感染性廃棄物の放射線殺菌処理

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作成： 1996/09/02 細渕　和成データ番号　　　：010056 感染性廃棄物の放射線殺菌処理目的　　　　　　：放射線照射による感染性廃棄物の殺菌処理放射線の種別　　：ガンマ線放射線源　　　　：コバルト-60 線量（率）　　　：5-50kGy 利用施設名　　　：Nordion International Inc., Gammir Ⅱ　Cobalt of Caric Mediris Company, 照射条件　　　　：空気中、室温から60℃ 応用分野　　　　：廃棄物処理、微生物制御概要　　　　　　：　感染性廃棄物の無害化のために、放射線処理が可能か否かを、経済的な立場から検討を行った。この結果、放射線単独ならば15-25kGyの線量で、加熱併用ならば5kGyの線量で、感染性廃棄物の処理が可能であることを明らかにした。詳細説明　　　　：　 1.目的　感染性廃棄物とは、医療機関から医療行為にともなって発生する廃棄物のうち、人に感染症を生じさせるおそれのある病原微生物で汚染されていると思われる廃棄物をいう。この感染性廃棄物が適正に処理されなければ、これらの感染性廃棄物が医療従事者や地域社会の人々の感染源になりかねない。このため、わが国はじめ欧米諸国では医療機関に対して感染性廃棄物の適正処理化が法律的に課せられるようになってきた。感染性廃棄物の処理法としては焼却が多く採用されている。しかし、環境保全やリサイクルの面から考えると、必ずしも焼却法が良い処理法とは限らない。そこで、焼却法に替わる処理法として放射線処理法が利用できないか否かを検討した。 2.検討事項　検討事項としては、殺菌保証と殺菌線量の決定、照射施設の設立方法、分別や運搬の方法、埋立処分の問題、などとした。 3.殺菌保証と殺菌線量　殺菌線量は、感染性廃棄物に汚染している菌数と殺菌保証レベルによって決まる。感染性廃棄物の汚染菌数は10²から10⁸個と多かった。殺菌保証としては、対象が廃棄物であるため10^-²レベルが妥当と考える。これらの条件で、B.pumilusを指標として殺菌線量を求めてみると15-25kGyの線量が感染性廃棄物の処理に必要であることがわかった。しかし、このように殺菌線量が高いと、処理費用が高くつく。そこで、線量を低くする工夫としては加熱処理の併用が考えられる。60℃の加熱を併用した場合には、殺菌線量は5kGyと低く抑えることが可能となった。このことによって、3700 TBqのコバルト-60の照射装置を用いて、年間5000m³の感染性廃棄物の処理が可能となる。 4.照射施設の設立方法　処理費用に見合う感染性廃棄物の発生量を考慮して、小規模の照射施設の設立方法としては、1) いくつかの大病院が集まり、共同の照射施設を設立する、2) ある程度の人工集中都市に民間の委託照射施設を設立する、3) 行政が照射施設を設立する、の三通りの方法が考えられる。しかし、照射施設の建設には膨大な費用がかかるため、経済的に見合う創意工夫がさらに必要となる。 5.分別と運搬　分別では感染性と非感染性の廃棄物を明確に分け、感染性廃棄物のみを放射線処理する。ただし、焼却と違って、廃棄物の形状は放射線の処理前後で変化がないため、臓器や人の組織の放射線処理は不適当である。また、紙や綿製品などの可燃物は焼却した方が経済的である。このため、臓器、組織や可燃物は除き、プラスチックや金属性の感染性廃棄物を主に放射線処理する必要がある。 6.埋立処分　焼却の場合には、灰は埋立処分される。放射線処理した廃棄物は、原型を止めているため、何らかの工夫をすることによって、放射線処理した廃棄物を再資源化に利用することができる。この利用方法によっては、焼却法よりも大きなメリットを生む可能性がある。以上の検討によって、経済的な面から見ても、感染性廃棄物の処理に放射線照射が有効な手段と考えられた。なお、放射線処理による感染性廃棄物の処理の流れ図を図1に示す。図1　放射線処理による感染性廃棄物の処理法（原論文１の内容を参考にして作成）コメント　　　　：　現在、感染性廃棄物の感染性を除去する方法としては焼却法が利用されている。しかし、環境保全や資源の有効利用を考慮すると、焼却法に替わる処理法の開発が望まれている。この代替法の1つとして放射線処理法があげられるが、経済性の面を考えると導入の難しさがある。この経済性を解決するためには、照射施設の建設費やランニングコストの低減化、処理量の確保、一環した流れ作業のシステム化、廃棄物の再資源化方法の確立、などを図っていかなければならない。このような問題が解決してはじめて、感染性廃棄物の放射線処理法が実用化できるものと考える。原論文１ Data source 1： Cobalt 60 Irradiation System for Infectious Waste Treatment & Sewage Sludge Recycling : Canadian Experience, Wilson B.K., Swinwood J.F. Nordion International Inc., P.O.Box 13500, Kanata, Ontario, Canada, K2K 1X8, The 20th Japan Conference on Radiation and Radioisotopes, p197 (1991) 原論文２ Data source 2： The Economics of Biomedical Waste Irradiation : Key Issues Influencing Total Cost, Wilson B.K. Nordion International Inc., P.O.Box 13500, 447 March Road, Kanata, Ontario, Canada, Radiat. Phys. Chem., Vol.42, No.1-3.p447 (1993) 原論文３ Data source 3： Decontamination of Hospital Wastes by the Combined Action of Ionising Radiation and Heat the Thermorad Process, Icre P., Facorat C.*, de Rocquigny H., Darbord J.C.* Central Pharmacy of Hospital, F 75221 Paris cedex 05, France, *Cofrar, F78000 Versailles, France, Radiat. Phys. Chem., Vol.46, No.4-6.p1099 (1995) 参考資料１ Reference 1：感染性廃棄物の滅菌細渕　和成東京都立アイソトープ総合研究所、〒158　東京都世田谷区深沢2-11-1 医療廃棄物・誤刺による感染防止対策(小林寛伊、細渕和成),p35,廣川書店 (1992) キーワード：感染性廃棄物、医療廃棄物、殺菌、滅菌、放射線利用 infectious waste, medical waste, disinfection, sterilization, radiation process 分類コード：010402, 010506
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