工業用放射線照射装置の運転に関する法的な規制

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作成： 1999/10/13 四本　圭一データ番号　　　：010191 工業用放射線照射装置の運転に関する法的な規制目的　　　　　　：放射線プロセスにおける照射用電子加速器及びCo-60大線源照射装置の運転に関する法的な規制放射線の種別　　：エックス線,ガンマ線,電子放射線源　　　　：電子加速器(200keV-10MeV),⁶⁰Co線源(37PBq) フルエンス（率）：10¹⁴/cm², 10¹¹/(cm².s) 線量（率）　　　：5-100kGy,10kGy/h 利用施設名　　　：日本原子力研究所高崎研究所照射施設など照射条件　　　　：空気中、常温、常圧応用分野　　　　：放射線滅菌、食品照射、放射線加工概要　　　　　　：　工業用照射施設の運転は、「放射性同位元素等による放射線障害防止に関する法律」の規制を受ける。使用者(事業主)は、照射施設の使用を開始する前に、放射線取扱主任者を選任し、放射線障害予防規定を作成して科学技術庁長官に届出る。運転開始後は、放射線取扱主任者の監督の基に、放射線障害予防規定を遵守し放射線障害の発生の防止と公共の安全を確保することに務めなければならない。詳細説明　　　　：　　放射線プロセスに利用されるコッククロフト・ワルトン形やライナック形などの照射用電子加速器やCo-60大線源を用いた工業用照射施設は、その設置及び運転に関して「放射性同位元素等による放射線障害防止に関する法律」の規制を受ける。法で定める技術基準に適合した施設を建設し、科学技術庁長官が行う施設検査に合格した許可使用者はその施設の運転を開始する30日以前に、放射線取扱主任者及び代理者(第1種放射線取扱主任者)を選任し、放射線障害予防規定(予防規定)を作成して科学技術庁長官に届出る。予防規定は届出事項であるが受理されるまでの時間的な問題もあるので、事前に科学技術庁放射線安全課のヒヤリングを受ける方がよい。　　予防規定は、照射施設を安全に運転するための基準を定めるものであるから、実際の施設に対応して具体的に定める必要がある。但し、変更する場合も30日以内に届出が必要なので、余り具体的に細かな照射装置の運転や放射線管理についての技術的事項や諸手続きまで定めてしまうと、後になって一寸した改善をする場合もその都度届出が必要となり、場合によって業務に支障を来すことになりかねないので、最初に作成するときに、細部については運転マニュアルや事業所内安全管理規則等で別に定める方がよい。予防規定で定めるべき事項を次に示す。1)施設の運転管理業務を担当する者の職務及び組織に関すること。2)放射線取扱主任者及び施設の安全管理を担当する者の職務及び組織について。3)施設の運転・保守に関すること。4)放射線源(Co-60密封線源または電子加速器)の使用に関すること。5)Co-60密封線源の保管、運搬及び廃棄に関すること。6)線量当量率の測定に関すること。7)管理区域に立ち入る者に対する放射線障害防止に必要な教育訓練に関すること。8)放射線業務従事者の健康診断に関すること。9)放射線障害を受けたおそれのある者に対する措置。10)記帳・記録及びその保存について。11)事故及び危険時の措置に関すること。12)その他放射線障害の防止に関し必要な事項についてである。届出が受理された後、照射施設の使用開始前の線量当量の測定を行い、運転管理業務担当者の配置、教育訓練、及び健康診断を実施してから、使用を開始する。　　　　使用開始後、使用者は照射施設の技術的適合基準についてこれを維持していくこと、及び使用状況を記録し保管することが法的に義務づけられている。日常の点検や定期的な自主点検において照射装置の運転状況の確認、出入り口の自動表示やインターロックの動作確認、照射室遮蔽壁の状態確認等々を実施し、施設の性能維持に努めるとともに、使用状況について、①線源の使用、保管、廃棄、運搬、並びに管理区域に立ち入る者に対する教育訓練の記録は年度末に帳簿を閉鎖し5年間保存,②管理区域における線量当量率の測定結果は5年間保存、③放射線作業従事者の外部被曝線量当量の測定結果は永年保存、④施設検査に合格した日から4年を経過した日以後1年以内に定期検査を受けることなどが必要である。図1　Bird-eye view of the No.1 Gamma irradiation facility of TRCRE 原研高崎コバルト照射第1棟の鳥瞰図　図1は日本原子力研究所高崎研究所コバルト照射第1棟の概要を示す。使用許可線源数量Co-60 55.5PBq,　水中格納式の照射施設で、厚さ約1.3 mのコンクリート壁で囲われた3つの照射室の床下、水深約4 mの処にセットされた線源を昇降して照射運転を行う。左上が施設への出入り口で、施設内全域を管理区域に指定している。図2　Bird-eye view of the No.1 Electron Accelerator irradiation facility of TRCRE 原研高崎1号加速器照射施設鳥瞰図　図2は2MeV,30mA,60kWコッククロフト・ワルトン型電子加速器照射施設で、建家2階中央部に加速器本体が、隣接して水平照射室、1階に垂直照射室が配置されている。各照射室の遮蔽壁は厚さ2 mのコンクリートである。1,2階の本体室および照射室周囲は屋上を含めて管理区域に指定されている。表1　放射線作業従事者に対する教育訓練項目と時間数 Regulatory training program for the radiation worker --------------------------------------------------------------------- 　　　　項目　　　　　　　　　初期訓練　　　　　備　考 --------------------------------------------------------------------- 放射線の人体に与える影響　　　0.5時間　　　再教育訓練は1年毎に　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　行う必要があるが時間放射性同位元素又は放射線　　　　　　　　　数についての法的な定め発生装置の取り扱い　　　　　　4.0時間　　　はない。放射性同位元素又は放射線発生装置による放射線障害　　　1.0時間防止に関する法令放射線障害予防規定　　　　　　0.5時間 --------------------------------------------------------------------- 　予防規定の遵守は施設の運転管理の必須事項であり、放射線取扱主任者の意見を尊重して施設の性能向上や運転業務担当者に対する教育訓練等(法定の教育訓練事項を表1に示す)を十分に行い、積極的に安全確保を進めることは使用者の責任である。　　照射施設を廃止する場合は、Co-60線源の処分や施設内の汚染検査等、使用の廃止に伴う措置についての報告書及び使用許可証を添えて廃止の日から30日以内に科学技術庁長官に届け出る。Co-60線源の引き取り処分については、日本アイソトープ協会に申し込む。コメント　　　　：　工業用照射施設における最近の事故は、オペレーターが決められた運転手順を守らなかったり、インターロック回路をバイパスして照射室に入ったり、放射線モニター等の防護機器が故障していたことが直接の原因である。装置の安全性を高める技術開発はメーカーによって進められているのであるが、一方において、施設の運転に携わる人に対する教育訓練が重要である。その中で、他の同様な放射線施設で発生した事故の内容を知り、担当する施設が抱える安全上の問題点を認識することも必須科目である。原論文１ Data source 1：放射性同位元素等による放射線障害防止に関する法律主務官庁：科学技術庁原論文２ Data source 2： 3MeV,75kW電子加速器設置報告四本　圭一、須永　博美、水橋　清、田中　隆一、田村　直幸日本原子力研究所 JAERI-M 093 1981 原論文３ Data source 3：コバルト第一照射棟照射施設の改修中村　義輝、高田　功、金子　広久、平尾　敏雄、羽田　徳之、三友　昭市、橘　宏行、吉田　健三日本原子力研究所 JAERI-M88-260 1989 参考資料１ Reference 1：アイソトープ便覧日本アイソトープ協会編丸善キーワード：照射施設、放射線安全、法規制、照射運転、届出、電子加速器、コバルト-60 irradiation facility, radiation safety, regulatory control, operation, approval, electron accelerator, cobalt-60 分類コード：010101,010302,010402
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