高エネルギー電子加速器による感染性廃棄物の殺菌

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作成： 1998/09/14 細渕　和成データ番号　　　：010125 高エネルギー電子加速器による感染性廃棄物の殺菌目的　　　　　　：感染性廃棄物の電子線殺菌放射線の種別　　：エックス線,ガンマ線,電子放射線源　　　　：電子加速器(10MeV、10kW) 線量（率）　　　：2-40kGy 利用施設名　　　：Titan Scan Industries(Denver,Colorado) 照射条件　　　　：常温大気中応用分野　　　　：微生物制御、感染対策、環境保全、廃棄物処理、医療用具概要　　　　　　：　1980年代後半、医療機関から排出される感染性廃棄物による二次感染が社会的に大問題となった。そこで、行政機関はその適正処理に関する規制を行うようになった。それに合わせるようにして、感染性廃棄物の殺菌技術が開発研究された。その技術の1つとして、高エネルギー電子加速器による感染性廃棄物の無害化がある。本技術は、将来的に有望な処理技術である。詳細説明　　　　：　　1980年代後半、医療機関から排出される感染性廃棄物による二次感染が社会的な大問題となり、新聞、TV等のマスコミは医療機関から排出される廃棄物の危険性を報道した。また、海岸に打ち上げられた注射器、橋桁の下に散乱しているカテーテル類などの不法投棄が社会問題となった。そこで、各国の行政機関は感染性廃棄物の適正処理に関する法規制を行うようになった。米国EPA(環境保護庁)では、「医療廃棄物トラッキング法(1988年)」を、わが国の厚生省では「医療廃棄物処理ガイドライン(1989年)」を発表した。　　このガイドラインは、後に「廃棄物処理法に基づく感染性廃棄物処理マニュアル(1992年)」に改正された。これらの法規制に合わせて、医療機関の多くは感染性廃棄物の無害化のために、感染性廃棄物の焼却処理を行うようになった。特に、米国では3,700台の感染廃棄物の焼却炉が稼働するようになったと言われている。しかし、感染性廃棄物の中には、カテーテル、チューブ、輸液セット類が多く含まれ、それらは塩化ビニールで作られている。このため、これらを焼却処分するとダイオキシンが発生する恐れがある。　　そこで、1997年に米国EPAは感染性廃棄物の焼却施設に対してダイオキシンの排出基準を設定した。この排出基準に合った焼却施設に改造するには、膨大な費用がかかる。また、ランニングコストも高くなることが予想される。そこで、この焼却法に替わる方法として放射線の利用が注目されるようになってきた。特に、ハイテクノロジーの発展は、性能や安定性の優れた高エネルギー電子加速器(10MeV)を生み、この装置の応用として、感染性廃棄物の無毒化への適用が考えられるようになった。　　電子線殺菌の実用化で問題になるのは、①ランニングコスト、②電子線の透過力、などである。ランニングコストに関しては、いろいろな研究者によって計算されている。むろん、処理量によって異なるが、焼却では0.15-0.20ドル／ポンド、化学薬剤処理では0.14-0.16ドル／ポンド、湿熱処理では0.08-0.12ドル／ポンド、そして電子線処理では0.06-0.08ドル／ポンドと計算され、高エネルギー電子加速器による処理方法が一番低コストの方法であると報告されている。そして、電子線処理の場合、その処理量がさらに多くなるとランニングコストはさらに下がってくると言われている。また、焼却のコストと同じコストを電子線処理にかけた場合には、電子線処理では30-40kGyの線量を照射することができ、この線量だと微生物は完全に死滅する線量となる。　　もう1つの問題である電子線の透過力に関しては、感染性廃棄物の中にラジオクロミック線量計を設置して、線量分布を求める研究が行われている。この研究から、電子線の透過力には問題がないことが報告されている。このように感染性廃棄物の無害化に高エネルギー電子加速器を用いる電子線処理技術は有効な処理技術であると結論付けられている。また、この電子線殺菌で処理された廃棄物は、熱処理された廃棄物とは異なって、廃棄された医療用具の原形をとどめている。このため、電子線殺菌で処理された廃棄物は再資源として役に立つ可能性を持っている。この意味で、電子加速器による廃棄物処理技術は将来性のある技術とも考えられている。なお、図1には高エネルギー電子加速器による感染性廃棄物の処理システムを示す。図1　高エネルギー電子加速器による感染性廃棄物の処理システムコメント　　　　：　高エネルギー電子加速器の処理能力は膨大である。このため、医療関係機関から感染性廃棄物を能率良く収集して、加速器が設置されてある処理センターに集めるかが大きな課題となる。大量の感染性廃棄物が集まれば、その分、ランニングコストも安くなる。また、感染性廃棄物を無毒化した廃棄物から付加価値の高いリサイクル製品を生み出す工夫も必要となる。電子線殺菌技術は環境にやさしい、将来性のある技術であるが、経済性を考慮しないと実用化は難しい。原論文１ Data source 1： Disinfection of infectious medical waste using high energy electrons. Brian Rolingson, Thomas D. Waitr, Bhagyashree R. Kundalkar, Charles N. Kurucz University of Miami, Department of Civil Engineering 51st Purdue University Industrial Waste Conference Proceedings キーワード：電子線滅菌、放射線滅菌、殺菌、高エネルギー電子加速器、感染性廃棄物、医療廃棄物、廃棄物処理、感染対策 electron beam sterilization, radiation sterilization, ,disinfection, high energyelectron beam accelerator, infectious waste, medical waste, treatment of waste,infection control, 分類コード：010402,010503,040302
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