ポリオレフィン廃棄物利用熱収縮フィルム

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作成： 1998/10/30 須藤　高史データ番号　　　：010119 ポリオレフィン廃棄物利用熱収縮フィルム目的　　　　　　：ポリエチレン廃棄物を利用した熱収縮フィルムの製造放射線の種別　　：ガンマ線放射線源　　　　：Co-60 フルエンス（率）：50-250kGy 利用施設名　　　：RH-γ-20 　照射条件　　　　：空気中、室温応用分野　　　　：廃プラスチック処理、産業廃棄物処理、再原料処理概要　　　　　　：　低密度、高密度ポリエチレン廃棄物及びその混合物をCo-60の高エネルギーγ線照射を行い、架橋させ、熱収縮フィルムを製造した。20Mrad (200 kGy)までの照射では、線量の増大とともに引張り強さが改善された。また、劣化が進み破断伸びが大きくなったポリエチレン廃棄物を利用すると、引張り強さが改善された。この時に低密度、高密度両ポリエチレンの混和性も改善されている。テストしたすべての試料は、130゜Cでの引張り、引張下での冷却、その後の無荷重加熱後に、記憶効果を示した。ポリエチレン廃棄物の劣化の度合い及び照射量が収縮度に影響する。詳細説明　　　　：　　ポリマー廃棄物の再生は環境保全上重要である。消費者廃棄物はほとんどが包装材の低密度及び高密度ポリエチレン(LDPE、HDPEと略す)であるがその再生は複雑である。これは、①利用時に生じた分子鎖切断による劣化による粘弾性的、機械的性質の低下、②両PEの難混合性による再生物質性能への影響、③廃棄ポリエチレンの性質のばらつき等が原因となっている。ここでは両PE及びその混合物のγ線-照射による熱収縮フィルムへの再生につき研究した。　　LDPE廃棄物、劣化の度合いの異なるHDPE(各A、B1、B2と称す)を用いた。LDPE廃棄物は農業用及び包装用フィルム、HDPE廃棄物は産業廃棄物である。PEの架橋はCo-60 γ線照射で行い(室温大気中)、照射量は時間により制御した。試験ではPEシート(厚さ0.5mm)を130゜Cのグリセリン中で100%引張り、引張のままで室温で冷却した。収縮力はその後の均一加熱、冷却時に計測した。　　照射の結果、各試料のゲル分率は10Mrad (100 kGy)までは上昇するが、それ以上の25Mrad (250 kGy)では減少した。架橋は結晶化度の減少を伴う。25Mrad　(250 kGy)以上では放射線酸化劣化が起こりカルボニル成分が急激に増大し、同時に、微小硬度と結晶化度も上昇する。5-15Mrad (50-150kGy)の照射では非晶質相のみに効果があり、架橋が起こるため、高分子鎖は結晶化できない。25Mrad (250 kGy)以上の照射で劣化（分子切断）が始まり、高分子切片の再配列が可能となり、結晶化度と微小硬度の上昇を促す。線量増加に伴うカルボニル成分の増加は、フィルム厚み方向での酸化相分布が拡がるためで、PEは酸化劣化している。これは、PE全体及び表面層の結晶化度の違いでも分かる。放射線酸化劣化は拡散律速であり、空気中室温照射では主に表面近傍で生じる。　　A、B1、B2、A/B1(70:30)、A/B2(70:30)の各試料の照射前、10Mrad (100 kGy)照射後の比較を行った。この試料の中で最も非晶質が多いAのゲル分率が特に大きくなり、結晶化度が低下した。B1、B2も傾向的に同様である。降伏強さは照射前後で違いは小さい。破断伸びと引張強さへの照射効果が顕著である。引張強さは劣化の度合いが小さいB1で大きく上昇し、破断伸びはA、B2で上昇するがB1では減少した。通常、未劣化のPEの照射では引張強さは増大し、破断伸びは減少する。これは、初期の劣化の度合いの影響であり、混合体でも同様の傾向があった。各試料の照射量に対する破断伸びを図1に示す。図1　Elongation at break (ε) vs irradiation dose for LDPE waste A (3), HDPE waste B1 (1) and B2 (5), and their binary blends A/B1(2) and A/B2 (70:30,w/w) (4).（原論文1より引用）　架橋が優勢である5-10Mrad (50-100 kGy)では破断伸びの増加するが、（酸化）劣化が支配的となる25Mrad (250 kGy)では全ての試料の破断伸びが低下する。LDPEとHDPEは非混和性であり、その混合体は2つ以上の融解点を示す。 A/B1ではその現象が認められたが、A/B2では融解点は1ヶ所のみであった。劣化の度合いの大きいB2がAにより近くなり、混和性が増したことで説明できる。混合割合が異なるA/B2でもその傾向があった。　　未劣化のLDPEの場合は記憶効果を引き出すのには10Mrad (100 kGy)であったが、廃棄物の場合は20Mrad (200 kGy)必要であった。しかし一般的には15Mrad (150 kGy)で十分であった。熱緩和応力(σ_T_R)と収縮応力(σ_T_S)への影響を図2に示す。図2　Shrinkage stresses (σ_T_R and σ_T_S) vs temperature for virgin HDPE (2, 2'), LDPE waste A (4,4'), and HDPE waste B1 (3,3') and B2 (1,1') irradiated at 15Mrad.（原論文1より引用）　B2で緩和応力と収縮応力が驚く程高くなっている。未劣化のHDPEに匹敵する。一方、B1の記憶効果はAと似ている。今回の研究ではB1とB2の2つの試料のこの挙動は説明が困難である。　　ポリマーの消費者廃棄物の大部分はLDPE、HDPEとポリプロピレン(PP)の三種で占められる。二成分系と三成分系の緩和応力と収縮応力の比較を図3に示す。図3　 Shrinkage stresses (σ_T_R and σ_T_S) vs temperature for binary 70:30 (w/w) blends A/B1 (3) and A/B2 (2) and the ternary 70:20:10 (w/w/w) blend A/B/PP (1) irradiated at 15Mrad.（原論文1より引用）　この様な混合体の性質は、Aがマトリックスであり、Aに従うと思もわれるが、HDPEとPPの分散相もいくらかの効果を持っている。興味があるのは、分散相がより劣化していると、高い緩和応力と収縮応力が得られることである。PP廃棄物は緩和応力を高め、収縮応力を下げるが、後者はA/B1混合体と変わらない。三成分系も有用である。三成分系の混合割合の効果、記憶効果への原料廃棄物の劣化の影響等を、更に調べる必要がある。コメント　　　　：　熱収縮チューブは電線類の保護や、地中配管類の継手防食カバーとして利用され、その用途は広がっている。この原料として廃棄物ポリマーを使用できることは、重要である。廃棄物ポリマー処理として、熱回収、油化等が試みられているが、資源回収できるようになれば、都市ごみと産廃両者にとって有用である。原論文１ Data source 1： Heat-shrinkable films based on polyolefin waste Viksne Armand, Zicans Janis, Kalkis Valdis*, Bledzki Andrzej K.** Polymer Material Institute, Riga Technical University, *Faculty of Chemistry, University of Latvia, **Institute fur Werkstofftechnik, Universitat GH Kassel Die Angewandte Makromolekulare Chemie, 249, p.151-162 (1997) キーワード：ガンマー線、架橋、ポリオレフィン、廃棄物、再利用、熱収縮フィルム γ-rays, crosslinking, polyolefin, waste, recycling, heat-shrinkable film 分類コード：010506,010107,010207
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