EB硬化技術の紙加工への応用

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作成： 1999/09/21 石垣　功データ番号　　　：010183 EB硬化技術の紙加工への応用目的　　　　　　：EB硬化技術の開発と紙加工への応用放射線の種別　　：電子放射線源　　　　：電子加速器(300 keV 以下) 照射条件　　　　：窒素気流中、室温応用分野　　　　：写真印画紙、高級印刷用紙、ホワイトボード基材、剥離シート概要　　　　　　：　電子線硬化法は、無溶剤、短時間硬化等により省資源・省エネルギーに優れたプロセスである。また、電子線の透過力は、紫外線と較べて優れているので、紫外線では困難とされている顔料を含有した塗膜の硬化が可能である。一方、ドラムを利用したキャストコート法は、優れた光沢性と平滑性を有する紙の加工法として知られている。そこで、このキャストコート法と電子線硬化技術を組み合わせたEBドラムキャスト法が開発され、従来にない高光沢度と優れた平滑性を有する紙の加工が可能となった。詳細説明　　　　：　　常温で液状の樹脂に電子線を照射して橋架けを起こさせて短時間に硬化させるという特徴を紙加工の分野で応用することにより、従来にない高平滑、高光沢の塗工紙を得ることができる。従来の水系、油系の塗工では塗膜の収縮と溶媒による紙の潜在的歪の表面化によって平滑度の高い表面を得ることは困難である。EB硬化では、塗料に電子線を照射して硬化させた時の塗料の収縮は小さく(約20%)、また無溶媒のため、溶媒の蒸発もなく紙の潜在的歪の表面化もなく平滑度、光沢度の高い紙の加工が可能となる。一方、紙の成分であるセルロースは放射線照射により分子鎖が切断され強度が低下することが知られている。セルロース繊維間の結合には変化はなく、剛度、引張強度、引裂強度などへの影響は小さいが、セルロース繊維そのものの強度が大きく影響する耐折度、ゼロスパン引張強度などの低下が大きい。このため、硬化塗料としては低線量で硬化する樹脂が好ましい。さらに、塗工表面から照射する場合には、塗膜厚さと電子線の透過性を考慮して加速電圧を設定し、基材の紙に到達する電子線の量をできるだけ少なくして紙の劣化を抑制することが望ましい。電子線硬化塗料は、モノマーで塗料に流動性を付与して基材に塗装しているが、モノマー成分は浸透性が強いので、基材が紙の場合には塗料が浸透しないように適当なバリアー層が必要となる。　　従来、最高級の平滑度と光沢を持つ紙の加工法としてキャストコート法がある。これは、独特のキャストドラムを用い、塗工後、乾燥するまでの段階でドラムの平面を写し取り、光沢と平滑性を付与するものである。そこで、この技術とEB硬化技術を組み合わせることにより、これまでには到達できなかったさらに優れた平滑性と高光沢度を持った紙の加工法、EBドラムキャスト法が開発された。図1　EBドラムキャスト法（原論文2より引用）図2　EBドラムキャスト法(1パス2層塗工)（原論文2より引用）　　EBドラムキャスト法では図1及び図2に示すように、シート状の基材とキャストドラムの間にEB硬化塗膜を挟み、シート状基材の裏面から電子線を照射して塗膜を硬化させる。その後シート状基材と硬化塗膜の積層体をキャストドラムから剥離する。硬化塗膜の表面はキャストドラムの表面が写し取られるので、キャストドラムが鏡面状であれば、鏡面状の硬化塗膜表面が得られる。EBドラムキャスト法は電子線の透過性と無溶剤塗工の特徴を活かしたプロセスである。上述のように電子線照射による紙の強度低下は避けられないので、紙の強度劣化を極力抑えるように、電子線のエネルギーや線量を基材(紙)の質や厚みに応じて選択する必要がある。　　EBドラムキャスト法で得られた紙の表面性を、通常のキャストコート紙、溶融押出し塗工(エクストルージョン・ラミネート)紙と比較して、表1に示した。EBキャスト紙が他の方式の紙より優れた表面性を有することがわかる。表1　各方式表面性の比較（原論文2より引用） ----------------------------------------------------------------------------------- 　　　　　　　　　　　　通常キャスト　　エクストルージョン・　 EBキャスト紙　　　　　　　　　　　　　コート紙　　　　　ラミネート紙　　 ----------------------------------------------------------------------------------- 中心線平均粗さ（ミクロン） 0.184 0.104 0.069 JIS-BO601 小→良 ----------------------------------------------------------------------------------- 20゜光沢度(%) 　　　　　　　　　　34.4 66.1 79.6 JIS-Z8741 大→良　 ----------------------------------------------------------------------------------- 像鮮明度(%) 　　　　　　　　　 6.9 25.9 67.4 　JIS-K7105 大→良 ----------------------------------------------------------------------------------- 　　この技術を利用して、ポスター、カレンダーなどの商業印刷紙、ホワイトボード用紙が実用化されているが、さらに開発目的に応じて、電子線硬化塗膜に種々の機能を持たせる必要がある。例えば、電子線硬化塗膜の耐薬品性を活かした写真印画紙の支持体、離型性を持たせた工程用の剥離シート、耐熱性、強靭性を活かした感熱記録紙のオーバーコート層などが特許に見られる。　コメント　　　　：　本文中にもあるように、紙の主成分であるセルロースの耐放射線性は低いので、電子線照射の基材に対する考慮が極めて重要である。電子線のエネルギー、線量や照射雰囲気の選定とともに、より少ない線量で硬化反応が完結する樹脂組成の開発が、EBドラムキャスト法による新規製品の成否の鍵とも云える。原論文１ Data source 1：高光沢紙「スーパーミラーP]　=電子線硬化技術の紙加工品への応用= 神谷　昌博新王子製紙㈱新素材、7(9), p. 4-6(1996) 原論文２ Data source 2：電子線硬化技術の紙加工製品への応用神谷　昌博新王子製紙㈱放射線と産業、No. 69, p. 19-22(1996) 原論文３ Data source 3： EB硬化技術の紙加工への応用、超平滑、高光沢紙『スーパーミラーの開発」取材記事 Polyfile(ポリファイル)、 35(2), p. 22-24(1998) キーワード：電子線、硬化、紙、単量体(モノマー)、ポリマー、樹脂、塗膜、ドラムキャスト法、耐熱性、溶剤、electron beams, curing, paper, monomer, polymer, resin, cured film, drum-casting(?), thermo-resistant, solvent, 分類コード：010101, 010301, 010302, 010304
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