ゴムの放射線劣化

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作成： 2000/11/06 栗田　浩三データ番号　　　：010215 ゴムの放射線劣化目的　　　　　　：電線、ケーブル用ゴム材料の放射線及び熱の複合劣化における寿命評価放射線の種別　　：ガンマ線放射線源　　　　：Co-60γ線フルエンス（率）：――― 線量（率）　　　：50-1000Gy/h,5kGy/h 利用施設名　　　：日本原子力研究所高崎研究所照射条件　　　　：高温空気循環槽中、酸素加圧中(0.5MPa) 応用分野　　　　：電線、ケーブル、電気絶縁材料概要　　　　　　：　原子炉で用いられる電線・ケーブル用ゴム材料(EPゴム、CSM、シリコーンゴム)の加速劣化による寿命評価を行った。放射線と熱の複合劣化を同時劣化と逐次劣化の2方法により評価したところ、加速倍率は劣化時間に反比例するという結果が得られた。同時劣化と逐次劣化の結果は比較的一致したものとなっている。詳細説明　　　　：　　原子力発電所で使用される電線、ケーブルの絶縁及びシース材料であるエチレンプロピレンゴム［EPゴム］、クロロスルホン化ポリエチレン［CSM］、シリコーンゴムの実験配合材料について熱と放射線による複合劣化を加速試験により調べ、実使用環境での寿命を推定する手法の検討を行った。　使用環境の基準として、EPゴム、CSMは放射線は1Gy／h、温度は50℃に、シリコーンゴムは放射線0.5Gy／h、温度100℃に設定し、この条件での劣化速度の50倍から1000倍(シリコーンゴムは50倍～500倍)の加速を想定した劣化を行った。放射線劣化の加速はCo-60γ線を用い、線量率を加速倍率とした。熱劣化の加速は各種材料の劣化の温度依存性より算出した。　　又、加速劣化の与え方は、①試料を空気循環槽中で所定温度に加熱しながらγ線を照射する方法(以下同時劣化)②あらかじめ室温で試料が均一に酸化される条件で放射線劣化［酸素加圧下照射(0.5MPa、5kGy／h)］を所定の線量まで与え、その後空気循環恒温槽中で熱劣化を与える方法(以下逐次劣化)で行った。　材料特性の評価は1mm厚さのシート試料を劣化させ、引張り試験により破断時の強度、伸び、100%モジュラスを測定した。この中で特に劣化に対する応答性の良い伸び特性についての結果を以下に示す。　EPゴム、CSM、シリコーンゴムは、加速倍率50倍～1000倍の同時劣化において、破断伸びの低下速度は加速倍率においてほぼ比例して増大し、その劣化挙動は各加速倍率においてほぼ相似であった。EPゴムにおける破断伸びの変化を図1に示す。図1　Variation of elongation of EP rubber with varied accelerated rates in simultaneous aging EPゴムの加速劣化による破断伸びの変化(同時劣化)（原論文1より引用）　又、この際の加速倍率と劣化時間の関係を図2に示す。劣化時間は破断伸びが初期値の半分に達する時間及び破断延びの絶対値が100%となる時間を寿命と想定して求めた。図2より加速倍率は劣化時間にほぼ反比例する関係にあることがわかる。CSM、シリコーンゴムにおいても同様に加速倍率は劣化時間と反比例するという結果が得られている。図2　Aging time of EP rubber as a function of accelerated rate in simultaneous aging EPゴムの加速倍率と劣化時間の関係（原論文1より引用）　寿命推定は図2のような加速倍率と劣化時間のグラフより加速倍率1(=初めに設定した使用環境［1Gy／h、50℃　シリコーンゴムは0.5Gy／h、100℃］)における劣化時間を外挿により推定し、破断伸びが初期値の半分になる時間を寿命とすると、この実験に用いられたEPゴムで200,000時間(23年)、CSMで100,000時間(11年)、シリコーンゴムで112,000時間(13年)という結果が得られている。　　同時劣化の加速試験は放射線と熱を同時加速する必要から、広い照射場所及び多数の照射容器を必要とし、かつ多大の労力を要する等の問題がある。これに対し逐次劣化は室温で放射線劣化させ、熱劣化は別途に与えるので、劣化試験は容易である。逐次劣化と同時劣化の加速性の比較を行うことで、逐次劣化の評価の妥当性を検証した。逐次劣化における各加速倍率における破断伸びの低下は、同時劣化とほぼ同じ傾向を示した。同時劣化と逐次劣化における寿命の加速倍率に対する比較を図3に示す。CSMの場合、加速倍率50～600の範囲で寿命の比がほぼ1であり、双方の試験で求めた寿命が良い一致を示している。EPゴムの場合は同時劣化試験で求めた寿命に比べ、逐次劣化試験の方が大きくなる傾向を示しているが、低加速倍率では逐次変化と同時劣化の比がより1に近い値となっている。これらの結果より、逐次変化の加速試験は同時劣化での寿命を比較的よく反映していることがわかる。図3　Ratio of lifetime evaluated in sequential aging(Tse) to that in simultaneous aging (Tsi) in varied accelerated rates 加速倍率と(逐次劣化による寿命Tse／同時劣化による寿命Tsi)の関係（原論文1より引用）コメント　　　　：　我国の原子力発電所は初期に建設されたものは30年以上を経過しており、原子力発電所の安全運転及び長寿命化の観点から、原子炉を構成する機器の経年劣化が課題となっている。電線、ケーブルも重要な機器のひとつであり、その寿命推定の方法として本報告で用いられている加速劣化評価、特に試験の簡便さを配慮した逐次劣化法は有効な評価手法であると言える。原論文１ Data source 1：電線材料の放射線・熱加速劣化試験による寿命評価八木敏明、瀬口忠男、奥田智明*、金光谷和彦*、橘忠男* 日本原子力研究所高崎研究所、*三菱電線工業株式会社中央研究所電線材料研究部三菱電線工業時報　第84号原論文２ Data source 2：電線材料の放射線・熱加速劣化試験による寿命評価(Ⅱ) 八木敏明、瀬口忠男、奥田智明*、金光谷和彦*、古川清志* 日本原子力研究所高崎研究所、*三菱電線工業株式会社中央研究所電線材料研究部三菱電線工業時報　第87号キーワード：γ線、放射線劣化、熱劣化、加速試験、寿命評価、EPゴム、CSM、シリコーンゴム γ-ray,　radiation aging ,thermal aging,accelerated test ,life evaluation, ethylene propylene rubber, chlorosulfonated polyethylene, silicone rubber 分類コード：010104,010105
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