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作成: 1999/10/13 四本 圭一

データ番号   :010192
照射用電子加速器の設置
目的      :工業用電子加速器設置の手引き
放射線の種別  :エックス線,電子
放射線源    :電子加速器(3MeV,25mA),(300keV,100mA)
フルエンス(率):1014/cm2 s
線量(率)   :10-100kGy, 100kGy/s
利用施設名   :日本原子力研究所高崎研究所2号加速器
照射条件    :空気中、常温、常圧
応用分野    :放射線加工、電子線滅菌、食品照射、

概要      :
 医療用器具の滅菌、電線や高分子材料の製造等に用いられている1MeV以上の電子加速器は、「放射性同位元素等による放射線障害防止に関する法律」の規制を受ける。電子加速器の利点は電子線出力がON-OFF制御できることである。電子線照射では照射室内に大量のオゾンや窒素酸化物が生成する。300keV以下の低エネルギー電子加速器は、自己遮蔽型の装置が市販されている。

詳細説明    :
 
 電子加速器は、電子銃から放出した電子を方向を揃えて加速管に打ち込み、管内の電場により加速して高速の電子ビーム(電子線)を発生する放射線発生装置である。放射線プロセスに用いられる工業用電子加速器は、出力する電子ビームのエネルギーにより、200keVから5MeVの範囲ではコッククロフト・ワルトン型や変圧器型のような直流高圧電場を用いた装置が、また、5から10MeVの範囲では直線加速装置(ライナック)のように高周波電場を用いる装置がよく用いられる。加速された電子ビームは交番磁界により走査した後、薄い金属箔で造られた照射窓を通して大気中に取り出し照射に利用する。電子線出力が数10から200kWの装置が市販されている。図1に直流加速形工業用電子加速器の構成を示した。加速器本体は、高電圧発生装置と加速管を一体化して圧力容器に収納し絶縁ガスを充填する。駆動用の電源装置は、本体の近傍に配置するのが標準的である。電子ビームを走査しながら出力するスキャンホーンは、加速器室と隔離して照射室の中央部に配置する。照射室及び加速器室は人や物の出入り口を含めて放射線(電子線及びX線)を遮蔽する構造である。


図1 直流加速形電子加速器の構成 Direct acceleration type of industrial electron accelerator

 図2は、実際の加速器施設の電子線取り出し部付近のビームスキャナー、ビームシャッター、照射物移動用コンベア等の配置を示す。


図2 電子線照射 Electron beam irradiation

 電子加速器照射施設を設置したり、運転する場合「放射性同位元素等による放射線障害防止に関する法律」によって科学技術庁長官の認可が必要である。法定の技術基準に適合する施設を建設し、科学技術庁長官が行う施設検査に合格しなければならない。又、運転を開始する30日前に放射線障害予防規定を作成し、第1種放射線取扱主任者を中心とした放射線管理組織を整備して届出なければならない。施設は障害防止法のほかに建築基準法や消防法に適合しなければならないが、電子加速器本体がSF6等の絶縁ガスを封入した圧力容器に収納されている場合は第2種圧力容器の設置について労働基準監督署に届出なければならない。また、駆動用電源に出力が50Wを超える高周波電源を使用する場合は電波法の規制により郵政省に届け出る必要もある。
 
 電子ビームを空気中に取り出すとオゾンや窒素酸化物が発生する。照射室の換気について対策する必要がある。大気汚染防止法ではオゾンを有害ガスとしてないが、光化学オキシダントについての環境基準は1時間値が0.06ppm以下としており、また日本産業衛生学会や米国OSHA(Occupational Safety Health Administration)は、作業環境中のオゾンの許容濃度を0.1 ppmとしている。
 
 放射線照射施設における重大な放射線障害を引き起こす危険性は、装置運転中に人が照射室等、高線量率の場所に誤って入り、被曝することである。電子加速器の利点は出力がON-OFF制御できることであり、駆動電源を遮断すれば、運転が停止されるので放射線を発生しないという点が重要である。安全インターロックはこの「加速器運転のON-OFF」が安全かつ円滑に実行できるように設計される。
 
 原子力基本法における「放射線」の定義によると、電子線については、1メガ電子ボルト以上のエネルギーを有する電子線およびX線とあり、従って1 MeV未満の低エネルギー電子加速器は、障害防止法によって規制されない。
 
 300keV以下の低エネルギー電子加速器は、自己遮蔽型の装置が市販されている。線状カソードからある一定の幅に出た熱電子を照射窓に向かって一段加速する。装置全体が鉛板等で遮蔽されているので、特別な遮蔽設備は必要としないが照射窓の冷却に窒素ガスを用いるのでその供給設備が必要となる。図3 に自己遮蔽型低エネルギー電子加速器を示す。


図3 自己遮蔽型低エネルギー電子加速器 Integrally shieleded low energy electron accelerator 702

 

コメント    :
 電子加速器の運転に際して、電子ビームが空気と反応してできるオゾン及び窒素酸化物の処理は重要である。100kW級の照射用電子加速器を運転した場合、照射室内のオゾン濃度は数100から1000 ppmになる。室内の排気を活性炭配合剤等で除去処理をしてから大気中に放出するなどの方法も採られているが、確立した技術ではない。照射コスト低減のためにも早急に技術開発することが必要である。

原論文1 Data source 1:
3MeV,75kW電子加速器設置報告
四本 圭一、須永 博美、水橋 清、田中 隆一、田村 直幸
日本原子力研究所
JAERI-M 093 1981

原論文2 Data source 2:
高崎研低エネルギー電子加速器(300keV,100mA)の仕様と運転特性
春山 保幸、四本 圭一、岡本 次郎
日本原子力研究所
JAERI-M 93-114 1993

キーワード:電子加速器、電子線照射、放射線安全、法規制、オゾン、X線、放射線加工、高電圧
electron accelerator, electron beam irradiation, radiation safety, regulatory control, ozon, X-ray, radiation processing, high voltage
分類コード:010101,010302,010501

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