放射線利用技術データベースのメインページへ

作成: 1997/10/15 須藤 高史

データ番号   :010075
プラスチック及びゴムの再利用
目的      :プラスチックとゴムの再利用
放射線の種別  :ガンマ線
放射線源    :60Co線源(400kCi)
線量(率)   :0-800kGy,0-500kGy
利用施設名   :東京工業大学原子炉工学研究所γ線施設、Beijing Radiation Application Centre
照射条件    :大気中
応用分野    :環境保全、物質リサイクル

概要      :
 都市ごみ中のプラスチックは種々の混合体で、熱利用、オイルや化学原料等への資源化が試みられている。ここではプラスチック原料化を検討した。再生プラスチックはその強度が低密度ポリエチレン程度であるが、架橋剤トリアリルシアヌラートと混合し、射出成形後γ線照射する事により機械強度を上げることができた。ブチルゴムをパイロットプラントで照射し再生した。再生ゴムは、生ゴムからの製品と同等であり、混合、押出しプロセスは生ゴム単体より改善された。

詳細説明    :

1.再生プラスチック
 産廃や都市ごみには各種のプラスチックが含まれ、日本では年間6百万tに達する。そのうち産廃の20%及び都市ごみの僅か5%のみが再生されている。プラスチックの再利用には1)プラスチック原料、2)オイルや化学原料、3)熱利用 の3種がある。3)は簡単であるが、物質リサイクルが環境保全にとって最善の方法である。しかしそのプロセスは複雑となる。通産省は今後20年間でプラスチック廃棄物の物質リサイクルを20%まで引き上げることを期待し、ECガイドラインには、包装用プラスチックを90%回収し、2002年までにその60%を物質リサイクルするとしている。船橋市の調査によれば、都市ごみ中のプラスチックはポリエチレン(PE)45%、ポリプロピレン(PP)10%、ポリスチレン(PS)15%、ポリ塩化ビニル(PVC)15%、熱硬化プラスチック10%の割合であった。
 
 また、再生プラスチックの引張強さ、弾性率は12と1100MPaと、低密度PE程度であり、プラスチック材として機械強度が小さいのが再利用での問題である。本研究では、ポリマー混合体、高密度PE50%、PP30%、汎用PS10%、耐衝撃性PS10%を架橋剤のトリアリルシアヌラート(TAC)と重量比2、10、20%で混合し、220゜Cで射出成形し、γ線照射を行った。図1、2にPEと混合ポリマーの曲げ強度及び曲げ弾性率の照射効果を示す。両者共に、照射により大きく改善されるのが分かる。曲げ強度は200-350kGyで非照射の1.3-1.4倍で、弾性率は350kGyで1200MPaまで達している。同様に、PPに関して架橋剤にアセチレンを使って照射した場合も約60kGyで機械強度の高い改善が見られた。


図1 Flexural strength and modulus of elasticity of PE as a function of dose.(原論文1より引用)



図2 Flexural strength and modulus of elasticity of the polymer blend as a function of dose.(原論文1より引用)


2.再生ゴム 
 ブチルゴムはその気密性、耐久性からタイヤチューブとして使用されており、大量に生産され、再生利用が望まれている。ロシアで、電子線照射による再生が研究され、実用化された。北京照射利用研究センターでは、γ線照射の研究を行い、パイロットプラント試験を行った。ブチルゴムの照射加硫について、粘度平均分子量、不飽和度、溶剤抽出への線量効果を調べた。粘度平均分子量は照射が進むにつれ減少し、不飽和度は100kGy以下では直線的に上昇し、100kGy以上ではほとんど変化しない。加硫ブチルゴムのアセトン抽出は照射量に無関係であるが、ベンゼン、クロロフォルムでは照射初期は緩やかに増加した後急激に上昇するが、その後はほぼ一定となる。再生ブチルゴムの機械的強度変化を図3に示す。


図3 The relationship among the mechanical properties and radiation dose. (原論文2より引用。 Reproduced from Radiat. Phys. Chem., Vol.42, Nos.1-3, pp.215-218 (1993), Fig.(p.), Binglin W., Ziyan X., Xingmiao Z., Shiming M., Yuxi Z., Daoming S., Study and Application of the Radiation Reclaiming Waste Butyl Rubber Products by γ-Rays; Copyright(1993), with permission from Elsevier Science.)

 可塑性は照射線量が大きくなるにつれ増大するが、引張り強度、伸び、柔軟性、弾性率は低下する。Co60照射施設で、再生プロセスの開発を行った。照射施設は1MCiのソースが可能であるが現状400kCiの装荷量である。照射量45-100kGy、照射均一度1.8以下で、可塑性0.2-0.4、引張強度7.5MPa以上、伸び400%以上、アセトン抽出6%以下が仕様である。本装置で400t以上の再生を行った。再生ゴムはある分量の生ブチルゴムと混合して、チューブ製造に使用される。また再生ゴム単独あるいはエチレンポリプレンポリマーと混ぜたものを耐水性ビル建材として使用した。再生ゴムの質は優秀で、安定していた。再生ゴムと生ゴムを混合した製品は、生ゴムからだけの製品と同じ性質であった。また上記混合再生ゴムは、混合、押し出しプロセスで生ゴムより改善され、加硫時間も短縮され、製品寿命も延びた。

コメント    :
 各種廃棄物の熱利用再生は比較的容易であるが、原材料への再生は複雑なプロセスとなり、費用的にも困難な場合が多い。放射線利用により、プロセス簡略化を図ることができれば、再利用の途は開ける。

原論文1 Data source 1:
Reforming of Waste Plastics by γ-Ray Irradiation
Fujii Y., Nomura M.
Research Labratory of Nuclear Reacror, Tokyo Institute of Technology
Bull. Res. Lab. Nucl. Reactor, Vol. 20 (1996)

原論文2 Data source 2:
Study and Application of the Radiation Reclaiming Waste Butyl Rubber Products by γ-Rays
Binglin W., Ziyan X., Xingmiao Z., Shiming M., Yuxi Z.*, Daoming S.*
Beijing Radiation Application Research Centre, China; * Beijing No.1 Rubber & Plastics Product Plant, China
Radiat. Phys. Chem., Vol.42, Nos.1-3, pp.215-218 (1993)

キーワード:再利用、プラスチック、ブチルゴム、γ線
recycle, plastics, butyl rubber, γ-Ray
分類コード:010506

放射線利用技術データベースのメインページへ