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作成: 1997/12/15 斎藤 恭一

データ番号   :010089
N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレートとメチルメタクリレートとのコポリマーを使う二酸化炭素センサー
目的      :放射線共重合によるガスセンサー材料の作成
放射線の種別  :ガンマ線
放射線源    :60Co線源
応用分野    :酸性ガスの検出、センサー

概要      :
 ガンマ線照射により、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEM)とメチルメタクリレート(MMA)とのコポリマーを異なる組成比で作成した。コポリマーへの二酸化炭素の収着をコポリマーでコーティングした4MHz の水晶発振子の周波数変化から測定した。二酸化炭素の収着を二重収着モデル(ヘンリー型およびラングミュア型)を使って解析した。

詳細説明    :
  
 最近、二酸化炭素、一酸化炭素、酸素などの環境中の気体を検出し、制御する要求が増えている。この研究は、二酸化炭素ガス(CO2)のセンサーとして、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEM)とメチルメタクリレート(MMA)とのコポリマーを用いる。これまでの研究で、DMAEMとMMAとのコポリマーが応答が速く、安定性が高いので、酢酸用センサー材料に適していることを示した。本研究では、さまざまな組成のDMAEMとMMAとのコポリマーを作成し、水晶振動子マイクロバランス法によって、そのCO2の収着および脱離性能を調べた。
  
 DMAEMとMMAの組成比を変えた混合モノマーのアセトン溶液をガラスアンプルに入れて真空にひいた。アンプルにガンマ線を照射してコポリマーを得た。共重合後、得られたコポリマーを水中で沈殿させた。精製操作後にコポリマーの元素分析を行った。その結果、DMAEMのモル分率は0.014〜0.553の範囲になった。アセトン(4 mL)に溶かしたコポリマー(20 mg)を4 MHzの水晶振動子に塗布し乾燥させた。
  
 コポリマーを塗布した水晶振動子を恒温槽中の測定セル内に設置し、そこへCO2を導入した。コポリマーへ収着したCO2量を水晶振動子の周波数変化から測定した。
 CO2の分圧を段階的に変えて(0〜1.0 atm)、DMAEM-MMAコポリマーへのCO2の収着量を調べた(図1)。


図1 The change of the amount of sorbed carbon dioxide with different carbon dioxide partial pressures: (a) 0, (b) 0.2, (c) 0.4, (d) 0.6, (e) 1.0 atm.(原論文1より引用)

 これより、CO2はコポリマーに均一に収着するのではなく、コポリマーフィルムの表面付近に収着することがわかる。DMAEMモノマー量に対するCO2の収着量のモル比とDMAEMモル分率との関係を図2に示す。DMAEMのモル分率が増すとCO2の収着量が減少し、MMAにはCO2は収着しない。


図2 The relationship between the number of carbon dioxide molecules sorbed on the DMAEM monomer unit and the mole fraction of DMAEM.(原論文1より引用)

DMAEMのモル分率が下がると、ジメチルアミノ基間の距離があき、有効な収着部位が増えるためと考えられる。
  
 コポリマーを塗布した水晶振動子を使って、CO2の分圧を0から1atmへ変えてCO2の収着量の時間変化を調べた。最終収着量の90%に到達するのに必要な時間を90%応答時間と定義した。DMAEMのモル分率の異なるコポリマーの90%応答時間を調べ、図3に示す。


図3 The relationship between 90% response time and the mole fraction of DMAEM.(原論文1より引用)

 モル分率0.1で90%応答時間は最小となった。コポリマーの収着等温線を測定した。これを二重(Henry型およびLangmuir型)収着モデルで説明することができた。Henry型収着の割合が増すと90%応答時間が長くなった。

コメント    :
 この研究で作成されたセンサーの応答時間が15秒であることの他のセンサーに対する優位性の記述がない。さらに、この時間を短縮するために必要なポリマーの構造への提案がない。放射線共重合で二酸化炭素センサーに用いるコポリマーを作成すると有利であることを明確にし、他のガスセンサーへの適用を拡げることが望まれる。

原論文1 Data source 1:
Carbon dioxide sensor using N,N-dimethylaminoethyl methacrylate and methyl methacrylate copolymer
Hirofumi Yokouchi, Masanobu Matsuguchi, Yoshihiko Sadaoka, Yoshiro Sakai
Department of Applied Chemistry, Faculty of Engineering, Ehime University
Sensors and Materials, 8, 69-78(1996)

キーワード:化学センサー、二酸化炭素、N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート、メチルメタクリレート、コポリマー、水晶振動子
chemical sensor, carbon dioxide, N,N-dimethylaminoethyl methacrylate, methylmethacrylate, coplymer, quartz oscillator
分類コード:010202, 010203

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