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作成: 2000/03/10 木村 浩彦

データ番号   :030174
MRIによる脳腫瘍の診断
目的      :脳腫瘍の診断におけるMRIの果たす役割を代表的脳腫瘍のMR像をあげて紹介
応用分野    :医学、診断

概要      :
 脳腫瘍診断におけるMRIの果たす役割は極めて大きい。MRIは優れたコントラストを有し任意の断面で病変部を描出することができる。脳腫瘍のMRI診断は、これらの特性を十分に利用することが不可欠となる。

詳細説明    :
 脳腫瘍は、患者の年齢により発生頻度が大きくことなる。成人発症の脳腫瘍としては、Glioma, Meningioma、Metastasis, Pituitary adenoma, Neurinoma などが頻度の高い腫瘍としてあげられる。一方、小児期の脳腫瘍としては、小脳テント下に発生するものが多く、Astrocytoma、Meduloblastoma、Ependymoma などが比較的頻度の高いものとして、あげられる。 以下に、これらのうちの代表的な腫瘍のMRIを示す。
1)神経膠芽腫は、大人の頭蓋内、特にテント上の腫瘍としては、もっとも頻度の高いものであり、その成長進展様式や顕微鏡所見の多彩さより、多形性という言葉をつける場合がある。病理学的には、壊死が特徴であり、不均一な腫瘤を形成し、中心壊死を伴うことが多く、血管に富み、ときに出血がみられる。代表的なMRIを示す。


図1 神経膠芽腫のMRI a)T1強調画像 b)T2強調画像 c)造影後T1強調画像

 MRI所見も、神経膠芽腫の病理を反映して、MRI上も不均一な性状を示している。T2強調画像では、左側頭葉から頭頂葉にかけて、側脳室を圧排する不均一な腫瘤を認める。T1強調画像では、一部に高信号を持つ部分があり、出血を伴っていると考えられる。造影後T1強調画像では、強い増強効果をしめす不均一な輪郭をもち、中心部は壊死のため染まりを認めず嚢胞性変化を生じている。
2)髄膜腫は、大人の頭蓋内、脳実質外腫瘍の最も頻度の高い良性腫瘍であり、中高年の女性に比較的多く発症する。髄膜内のアラクノイド絨毛の由来であり、発生部位は、傍大脳鎌、頭頂窩、頭蓋底部、後頭蓋窩 などに多く発生する。良性の経過を取るものが多く、偶然見つかるものと、脳神経の付近に発生し、視神経や聴神経症状で発見されるものもある。頭蓋底部に発生した、症例を示す。


図2 髄膜腫のMRI a)T1強調画像 b)造影後T1強調画像(矢状断) c)造影後T1強調画像(軸位断) d)T2強調画像(冠状断)

 鞍内から鞍上部前方にかけて、均一に造影される腫瘤を認める。MRI T1強調画像では、脳実質と等信号で、T2強調画像では、比較的高信号を示している。造影後T1強調画像(矢状断)では、腫瘤の前縁より前頭蓋底の硬膜が染まっている。また腫瘍と下垂体茎の間に視神経交差が描出されている。
3)髄芽腫は、小児の後頭蓋窩腫瘍としては、比較的頻度が高く、最も悪性度の高い腫瘍である。第4脳室由来の腫瘍として発見されることが多い。第4脳室を閉塞し、水頭症が見られることも多い。本腫瘍は、しばしば髄液内に播種することが知られている。嘔気、嘔吐にて発症した15歳の症例のMRIを示す。


図3 髄芽腫のMRI a)T1強調画像 b)T2強調画像 c)造影後T1強調画像

 T1強調画像(矢状断)では、第四脳室の下半を占拠する低信号の腫瘤を認め、第四脳室の天井である下髄汎に大きく接している。T2強調画像(軸位断)では、灰白質よりもやや高信号域を示している。周囲の浮腫性変化は少ないが、腫瘍による第四脳室の閉塞のため水頭症を認める。造影後T1強調画像にて、腫瘤は高信号に染まる部分と染まらない部分の混在を認める。
 腫瘍のT1強調画像、T2強調画像の信号強度自身は、それぞれの腫瘍に特異的なものでは無いことが多いが、撮像の断面を任意に得ることにより、周囲の構造の変化や、腫瘍との関係を詳細に描出することが可能となる。このことが、腫瘍の診断の手がかりとなる。

コメント    :
 腫瘍のT1強調画像、T2強調画像の信号強度自身は、それぞれの腫瘍に特異的なものでは無いことが多いが、撮像の断面を任意に得ることにより、周囲の構造の変化や、腫瘍との関係を詳細に描出することが可能となる。このことが、腫瘍の診断の手がかりとなる。

原論文1 Data source 1:
Brain Disoerders
Wolfgnag Dahnert
Department of Radiolgy, Good Samartin Regional Medical Center
Radiology Review Manual(2nd edition), pp.162-212

原論文2 Data source 2:
脳・脊髄
宮坂 和男
北海道大学放射線医学講座
フイルムリーディング「1」pp.72-73, pp.92-93

原論文3 Data source 3:
Brain tumors and tumor like process
Annw G. Osborn
Department of Radiology, University of Utah School of Medicine
Diagnostic Neuroradiology, pp.402-670

キーワード:磁気共鳴画像, MRI, 脳腫瘍, brain tumor, 造影磁気共鳴画像, Enhanced MRI、MRI診断、画像診断
分類コード:030106

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