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作成： 2000/03/22 遠藤 啓吾
データ番号 ：030126
核医学による乳癌のセンチネルリンパ節検出
目的 ：乳癌におけるセンチネルリンパ節の核医学的検出法を紹介する。
放射線の種別 ：ガンマ線
利用施設名 ：核医学診療施設
応用分野 ：医学
概要 ：
癌の外科治療の進歩により癌患者の半数以上が救命されるようになり、患者のQOLが重要になってきた。99mTc製剤を用いた核医学検査と病理検査を組み合わせて、癌のリンパ節転移の有無を知ることができるようになり、これまでの手術に比べて、患者への侵襲の少ない手術が注目されている。患者にやさしい、縮小手術が主流になりつつある。
詳細説明 ：
癌は局所のみならず、遠隔部位に転移する。この転移の有無、癌の広がりの診断は、患者の予後に大きく影響する。最も多く転移するのはリンパ節で、リンパ節への転移の診断は、極めて重要である。
一方、乳癌では乳房温存術と呼ばれる、縮小手術が主流となってきた。しかし腋窩リンパ節に転移しているかどうか、手術前に正確に診断する方法がない。腋窩リンパ節への転移があればもちろん、腋窩リンパ節の廓清が行われるが、たとえ転移がなさそうでも念のため腋窩リンパ節の廓清を行うことが多い。しかし手術後、リンパ流のうっ滞のため腕の浮腫や異和感に悩む患者も少なくない1)。
癌のリンパ節への転移は、癌組織からのリンパの流れに沿っておこる。最初のリンパ節をセンチネルリンパ節(あるいは見張りリンパ節)(図1)という。そこで99mTc製剤を乳癌の部位に注射し、その後の99mTc製剤分布からセンチネルリンパ節を知ると、リンパ節への転移の有無を正確に診断できることが明らかとなり注目を集めている。これまでの核医学検査が、99mTc製剤を静注するのとは異なり微量の99mTc製剤を癌の周囲に局注すること、その99mTc製剤分布をガンマカメラで画像化するか(図2)、あるいはガンマプローブ(図3)と呼ばれる方法で、手術室で99mTc製剤量を測定する。
図1 センチネルリンパ節とは?
図2 センチネルリンパ節シンチグラフィ（原論文5より引用）
図3 ガンマプローブ：ガンマ線検出システム
99mTc製剤を用いて癌からのリンパ流に沿ったセンチネルリンパ節を特定。センチネルリンパ節を摘出する。病理学的にセンチネルリンパ節への転移がなければ、その先の腋窩リンパ節への転移がないとして、無駄な腋窩リンパ節への廓清を無くしようとするものである。
センチネルリンパ節の検出方法としては、RIを用いる方法とRIの代わりに色素を用いる方法が知られている。ふたつを比較した研究によれば、RIを用いる方法が検出率が高く優れているため、欧米で急速に普及してきた2)。
RIを用いるセンチネルリンパ節の核医学的検出法は、これまでの核医学診断法といくつかの点で異なる。微量の99mTc製剤を局注し、手術室にてガンマプローブという検出器を用いてリンパ節転移を見付ける。そこで日本核医学会ではワーキンググループ(WG)を作り、「センチネルリンパ節の核医学的検出法ガイドライン」を作成した3,4)。使用する99mTc製剤の量はこれまでの核医学検査より少ないので、患者、病院職員、一般公衆には安全な核医学検査法である。本法は核医学にとっても今後が期待される重要な分野だと考えられる。
コメント ：
乳癌のみならず、胃癌、悪性黒色腫の治療にも本法は利用されつつある。これまでの核医学診断とはまったく異なったRI利用法であるが、今後の普及が期待される。
原論文１ Data source 1：
原論文1. Sentinel Node Conceptは癌の外科治療を変えられるか
ーその理論と歴史的背景
原論文２ Data source 2：
Sentinel-node biopsy to avoid axillary dissection in breast cancer with clinically negative lymph-nodes.
Veronesi U, Paganelli G, Galimberti V, Viale G, Zurrida ST, Bodeni N, et al.Lancet 349:1864-1867, 1997.
原論文３ Data source 3：
センチネルリンパ節の核医学的検出法ガイドライン
遠藤 啓吾
群馬大学医学部核医学科
核医学 36(9):1033-1034, 1999.
原論文４ Data source 4：
センチネルリンパ節の核医学的検出法ガイドライン
ーガイドライン作成の背景ー
遠藤 啓吾
群馬大学医学部核医学科
Isotope News (3) 7-9, 2000.
原論文５ Data source 5：
図１ センチネルリンパ節シンチグラフィ
長谷川
大阪府立成人病センター
核医学症例検討会症例集 第21巻４号（1999.8）
キーワード：リンパ節転移、乳癌、乳房温存術、ガンマプローブ、99mTc、センチネルリンパ節、ガイドライン
分類コード：
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