医療廃棄物の滅菌放射線及び高周波処理の技術的・経済的比較

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作成： 1997/09/30 細渕　和成データ番号　　　：010097 医療廃棄物の滅菌放射線及び高周波処理の技術的・経済的比較目的　　　　　　：感染性廃棄物の各滅菌法の比較放射線の種別　　：電子放射線源　　　　：電子加速器(10MeV) 線量（率）　　　：25kGy 利用施設名　　　：ENEA-INN/TEC Radiation Technology Division 照射条件　　　　：室温大気中応用分野　　　　：環境保全概要　　　　　　：　病院などの医療機関から排出される廃棄物のうち、感染性廃棄物は感染性を除去するために滅菌処理をしなければならない。この滅菌法として、焼却処理が多く行われているが、放射線滅菌、高周波滅菌やその他の滅菌法の検討も行われている。詳細説明　　　　：　　病院、診療所などの医療機関から排出される廃棄物にはいろいろなものが混ざっている。特に、患者に使われた使用済み医療用具等は病原微生物で汚染されている可能性が高い。これらの廃棄物を滅菌しないで医療機関から排出されると、廃棄物が地域社会の感染源になりかねない。そこで、わが国始め多くの国では、医療機関から排出される廃棄物のうち、感染性を有する廃棄物については滅菌処理を法律的に義務づけるようになってきた(現在、わが国では「廃棄物処理法に基づく感染性廃棄物処理マニュアル」が通達され、このマニュアルに従って医療機関等では感染性廃棄物の処理が適正に行われている)。　　感染性廃棄物の多くは、滅菌処理として焼却が行われているが、その他の滅菌処理方法の検討も行われている。その代表的な滅菌方法として、放射線滅菌があげられる。表1には、感染性廃棄物を各滅菌方法で処理する時の条件や特徴・問題点をあげてある。表1　感染性廃棄物の各滅菌方法の比較 ------------------------------------------------------------------------------- 　滅菌方法　　　　　　　放射線　　　　　　焼却　　　　溶融　　　　高周波　　　　　　　　　　----------------- 　　　　　　　　　　γ線　　電子線 ------------------------------------------------------------------------------- 条件　　　　　　　　25kGy　　 25kGy　　　>800℃数秒　>高温数秒　 >135℃10分信頼性　　　　　　　高い　　　普通　　　　高い　　　　高い　　　　普通適用困難な廃棄物　　なし　　　なし　　　　なし　　　　なし　　　　病理廃棄物処理量　　　　　　　多い　　　多い　　　　多い　　　　普通　　　　少ない装置の運転　　　　　容易　　　難しい　　　普通　　　　普通　　　　容易装置の保守　　　　　容易　　　難しい　　　普通　　　　普通　　　　容易装置の据付　　　　　難しい　　難しい　　　普通　　　　普通　　　　容易コスト　　　　　　　高い　　　高い　　　　普通　　　　普通　　　　普通連続処理　　　　　　可能　　　可能　　　　可能　　　　可能　　　　不可能体積減少　　　　　　0％　　　 0％　　　　 90％　　　　85％　　　　30％資源化　　　　　　　可能　　　可能　　　　熱のみ　　　熱のみ　　　一部可能環境保全　　　　　　良い　　　良い　　　　普通　　　　普通　　　　良い ------------------------------------------------------------------------------- 　特に、感染性廃棄物の滅菌に放射線滅菌を導入する上での利点としては次のようなことがあげられる。①放射線滅菌がディスポーザブル医療用具の滅菌に30年間にわたって利用されてきた。その間に放射線滅菌に関する技術・経験が培われてきた。この培われてきた放射線滅菌の技術や知識を廃棄物の滅菌に応用できる。②放射線の透過力を活かして、集荷されたままの状態で感染性廃棄物を滅菌処理が可能である。すなわち、感染性廃棄物の取扱に関わる感染事故を防ぐことができる。③廃棄物に放射線を照射しても、問題となるような副産物が発生しない。焼却の場合には、有害なガスやダイオキシンを発生する場合がある。④放射線施設の管理が容易で、滅菌に対する信頼性や安全性が高い。　　逆に、感染性廃棄物に放射線滅菌を導入する上での欠点としては次のようなことがあげられる。①初期投資が膨大であり、ランニングコストが高い。むろん、処理量が少ないと、ランニングコストはさらに上がる。②照射施設には遮蔽施設が必要となるため、照射施設の移動は不可能である。このため、各医療機関から照射施設までの感染性廃棄物の運搬費用がかかる。感染性廃棄物の排出量が少ない医療機関にとっては運搬費はかさむことになる。このように経済的な問題がある。　　この経済的な問題を解決するために、いろいろな方策が考えられ、報告されている。この解決策として、①高い処理能力をもつ電子線滅菌を導入する。②放射線の透過力を高めるために、高エネルギー電子加速器(例えば、10MeVの線型加速器)とする。そして、③感染性廃棄物の処理量を多くすること(例えば、感染性廃棄物の処理量を毎時0.2トン以上とすれば高周波滅菌による熱処理よりも経済的である)、などがある。これらの点を考慮すれば、高周波滅菌による熱処理よりも放射線滅菌の方が感染性廃棄物の滅菌に優れている。コメント　　　　：　現在、感染性廃棄物の放射線滅菌は実用化されていない。この大きな理由は経済性である。廃棄するものに対して処理費用を多く掛けることは難しい。このため、感染性廃棄物の滅菌方法として、焼却処理が行われている。しかし、環境保全の観点から見ると放射線滅菌の導入は不可能ではない。原論文１ Data source 1： Hospital Waste Sterilization: A Technical and Economic Comparison between Radiation and Microwaves Treatments Tata A., Beone F. ENEA-INN/TEC Radiation Technology Division, P.O. Box 2400, 00100 Rome, Italy Radiat. Phys. Chem., Vol.46, p.1153 (1995) 参考資料１ Reference 1：感染性廃棄物の取り扱い細渕　和成東京都立産業技術研究所 Infection Control, Vol.4, p.272 (1995) キーワード：放射線滅菌、高周波滅菌、医療廃棄物、感染性廃棄物 radiation sterilization, microwave sterilization, medical waste, infectious waste 分類コード：010402
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