放射線によるナノコンポジットの調製

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作成： 2001/12/20 金澤　進一データ番号　　　：010223 放射線によるナノコンポジットの調製目的　　　　　　：無機物と有機物の複合体の開発、特にナノサイズの無機物を分散配合した有機物とのコンポジットの開発放射線の種別　　：ガンマ線放射線源　　　　：Co-60線源(50kCi) フルエンス（率）：- 線量（率）　　　：0-8.4kGy, 1.2kGy/h 利用施設名　　　：中国理工大学照射条件　　　　：N₂置換水溶液中応用分野　　　　：複合材料(耐熱・補強) 概要　　　　　　：　ポリアクリルアミドの水溶液にSe化合物とCd化合物を溶解し、γ線照射によりCdSeの微粒子を合成する。UV-VIS吸収スペクトル解析を行い、γ線照射によってポリアクリルアミド内でCdSe微粒子が5nm程度まで成長する過程を報告。詳細説明　　　　：　　NaSeSO₃、CdSO₄、ポリアクリルアミド(PAM)をイソプロピルアルコールと共に水に溶かし、N₂バブリングで酸素を脱気し、50kCiのCo-60γ線により室温にて線量率1.2 kGy/hで照射した。得られた赤い透明のゲル状生成物を、室温で真空乾燥後、蒸留水で洗浄、再び真空乾燥して目的のサンプルを得た。サンプルは、粉末X線回折パターン分析(XRD)、赤外線スペクトル分析(FTIR)、透過電顕(TEM)で測定分析し、またCdSe含有量はPAMを塩酸溶解して測定した。吸収線量の影響は、UV-VIS吸収スペクトルで解析した。図1　XRD patterns of CdSe/PAM nanocomposites (a) and CdSe (b) prepared under γ-irradiation.（原論文1より引用。　 Reproduced from Z.Qian, Yi Xie, J.Hung, Y.Zhu, Y Qian, Radiat. Phys. Chem., 58, 287-292(2000), Fig. 1 (Data Source 1, p. 288), Copyright (2000), with permission from Elsevier Science).）　XRDの結果は、CdSe単体(図1b)の111、220、311ピーク以外に、CdSe/PAMにはナノ粒子に由来する回折を検出した(図1a)。CdSeの平均粒子径は、回折ピーク幅からScherre式を用いて計算すると5nmとなる。FTIRからPAMの架橋、TEM観察からアクリルアミドのネットワーク中で粒子状に点在するのが確認された。　　γ線照射によるCdSeの生成の実験例は少ないが、γ線照射によるCdS形成（文献２）の場合と同様のメカニズムで生成すると考えられる。すなわちSeSO₃よりγ線照射でSe₂^-が遊離して反応が進むと推定される。図2　UV-VIS spectra of the irradiated solution with the different absorbed doses.（原論文1より引用。　 Reproduced from Z.Qian, Yi Xie, J.Hung, Y.Zhu, Y Qian, Radiat. Phys. Chem., 58, 287-292(2000), Fig. 4 (Data Source 1, p. 290), Copyright (2000), with permission from Elsevier Science).）　UV-VIS吸収スペクトル分析でPAMのネットワーク形成とCdSe粒子形成の関係について考察した。　 ①γ線照射最初の30分、図3のステージ1(図2の0-2)では、PAMの架橋形成は行われず、CdSeの生成のみが進行する。　 ②ステージ2ではモノマーによる架橋で粘性が増加し、スペクトルは最初の青色側へのピークのシフトが再び赤色側にシフトしていく段階(図2の3-5)で、粒子の最大径も最小径も減少している。ここではPAMの生成がCdSe粒子の形成を一時的に抑制している。　 ③Fig.4の5-7、図3のステージ3は、スペクトルの若干の赤色シフトを示し、粒子サイズが少しずつ増加しており、ステージ1同様の自由成長段階である。　 ④最後のステージ4(図2の7-10)では、溶液の粘度は益々高くなり、PAMは水不溶の架橋を形成している。さらに照射量が増えるとPAMの架橋はスポンジ状に全体が一体化するまでに至る。スペクトルはステージ2と同様の変化を起こす。　　以上のようにPAMのネットワーク形成によってCdSeの粒子形成が制御されることがわかった。図3　The relationship between the smallest and largest particle size of the CdSe particles in different periods and absorbed doses. (a) The smallest particle size, (b) the largest particle size.（原論文1より引用。　 Reproduced from Z.Qian, Yi Xie, J.Hung, Y.Zhu, Y Qian, Radiat. Phys. Chem., 58, 287-292(2000), Fig. 5 (Data Source 1, p. 291), Copyright (2000), with permission from Elsevier Science).）　一方、文献2では、サブナノサイズのCdSの粒子生成を、Cd²⁺　とチオールを含む水溶液にγ線照射することにより検討した。吸収スペクトル及び蛍光スペクトル分析によると、CdSの平均サイズは照射量の増大、おひび照射後の保持時間が長くなると大きくなる。一方、一定の照射量では、CdSの平均サイズは線量率が高いほど明らかに小さくなる。CdS粒子の成長メカニズムについては、照射によって生成される単分子間のコアレッセンス反応及び様々なサイズの粒子間のコアレッセンス反応について数学的シミュレーションを行うと、粒子の大きさは線量率に依存する関係にある。コアレッセンスの遅い範囲での等吸収点の観察から、吸収スペクトルに270、282及び320nmにそれぞれピークはCdSのオリゴマー粒子に由来するといえる。高線量率及び低線量率照射では、照射前は存在しない270nmに吸収ピークを持つ最も小さいCdS粒子が形成された。コメント　　　　：　ナノコンポジット形成は無機有機複合化材料の高機能化に関わる技術である。放射線照射によって起こる2つの現象、すなわち水溶液中からの無機物のナノ粒子生成およびポリマー架橋を組み合わせて、ナノ複合材料構造の制御を行う試みは、将来の応用展開が期待される技術である。原論文１ Data source 1： Single-step confined growth of CdSe/polyacrylamide nanocomposites under γ-irrradiation Z.Qian, Yi Xie, J.Hung, Y.Zhu, Y Qian University of Science & Technology of China Radiation Physics and Chemistry, 58, 287-292(2000) 原論文２ Data source 2： Dose rate effect on size of CdS clusters induced by irradiation M.Mostafavi, Y.P.Liu, P.Pernot, J.Belloni Laboratoire de Physico-Chimie des Rayonnements Radiation Physics and Chemistry, 59, 49-59(2000) キーワード：γ線、ナノサイズ、ポリアクリルアミド、ナノコンポジット、架橋、分解、CdSe、CdS、XRD、FTIR γ-rays, nanosize, polyacrylamide, nanocomposites, crosslinking, radiolysis, CdSe, CdS, XRD、FTIR 分類コード：010102, 010103
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