ノンハロゲン電子線用コンパウンド

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作成： 1997/03/01 藤村　俊一データ番号　　　：010033 ノンハロゲン電子線用コンパウンド目的　　　　　　：ノンハロゲン架橋用コンパウンドのケーブルへの適用放射線の種別　　：電子放射線源　　　　：電子加速器線量（率）　　　：33-300kGy 利用施設名　　　：Beta-Gamma-Services社(ドイツ) 照射条件　　　　：空気中、室温応用分野　　　　：光ファイバケーブル、工場内配線、フレキシブルコード概要　　　　　　：　難燃性のゴム、プラスチックは、燃焼時に発生するガスの有害性を低下させるめにハロゲンを含まないことが要求される傾向にある。ダイトロン(AES社の商品名)は、ケーブル被覆を目的とする架橋、非架橋いずれの使用も可能なノンハロゲン材料である。ホットセット規格に合格させるためにも少量の電子線照射で十分な性能を発揮する。家電製品等への広範囲な適用が期待される。詳細説明　　　　：　　ゴム、プラスチックを難燃化する方法は、通常、塩素、臭素等の化合物であるハロゲン系難燃材を添加している。これは燃焼時に発生するハロゲンガスが高い難燃性を付与するので、ポリマーへの添加が少量ですみ、ポリマーの特性に殆ど影響を与えない利点がある。一方、ハロゲン系難燃材を使用しないで同等の難燃性を得るためには、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の水酸化物を大量に添加する必要があり、ポリマーの特性が低下する問題があった。　　　AES社(エーイーエス・ジャパン㈱)は、熱可塑性エラストマー(サントプレーンTM)にデカブロ系難燃材を添加したケーブル被覆材料を販売している。しかし、デカブロ系難燃材は燃焼時に有害物質を放出する可能性があるため、欧州では製品への使用を中止する傾向にある。そこで、新たに水酸化アルミニウムを難燃材に使用し、ポリマー成分にゴムの微粒子を添加して機械的、電気的特性を改善させたハロゲンフリーを開発した。欧州では、ハロゲン系難燃材を含まない難燃性の材料をハロゲンフリーと総称している。日本では、非ハロゲン、ノンハロゲン等と略称されることが多い。　　　AES社のハロゲンフリーは、商品名がダイトロン(Dytron)XL7300シリーズとなっており、報告では電子線やシラングラフトによって架橋して使用する品種と、そのまま使用する品種の紹介がある。表1は、一般ハロゲンフリー品との比較をしたもので、ゴム弾性や耐油性に優れた特長を持っている。表1　XL 7300グレードの性状（原論文1より引用） HFFR-TPE (XL 7300) 一般 HFFR-EVA 弾性　　　　　　　低温時弾性　　　　引張り強さ　　　　吸水性　　　　　　耐油性、ASTM 2　　熱圧ケーブルテスト酸素指数(LOI)　　電子線架橋　　　　シラン・グラフト重合プロセス・コントロールゴムに類似　　　優秀 80～110kgf/cm² 良好良好　　　　　　 80～120℃ 　　　 36 可能　　良好プラスチックに類似普通 90～140kg/cm² 中程度普通 80～90℃ 30～45 可能普通　ケーブル被覆材料は使用方法によって絶縁材とシースに分かれる。絶縁材は銅導体上に押出されるので、電気特性、耐熱性が重要である。シースは最外層に位置するので、難燃性、耐油性、耐熱性が重要である。耐熱性を改良するために、過酸化物を添加して高温高圧条件で処理する化学架橋法、常温常圧で電子線照射を行う電子線架橋法、予めシラン系化合物を添加してポリマーにグラフト反応をさせておき高温高湿条件で処理するシラン架橋法などが行われる。ダイトロンはこのうち電子線架橋とシラン架橋に適した材料である。ハロゲンフリーは大量の金属水酸化物を添加しているので、ポリマー間の三次元架橋構造を形成させるのが困難であったが、これを解決している。　　　ケーブルの規格に耐熱性を評価するホットセット試験がある。これは、電線が高温に曝されても短絡事故を起こさないことを確認するためのもので、200℃で絶縁材料が大幅な変形を起こさないことが必要である。絶縁材料の製造は通常200℃前後の温度で溶融成形しているので、架橋処理を行わないとこの試験に合格することはできない。図1に示すように、ダイトロンは電子線を 33kGy以上照射すれば合格する。図1　XL 7300のホットセットテストと電子線照射の関係（原論文1より引用）　ダイトロンの用途としては、光ファイバケーブルや安全性の要求の高い工場内配線やフレキシブルコード、 OA機器、電話線コード等に適している。コメント　　　　：　欧州では、ビル、地下鉄、戦艦等の密閉空間での火災によって多数の人命を失った経験からケーブルの難燃化、ノンハロゲン化が進んでいる。日本では、世田谷電話局火災がその契機となった。ノンハロゲンは、特性を維持するための特殊な処理が必要となるのでハロゲン系難燃材料より高価格であり、汎用品として使用されていない。しかし最近、廃棄物の焼却時にハロゲン系難燃材料から有害ガスが発生するとの報告が注目され、デカブロ系難燃材の使用が縮小されており、ノンハロゲンの使用が拡大する傾向にある。　電子線照射はケーブル被覆材料の架橋手段として古くから使用されているが、機器内配線などの細線ケーブルが中心で、ダイトロンもこれらの用途を狙いにしている。ダイトロンは低照射量で良好な特性を示しているが、欧米の規格に対応しているので、日本のJIS規格から判断すると引張り特性が問題となる。なお、国内でも同等の材料が販売されている。原論文１ Data source 1：難燃性TPE　－ダイトロンXL7300シリーズ－家森　明夫エーイーエス・ジャパン㈱工業材料　1995年2月号 ( Vol.43 No.2 ) p41 参考資料１ Reference 1：防火性高分子材料の課題ーノンハロゲン高難燃材料への期待小田　英輔 (社)電線総合技術センター新素材　1996年8月 ( Vol.7 No.3 ) p34 キーワード：難燃性、TPE 、ハロゲンフリー、電子線照射、シラングラフト、ケーブル、光ファイバ、押出機、 flame retardant, thermo plastic elasotmer, halogen free, electron beam irradiation, silane-grafted, cable, optical fiber, extruder 分類コード：010105,040102,010101
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	HFFR-TPE (XL 7300)	一般 HFFR-EVA
弾性　　　　　　　低温時弾性　　　　引張り強さ　　　　吸水性　　　　　　耐油性、ASTM 2　　熱圧ケーブルテスト酸素指数(LOI)　　電子線架橋　　　　シラン・グラフト重合プロセス・コントロール	ゴムに類似　　　優秀 80～110kgf/cm² 良好良好　　　　　　 80～120℃ 　　　 36 可能　　良好	プラスチックに類似普通 90～140kg/cm² 中程度普通 80～90℃ 30～45 可能普通