after irradiation with a dose of 160 kGy at room temperature.(原論文のFig.4)（原論文1より引用）　架橋PBS1の耐熱性を調べた結果が図3である。未照射品は110℃で直ちに破断しするのに対し、2段階照射した試料(ゲル分率50％)は130℃では200分でも破断せず、180℃では8.3分保持し、耐熱性が大幅に向上することがわかった。図3　Relationship between temperature and breaking time of PBS1 with applied stress of 6.67kg/cm².(原論文のFig.5)（原論文1より引用）　次に、リパーゼAKを用いた酵素分解試験を行った。未照射試料は10時間浸漬で重量減少率が49％であったのに対し、2段階照射試料(ゲル分率50％)の重量減少率は28％に留まった。また、未照射試料は32時間で完全に分解したのに対し、2段階照射試料では重量減少率が73％であった。但し、2段階照射試料も46時間浸漬で完全に分解することから、分解に要する時間は長くなるものの架橋構造を導入しても酵素分解そのものは進行することがわかった。一方、4ケ月間の土壌埋設試験では、未照射試料の重量減少率は86％であったのに対し、照射試料(ゲル分率50％)は69％であり、架橋により分解速度がやや低下したが、分解そのものは未照射試料と同様に進行することがわかった。コメント　　　　：　PBSは放射線架橋により生分解性は若干低下するものの、耐熱性は大幅に向上しており、工業的な利用価値が高まると考えられる。原論文１ Data source 1： Radiation crosslinking of biodegradable poly(butylene succinate) at high temperature ChunLei Song, Fumio Yoshii^*, Tamikazu Kume^* Changchum Institute of Applied Chemistry, Chinese Academy of Science, ^*Japan Atomic Energy Research Institute J. Macromol. Sci. Pure Appl. Chem., A38(9), 961-971 (2001) キーワード：生分解性、ポリマー、ポリブチレンサクネシート、γ線、放射線架橋、耐熱性、酵素分解、土壌埋設分解 biodegradation, polymer, polybutylene succinate, γ-ray, radiation cross-linking, heat resistance, enzymic degradation, soil burial degradation 分類コード：010101, 010106, 010107
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