動物用飼料の放射線滅菌

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作成： 1997/10/25 宝月　大輔データ番号　　　：010094 動物用飼料の放射線滅菌目的　　　　　　：実験用動物飼料の放射線滅菌の利点放射線の種別　　：ガンマ線,電子放射線源　　　　：⁶⁰Co 線源、電子加速器(5MeV,40mA) 線量（率）　　　：10-60kGy 利用施設名　　　：住友重機工業(株)電子照射センターRDI社製ダイナミトロン型電子加速器照射条件　　　　：大気中応用分野　　　　：実験動物飼育、畜産概要　　　　　　：　実験動物用飼料について、放射線滅菌法と高圧蒸気滅菌法との比較を行った。高圧蒸気滅菌法は121℃、20分で完全滅菌されたが、ビタミンA、B1およびCが約50%破壊された。放射線滅菌法では、15kGy(電子線)および25kGy(ガンマ線)以上で芽胞菌を含めて滅菌することができた。放射線滅菌法は、ビタミンの安定性の点で高圧蒸気滅菌法より優れていた。詳細説明　　　　：　　トウモロコシ、こうりゃん、大豆油かす、ふすま、落花生油かす、魚粉、肉骨粉などを成分とする実験動物用飼料の滅菌方法としては、高圧蒸気滅菌法、EOG(エチレンオキサイドガス)法及び放射線滅菌法がある。そのうちEOG滅菌法は残留ガスの問題からほとんど使われていない。その設置の容易さから、高圧蒸気滅菌法が主流であるが、固型飼料が硬化する、いくつかのビタミンが破壊されやすい、等の問題点がある。一方放射線滅菌法は優れた方法であることが証明され、現在SPF動物(特定の病原菌を持っていないことを検査済の動物)で30kGy、無菌動物では50kGyの照射が行われているが、普及率は低い現状にある。ここでは、放射線滅菌法の優れた点を証明した二つの論文を紹介する。　　ガンマ線照射滅菌の長所は、包装したまま連続処理でき、加熱による悪影響はなく、冷凍製品の処理も可能であり残留性もないことである。SPF用飼料は、Clostridiumu、Bacillus胞子等を考慮しても、25kGyのガンマ線照射で滅菌される。乾燥ウィルスの殺菌には30kGy以上の線量が必要である。ガンマ線照射した飼料の栄養成分についての知見は次のとおりである。①大豆、フィッシュミール、骨粉、肉粉を組成成分とするラット用飼料の蛋白質およびアミノ酸は70kGy照射でも大きな変化がない。また、55.8kGy照射後の消化率は高圧蒸気滅菌処理後のそれと差がない。②脂質は一般に安定で、100kGy照射でも安定である。とうもろこし油又はバターを20%含む飼料に50kGy照射しても、不飽和脂肪酸に変化は認められなかった。③飼料によっては、ビタミンA、B₁、B₆、等が壊れやすいが、飼料の種類や状態によってその程度は変化する。高圧蒸気滅菌処理に比べると、ビタミンB₁,B₆,B₁₂、葉酸などの破壊率は照射処理の方が大きい。④飼育テストの結果では、高圧蒸気滅菌法とガンマ線滅菌法との間に差異はなかった。60kGy照射処理した飼料で育てたラットの生育は、高圧蒸気滅菌処理した飼料を摂食させた場合より良かった。　　45kGy照射処理した飼料で2年間飼育した5000匹のラットの発育率、飼料効率、血液像、死亡率、臓器重量などに異常は認められなかった。処理に要する費用は、ガンマ線処理に比べて、電子加速器を使用しての滅菌処理がずっと少ない。マウス・ラット用飼料とウサギ・モルモット用飼料を対象として、電子線滅菌法と高圧蒸気滅菌法を比較した結果を以下に述べる。両飼料共に、15kGyの電子線照射あるいは121℃で20分処理で完全滅菌された、また粗蛋白質、粗脂肪、粗繊維、粗灰分、そして水分共に変化を生じなかった。　　マウス・ラット飼料においては、10kGy照射でのビタミンAの残存率は71.3%と低く、ビタミンEも破壊しやすかった。それ以外のビタミンは10-25kGyで20%以内の破損を示した。一方高圧蒸気滅菌法ではビタミンB₁の残存率が低く、67%であった。ウサギ・モルモット用飼料においては、10-25kGyの電子線照射でもビタミンはほぼ安定であり、特にビタミンCは安定であった。それに比べて高圧蒸気滅菌法では、ビタミンAが53.9%、ビタミンB₁が58.8%、ビタミンCが43.3%と残存率は低い結果であった。コメント　　　　：　上記のように、放射線滅菌処理、特に電子線滅菌処理は微生物学的、栄養学的に優れた方法である。種々の病原菌が社会的な問題となりつつある現在、処理コストを低減することでより普及するであろう。原論文１ Data source 1：放射線照射による飼料の殺菌川嶋　浩二農林水産省食品総合研究所食品照射,　第19巻, P.314 (1984) 原論文２ Data source 2：電子線による動物飼料の殺菌　木村　透日本農産工業(株) クリーンテクノロジー, 10, P.42 (1996) キーワード：ガンマ線照射、電子線照射、動物用飼料、殺菌、滅菌 gamma-irradiation, electron beam irradiation, animal feeds, pasteurization, sterilization 分類コード：010403
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