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作成: 1997/03/21 佐々木 隆

データ番号   :010050
粘着剤用のウレタンアクリレート
目的      :放射線硬化型ウレタンアクリレートの粘着剤化
放射線の種別  :電子
放射線源    :低エネルギー電子加速器
線量(率)   :10-150kGy
照射条件    :窒素気流中
応用分野    :粘着剤

概要      :
 特定の化学構造を有する放射線硬化型ウレタンアクリレートを主原料として、、粘着剤化を検討した。ダイマー酸 (DUA) とジオールで合成されたポリエステル骨格を有するウレタンジアクリレートは脂環式モノマーを配合することで大きなピール強度を示す。ポリグリコール骨格でも、末端にヒドロアビエチルアルコールを付加させたウレタンアクリレートは、大きな水蒸気透過能を有する粘着剤になる。水溶性タッキファイヤを用いるとエマルション化された水系粘着剤が得られる。

詳細説明    :
 
1. 電子線硬化型ウレタンアクリレートの粘着性発現 
 ダイマー酸とジオールを出発原料として、ジイソシアネートで2-ヒドロキシエチルアクリレートを付加させたウレタンジアクリレートを合成した。250kV の低エネルギー電子加速器を用いて、50kGyで硬化させたポリマーの Tgは -55℃でありピール強度は 6g/25mmであった。構造の異なる反応性モノマーの添加効果を調べた結果、ラウリルアクリレートのような直鎖状モノマーは粘着性を発現しないが、イソボニルメタアクリレート(IBXMA) のような脂環式モノマーは 400g/25mm前後のピール強度を発現した。ポリIBXMAの Tgは18℃と高いがダイマー酸との混合物(IBXMA20mt%) の Tgは -52℃と予想以上に低く、このことも大きなピール強度を示した要因と推察する。またこの混合系において、ダイマー酸の分子量効果を検討した結果を表1に示す。

表1 Relationship between molecular weight and adhesive properties at 40℃, 1kg load.(原論文1より引用)
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Molecular weight of DUA      6,100    17,500    21,200    28,600
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 Dose (kGy)                  10        50       100       150
 Peel sterngth (g/25mm)*1      3        70       600       990
 Ball tack (No.)            < 2       < 2         3        11
 Holding power (hr)*2        >24       >24       >24       >24
 Gel fraction (%)            73        88        89        87
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*1 stainless steel(SUS 304)
*2 at 40 ℃, 1kg load
 ダイマー酸の分子量が増大すると、ピール強度は著しく大きな値を示す。またボールタックも増大して初期粘着性も発現することがわかる。一般的な粘着付与剤を用いることなく、バランスの良い粘着性能を与える組成物である。ウレタンアクリレートは出発原料が豊富なため、様々な機能を付与させることができる。ピール強度のみならず高い水蒸気透過性を示す放射線硬化型ウレタンアクリレートが合成された。
  
ポリエーテルジオールと所定のジイソシアネートの合成物に2-ヒドロキシエチルメタクリレートとn-プロパノールまたはヒドロアビエチルアルコールを化学量論的に付加させた放射線硬化型ウレタンアクリレートである。ポリグリコール成分に数平均分子量が2000であるDowfax63N10(Dow chenical Co.)を使用すると、粘着付与剤を用いなくとも、246N/m(Melinexに組成物を40g/m2塗布した試料)の大きなピール強度を示し、また水蒸気透過率は1075g/m2,24hと従来のアクリル系粘着剤に勝る値が得られている。更にポリグリコール成分を変化させて検討した結果、含水率が急激に増大する組成も見い出され、メディカル用途、例えはケガの治療用粘着テープとしての展開も期待される。
 
 ウレタンオリゴマーに各種粘着付与剤と自己乳化性モノマーを添加して、UV硬化後の粘着性を検討した。ピール強度は粘着付与剤に伴い増大するがこれは組成物のTgが上がった為である。そしてすでに報告されているように更にTgが上昇するとピーク強度は低下して、せん断力も小さくなる。非反応性粘着付与剤の希釈作用が表れることを示唆している。各種希釈モノマーの添加による粘着性発現効果を検討した。エトキシノニルフェノールアクリレートと 2(2-エトキシエトキシ)エチルアクリレートが有効であり、両者の混合比率依存性は前者が少なくなると、タックは増大するが、ピール強度は低下する傾向が認められる。また、水溶性粘着付与剤や光開始剤、さらにエトキシTMPTA を混合した組成は、無溶剤型放射線硬化粘着剤になり得るだけでなく、水系エマルション型粘着剤にも成り得る。但し、総合的な粘着性能は前者よりも劣っている。 
 
測定項目:180℃ピール強度、ボールタック、保持力、ガラス転移温度、水蒸気透過率(ASTM E96-92)、含水率、ローリングボールタック

コメント    :
 無溶剤型液状樹脂を放射線硬化させて粘着剤化する研究が進んでいる。粘着力と凝集力を両立させる設計手法として粘着付与剤を添加することも多い。本報告の主題は、特定の化学構造を有する放射線硬化型ウレタンアクリレートを用いると粘着付与剤を添加せずに、優れた粘着性が得られることにある。また安価な設計で済むUV硬化法で水系ウレタンアクリレートを粘着剤化するアプローチは新現な発想である。

原論文1 Data source 1:
Electron Beam Curing of Dimer Acid - based Urethane Acrylates for Pressune Sensitive Adhesines
Takashi Sasaki, Takasaki Radiation Chemistry Research Establishment, Japan Atomic Energy Research Institute, 1233 Watanuki-machi, Takasaki, Gunma, 370 - 12 Japan, Satoe Takeda, Katsutoshi Shirahashi, Research Laboratries, Sanwa Chemical Industries Co., Ltd., 15 Suzukawa, Isehara, Kanagawa, 259 - 11 Japan
JAERI-Conf 95-003, P.424

原論文2 Data source 2:
Radiation - cured polyurethane methacrylate pressure - sensitive adhesives .
C.W.G. Ansell and C.Butler
Smith & Nephe , YGroup Research Centre, York Science Park, Heslington, York, Y015DF, UK
POLYMER, V35, No.9, P2001(1994)

原論文3 Data source 3:
UV CURABLE MONOMERS AND OLIGOMERS IN PSA APPLICATIONS
Craig A. Glotfelter
Sartiner Cinoany, 502 Thomas Janes Way Exton, PA 19341


キーワード:放射線硬化、感圧粘着材、ポリウレタンメタクリレート、ダイマー酸、水系UV硬化感圧粘着剤、水溶性粘着付与剤
radiation curing, pressure sensitive adhesives, polyurethane (meth) acrylate, dimer acids, water-based UV curable PSA, aqueous tackifiers
分類コード:010303

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