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作成: 1999/10/13 四本 圭一

データ番号   :010193
工業用Co-60γ線照射装置の設置
目的      :60Co大線源照射施設設置の手引き
放射線の種別  :ガンマ線
放射線源    :60Co線源(37PBq)
フルエンス(率):400J/m2.s
線量(率)   :10-50kGy
利用施設名   :日本原子力研究所高崎研究所コバルト第1棟
照射条件    :空気中、常温、常圧
応用分野    :放射線滅菌、放射線加工、食品照射

概要      :
 医療用具等の放射線滅菌プロセスに利用されている工業用Co-60γ線照射装置には、遮蔽容器に線源を格納する方式とプール水中に線源を格納する方式のものがある。1基あたりの放射能は、4〜40PBqで、ペンシル型二重密封Co-60線源をもちいる。施設を設置したり、運転する場合「放射性同位元素等による放射線障害防止に関する法律」によって科学技術庁長官の認可が必要である。法定の技術基準に適合する施設を建設し、科学技術庁長官が行う施設検査に合格しなければならない。

詳細説明    :
 
 医療用具等の放射線滅菌プロセスに利用されている工業用Co-60γ線照射装置は、ペンシル型二重密封Co-60線源を板状又は円筒状のラックに組み入れて使用する。1基あたりの放板射能は、4〜40PBqで、鉛製の遮蔽容器に線源を格納する乾式とプール水中に線源を格納する方式のものがある。両方式とも、照射中は線源が照射室内空気中に露出され、その周囲を専用のコンベヤーに載せた照射物が移動する。
 
 Co-60は人工の放射性同位元素である。β崩壊でβ線のエネルギーは0.318MeV、1壊変当たり1.17MeVと1.33MeVの2つの光子を放出し、(従って、1Ci=37GBq当たりのγ線出力は0.0148W)半減期は5.27年である。図1に放射線プロセスで使用されているペンシル型密封線源カプセルを示した。米国NRCの技術基準では、1993年7月1日以降、照射装置に組み込む密封線源は二重カプセルであることが義務づけられている。SUS 316Lの二重円筒に、原子炉で照射した直径6mmφ、長さ25.4mmのスラッグと呼ばれるCo-60線源素子が16個溶封してある。1本当たりの放射能は、約0.37PBq(1万Ci)、出力は線源中央部から1mの距離でおおよそ13,000 R/hである。半減期が約5年であるので出力は年間12%の割合で減衰する。照射装置にはダミー線源(非放射性Co-59)とともに線源ラックに組み込み、定期的に新線源を補充しながら線量率分布に合わせて組み替え作業を行い、15〜20年間使用する。


図1 ペンシル型Co-60密封線源 (11Φx450L) Cobalt-60 source pencil

 プール水型の場合、非照射時には線源を水中4から5mの深さに保持する。水は遮蔽体の機能を果たし(水の1/10減衰層は約34cmである)水位レベルと線源保持点は照射室の入り口扉とインターロックされている。照射時には線源駆動機構によって照射室内の空気中所定の位置まで線源が引き上げられる。図2は照射室内の様子を示しており、Co-60線源、線源操作用マニピュレータ、照射物を置く照射台及び外から照射室内を監視できる遮蔽窓が見られる。照射中に、入り口扉が開放されるとか換気装置が停止するような「異常」が検出されると、線源は直ちに降下し水中の所定の位置に戻る仕組みになっている。照射室は天井も含めて厚いコンクリートによって遮蔽され(普通コンクリートの1/10減衰層は約16cmである)、照射点に線源があると入り口扉は自動的に施錠される。


図2 Co-60γ線照射室 The irradiation room with the slab type of cobalt-60 gamma-ray source

 遮蔽容器に線源を格納する乾式の場合、線源を容器の蓋の部分に取り付けておき、照射室天井から引き上げて線源を露出する方式と、シャッター機構を介して室内に線源を露出する方式がある。乾式の場合、遮蔽容器に線源を格納した時の自己吸収による発熱の問題から線源容量は5.5PBqが最大である。
 
 密封線源の性能規格についてはISOの規格を受けて、JISZ4821-1998が定められている。2ヶ以上の線源試験体について 温度、圧力、衝撃、振動及び破裂の5項目について試験を行い、1から7等級の判定を行う。等級の高い方が試験条件が厳しい。ISOやNRCの規格では試験項目に「曲げ」が加わっており、近くJISも改訂される予定である。使用する線源が規格に適合していることを確認する方法は、表面汚染、漏出試験等によって放射能の漏出を見る方法とへリウムによる発泡試験によってピンホールの有無を確認する方法がある。 
 工業用Co-60γ照射施設を設置したり、運転する場合「放射性同位元素等による放射線障害防止に関する法律」によって科学技術庁長官の認可が必要である。法定の技術基準に適合する施設を建設し、科学技術庁長官が行う施設検査に合格しなければならない。又、運転を開始する30日前に放射線障害予防規定を作成し、第1種放射線取扱主任者を中心とした放射線管理組織を整備して届出なければならない。

コメント    :
 プール水方式の場合、水中での電位差効果による線源の腐食をさけるため、線源を収納あるいは固定する枠またはラック等はできるだけSUS製とすること。プール水はイオン交換を行った浄水を用い、電気伝導度を10-20μS/cm以下で管理すること。空気中に生成するオゾンやNOxの影響を考慮して照射室内の換気を行うことが必要である。

原論文1 Data source 1:
コバルト第一照射棟照射施設の改修
中村 義輝、高田 功、金子 広久、平尾 敏雄、羽田 徳之、三友 昭市、橘 宏行、吉田 健三
日本原子力研究所
JAERI-M 260 1989

キーワード:照射施設、γ線、Co-60線源、法規制、許可、密封線源、放射線安全、プール水
irradiation facility, gamma-ray, cobalt-60 source, regulatory control, approval, sealed source, radiation safety, water pool
分類コード:010101,010204,010402

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