エンドトキシンに対する放射線照射の影響：γ線と電子線との比較

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作成： 1997/09/30 細渕和成データ番号　　　：010095 エンドトキシンに対する放射線照射の影響：γ線と電子線との比較目的　　　　　　：放射線によるエンドトキシンの不活化放射線の種別　　：ガンマ線,電子放射線源　　　　：⁶⁰Co線源、電子加速器線量（率）　　　：5-100kGy 利用施設名　　　：γ線(Conservatome, Dagneux, F-01120 Montluel and Rene Descartes University, Laboratoire de Chimie Physique, 45 rue des St Peres, Paris F-75006) 電子線(Caric, BP 35, F-91402 Orsay) 照射条件　　　　：室温応用分野　　　　：放射線生物学、食品照射概要　　　　　　：　発熱性物質(エンドトキシン)による汚染は医療分野において大きな問題となっている。ディスポーザブル医療用具製造においても、エンドトキシンの不活化の開発が期待されている。そこで、エンドトキシンが放射線で不活化できないか否かの開発・研究が行われている。詳細説明　　　　：　　医療行為に伴う発熱事故の多くは、発熱性物質(パイロジェン)に汚染していた医療用具や医薬品を用いることによって発生している。このため、医療用具や医薬品を製造する現場では、いかにして発熱性物質の汚染を防ぐかが大きな問題となっている。　　　発熱性物質としては、現在多くの物質が知られている。代表的な物質としては、細菌、真菌、ウイルス、酵母菌の各種微生物、種々の化学的発熱物質があり、特に最も強い発熱性物質としてグラム陰性細菌由来のエンドトキシン(内毒素)がある。　　このエンドトキシンは多くのグラム陰性細菌の細胞壁の外膜に局在している。特に、大腸菌、サルモネラ、プロテウス、シュードモナス、クレブシェラなどの菌種に多く認められている。エンドトキシンの化学構造は、多糖部分とリピドAと呼ばれている脂質部分からなるリポポリサッカライド(リン脂質多糖類)であり、非常に安定な物質である。このため、エンドトキシンで医療用具等が汚染されるとエンドトキシンを不活化させることが非常に難しいと考えられている。　　一般にエンドトキシンを不活化する方法としては、250℃、30分以上の乾熱処理が行われている。しかし、熱に弱いディスポーザブル医療用具や医薬品の場合、乾熱処理を行うことができない。そこで、放射線照射でエンドトキシンが不活化できるか否かの研究が行われ、次のような成果が報告されている。　　　①エンドトキシンの水溶液にγ線を照射すると、線量の増加にともなって、エンドトキシンの活性値は、対数的に減少すること。この減少傾向はエンドトキシンの初発濃度に影響されなかった(図1)。そこで、エンドトキシン濃度を1/10に減少させるに必要な線量(D値)を求めてみると、Guyomardらは4.8kGy、細渕らは9～10kGyの値を報告している。これらのことより、滅菌線量である25kGyのγ線を水溶液中のエンドトキシンに照射すると、エンドトキシン濃度を1/450以下に減少させることがわかっている。このように、水溶液中のエンドトキシンを放射線照射で不活化することが可能である。図1　水溶液中でのエンドトキシンのγ線による不活化（原論文2より引用）　②乾燥したエンドトキシンは100kGyの高線量のγ線を照射しても、不活化はわずかしか認められず、滅菌線量(25kGy)の照射では9割程度の減少である(図2)。そこで、D値を求めてみると、Guyomardらは31kGy、細渕らは80～100kGyの値を報告している。また、γ線の替わりに電子線を照射してもエンドトキシンの不活化は少ない。このように、乾燥したエンドトキシンを放射線照射で不活化することは難し。図2　凍結乾燥したエンドトキシンのγ線による不活化（原論文2より引用）コメント　　　　：　微生物を殺滅する方法として放射線照射は有効な方法である。しかし、エンドトキシンのように物質を分解するには、既存の不活化方法では難しい面がある。放射線照射の場合、放射線の間接作用の影響によって水系のエンドトキシンを不活化することが可能であるが、乾燥系ではエンドトキシンの不活化が困難である。この解決方法としては、放射線と他の不活化方法との併用が考えられる。将来、併用による有効なエンドトキシンの不活化方法が開発されるものと考えられる。原論文１ Data source 1： EFFECTS OF IONIZING RADIATIONS ON BACTERIAL ENDOTOXINS:COMPARISON BETWEEN GAMMA RADIATIONS AND ACCELERATED ELECTRONS Guyomard S.,Goury V., Darbord J.C. Pharmacie Centrale des Hopitaux de Paris, Laboratory Quality Control 7 rue de Fer a Moulin, F-75221 PARIS CEDEX 05 Radiat. Phys. Chem., Vol.31, p.679 (1988) 原論文２ Data source 2：ディスポーザブル医療用具の無菌性と非発熱性の確保に関する研究　－Co60-γ線によるエンドトキシンの不活化細渕和成、棚元憲一、配島由二東京都立産業技術研究所、世田谷区深沢2-11-1、国立医薬品食品衛生研究所、世田谷区上用賀1-18-1 平成7年度東京都立アイソトープ総合研究所年報、p.34 (1996) キーワード：エンドトキシン、放射線滅菌、γ線、電子線、パイロジェン、医療用具 endotoxin, radiation sterilization, gamma ray, electron beam, pyrogen, medical product 分類コード：010401, 010402, 010503
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