イオンビーム照射による有機多孔膜材料の創製

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作成： 1997/10/28 堀野　裕治データ番号　　　：010081 イオンビーム照射による有機多孔膜材料の創製目的　　　　　　：エネルギー範囲の高い領域の重イオンビーム照射による多孔膜などの有機機能性材料の創製。放射線の種別　　：重イオン放射線源　　　　：サイクロトロン等線量（率）　　　：200kGy 利用施設名　　　：日本原子力研究所高崎研究所TIARA、ドイツ重イオン研究所(GSI)UNILAC 照射条件　　　　：真空中、室温応用分野　　　　：多孔膜形成、温度応答性多孔膜、分離膜形成概要　　　　　　：　数MeVの重イオンビームを数十ミクロン程度の薄い有機材料に照射して、酸やアルカリによりエッチング処理を施すと損傷部分を中心に円柱状の孔が形成され、多孔膜を作製する。材料を選び、処理を施すことで温度によって孔径が変化するような機能を持った多孔化材料を作製することができる。詳細説明　　　　：　　薄いフィルムに高エネルギーの重イオンビームを照射すると、イオンが貫通した近傍は損傷を受け、酸やアルカリの溶液に浸漬すると貫通部分を中心に孔が開く。この現象を利用して多孔膜の作製が行われていて、すでに、医療分野やバイオサイエンスなどの分野で利用されている。図1　イオンビーム照射で作製した多孔膜の電子顕微鏡像(用いたイオンビーム：金イオン、11.4MeV)（原論文2より引用）　図1にCR-39(ポリジエチレングリコール・ビス・アリルカーボネート)に11.4MeVの金イオンビームを照射し、高濃度、高温のアルカリ水溶液に浸してエッチングして得た多孔膜のSEM像である。円筒状の孔が膜面に対してほぼ垂直に開けられている。他の放射線でも孔を形成することができるが、イオンビームを用いた場合、イオン種、エネルギー等を選択することで、孔の大きさ(数から数十ミクロン)や密度の制御を容易に行えるなどの利点がある。さらに、最近ではミクロンオーダーに集束したイオンビームを用いることにより、配列の制御が可能である。　　また、多孔膜に高分子ゲルの性能を付与することで、温度変化などの環境条件の変化に追随する機能性を付与することも可能になっている。例えば、CR-39のモノマーとアミノ酸含有モノマーを3:7の割合で共重合して作製した厚さ約100ミクロンの膜に、イオンビーム照射によって直径十数ミクロンの円柱状の孔を作製する。図2　温度の繰り返し変化とCR-39モノマー／アミノ酸モノマー(3:7)の共重合体多孔膜の孔径変化（原論文1より引用）　このようにして作製した多孔膜を水に浸して温度を変化させると孔の径が可逆的に変わる。図2に水温を0度と60度との間で繰り返し変化させたときの孔径の変化を示す。ここでは±2%程度のばらつきで孔径が14ミクロンと16ミクロンとの間で可逆的に変化しているのが分かる。これは共重合体膜の含水率が変化することにより、膨潤・収縮するためである。また逆に、イオンビーム照射により作製した多孔膜にアミノ酸含有モノマーを光や放射線の照射でグラフト重合することで、可逆的に高温で開いて低温で完全に閉じることができる多孔膜ができる。図3　温度の変化による孔の開き方：上-共重合体膜、下-グラフト重合体膜（原論文1より引用）　図3に共重合体膜とグラフト重合した膜の温度変化による孔の開き方を示す。共重合体の場合では温度に感応する部分が膜内均一に分散し、温度を上げることで膜全体が収縮し、孔径が小さくなる(図3上部)。一方、グラフト重合では孔の周辺にのみ温度に感応する高分子ゲル層が存在するため、この部分だけが収縮して孔径が拡大する(図3下部)。　　コメント　　　　：　イオンビームでは非常に制御性良く多孔膜を形成できるので、温度応答性多孔膜による微細な流量コントロールなど、これからの多くの応用が期待できる。原論文１ Data source 1：特集：イオンビームによる放射線高度利用研究、Ⅳ.研究利用の現状と今後の計画　(4)新有機機能材料大道　英樹日本原子力研究所高崎研究所原子力工業,　第40巻, 第2号 (1994), 35-38 原論文２ Data source 2：イオンビームを用いる放射線高度利用の研究計画から　7.有機機能材料創製の研究大道　英樹日本原子力研究所高崎研究所放射線と産業, No.54 (1992), 22-25 キーワード：イオンビーム照射、有機材料、機能性多孔膜、インテリジェント材料、高分子材料、照射効果、有機薄膜 ion beam irradiation, organic materials, functional multi-hole membrane, intelligent materials, high polymer materials, irradiation effect, organic thin films 分類コード：010107, 010201
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