架橋ポリエチレン管の熱融着接続

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作成： 2000/10/27 青井　恒夫データ番号　　　：010217 架橋ポリエチレン管の熱融着接続目的　　　　　　：通湯用途向けの電子線照射架橋ポリエチレン管の開発放射線の種別　　：ベータ線放射線源　　　　：不明フルエンス（率）：不明線量（率）　　　：80-120kGry 利用施設名　　　：不明照射条件　　　　：不明応用分野　　　　：給湯給水分野概要　　　　　　：　無架橋のポリオレフィンをベースとした樹脂管の接続方法の一つに熱融着接続がある。架橋ポリエチレン管にこの熱融着接続の適用を試み、過酸化物架橋ポリエチレン管(PEX-A)、シラン架橋ポリエチレン管(PEX-B)、電子線照射架橋ポリエチレン管(PEX-C)の3者についてテストしたところ、過酸化物架橋ポリエチレン管のみが無架橋のポリエチレンの場合に近い質の融着接続ができ、シラン架橋品、電子線照射架橋品については、良い結果が得られなかったとのことである。詳細説明　　　　：　　現在、通湯用途に用いる架橋ポリエチレン管の種類は、例えばDIN 16892では過酸化物架橋、シラン架橋、電子線照射架橋の3種について規定されている。日本の架橋ポリエチレン管はJIS K 6769に過酸化物架橋、シラン架橋のみが規定されており、電子線照射架橋についてはまだ検討が始まったばかりである。ポリオレフィンをベースとした樹脂管の接続法の一つとして熱による融着接続がある。この場合樹脂管の材質が熱可塑性樹脂であることが前提となるため、架橋ポリエチレン管においては、無架橋層と架橋層の二重構造となった管を製造し、融着は無架橋層同士で行うのが基本となっている。ところが、数少ない接続部のために管全長に渡ってを二重構造とすることの不効率さも指摘されており、最近架橋ポリエチレンと無架橋ポリエチレンあるいは架橋ポリエチレン同士での融着接続の検討がなされている。この技術に関連する一文献について取り上げてみた。ここでは、過酸化物架橋、シラン架橋、電子線照射架橋の3つのタイプの架橋ポリエチレン管を比較している。　　熱融着実験用サンプルとして次のものを用いている。架橋ポリエチレン3種類(過酸化物架橋ポリエチレン管(PEX-A)、シラン架橋ポリエチレン管(PEX-B)、電子線照射架橋ポリエチレン管(PEX-C))及び無架橋のポリエチレン管2種類(中密度ポリエチレン管(MDPE)、高密度ポリエチレン管(PE100)) スライスしたサンプルを用いたテスト：ここではPEX-A、PEX-B、PEX-C、MDPEの4材料を用いている。2材料の間での融着強度を評価するために、200μmにスライスしたサンプルを用いている。2種類のスライスサンプルを重ね、一定の接触面以外の部分にはアルミフォイルを間に挟み、接触面のみを熱プレスにて融着させた。そしてその融着された面について、ピールテスト(引張で剥がす)が行なわれた。結果は表1のようになっている。表1　Failure type in peel tests on foils of PEXa,PEXb,and PEXc welded to MDPE foils（原論文1より引用） ----------------------------------------- Material MDPE PEXa PEXb PEXc ----------------------------------------- MDPE C C C C PEXa C C PEXb C A PEXc C C ----------------------------------------- *Welding pressure 0・06MPa;C=cohesive failure mechanism (in the MDPE,if present);A=adhesive failure mechanism (failure of the weld plane). Even with x3 higher welding pressure of 0・18 MPa there is an adhesive failure mechanism in welds between PEXb and PEXb. 　評価結果にCと表されているものはしっかりと融着されていたもの。Aとは融着面が剥がれたものである。PEX-B同士では融着が不十分と判定されている。　融着継手サンプルを用いたテスト：ジョイントとしてPE100と同じ材質の継手を用い、それに対するPEX-A、PEX-B、PEX-C、MDPE、PE100の5材料の融着接続を試みている。接続してできた各ユニット(例えばPE100継手の両側にPEX-Aパイプが接続されたもの)は軸方向に4分割され、さらに横に2分割されて接続部1カ所を含む8個のピースサンプルとして取り出された。それぞれのピースサンプルについてピールテストした結果は表2のようになっている。表2　Electrofusion welds with PE100 couplers peel tested according to ISO 13954（原論文1より引用） ----------------------------------------------------- Pipe type Cohesive fractures,% ----------------------------------------------------- PEXa(manufacturer A) 75 PEXa(manufacturer B) 100 PEXb 13 PEXc 25 MDPE 100 PE100 100 ---------------------------------------------------- 　全8サンプルの内十分な融着がなされていたものの数を%で表している。75%は6個、100%は8個、13%は1個、25%は2個を表しているものと思われる。　分析：後者のテストで得られたサンプルについて、その融着界面がSEMにて観察されている。SEM写真(×10,000)については本文中に掲載されているが、PEX-AとPE100の組み合わせではラメラの構造が似ており両者の区別がほとんどつかないが、PEX-B、PEX-CとPE100の組み合わせではPEX側に小さなピンホールのようなものが見えるなどPE100とは観察上の違いが見られた。FTIRによる材質調査ではPEX-A、PEX-B、PEX-C、MDPEの4サンプルについて行われた。結果は図1のようになっている。図1　Part of infrared spectra of PEXa,PEXb,and PEXc compared with that of MDPE - bending vibration at ～1450㎝-1 omitted（原論文1より引用）　MDPEと比較して、PEX-Aは組成に違いが無いこと、PEX-BではSi-O結合を含む点で異なること、PEX-CはEVAを含んでいるらしいことがわかり、このように微量の不純物の存在が熱融着の質に大きく影響していることが推察された。テスト結果より熱融着という観点からPEX-Aは無架橋ポリエチレンと変わらない質を提供し、PEX-B、PEX-Cでは無架橋ポリエチレンのレベルの質は得られなかったとされている。そしてこのことをSEM観察で裏付け、FTIRによって不純物の存在が要因となっていることが推察された。コメント　　　　：日本では電子線照射架橋ポリエチレン管はまだ検討段階であるが、過酸化物架橋やシラン架橋と比較して添加する物質が少ないことから衛生面にて優位性がある点において注目されている。また、融着接続技術に関しても、不純物の観点から考えれば過酸化物やシランカップリング剤を添加しない電子線照射架橋ポリエチレンが有利とも思われる。論文ではテストに用いた材料にEVAが存在していたとなっているが、同条件で比較した場合の結果が期待される。また、論文中には架橋度の違いによって差があるとは言えない結果も見られたが、電子線照射架橋であれば、融着面の架橋度を選択的に下げるなどの技術も可能と思われ、技術開発が期待される。原論文１ Data source 1： Welding of peroxide,silane,and electron beam crosslinked polyethylene pipes F.L.Scholten and M.Wolters Plastics,Rubber and Composites Processing and Applications 1998 Vol.27 No.10 p465 参考資料２ Reference 2： Radiation PEX debuts for PB replacement Jan H.Schut PLASTICS WORLD / February 1997 p13 キーワード：過酸化物架橋、シラン架橋、電子線照射架橋、熱融着継手、ピールテスト、SEM、FTIR Peroxide crosslinked, Silane crosslinked, Electron beam crosslinked, Electrofusion couplers, Peel test, Scanning electron micrograph, Infrared spectra 分類コード：010101
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