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作成: 1999/09/27 林 徹

データ番号   :020191
士幌馬鈴薯照射施設の概要
目的      :発芽抑制のために商業規模で馬鈴薯を照射する施設
放射線の種別  :ガンマ線
放射線源    :60Co線源(300,000Ci)
線量(率)   :60-150Gy
利用施設名   :士幌馬鈴薯照射施設
照射条件    :常温、空気中
応用分野    :食品照射、食品産業、農業

概要      :
馬鈴薯の照射は1972年に許可され、1973年に士幌町農業協同組合に馬鈴薯照射施設が建設され、1974年1月より稼働を開始した。この施設は300,000Ciの60Coを積載する場合に、1時間に約15トン、1日に約350トンの馬鈴薯を照射し、1年に3ヶ月稼働するとして毎年30,000トンの馬鈴薯を照射するように設計されている。

詳細説明    :
 
 わが国では発芽抑制を目的とした馬鈴薯のガンマ線照射が1972年に許可され、1973年に北海道士幌町に馬鈴薯照射プラントが総工費3億8,935円をかけて建設された。そのうち、2億2,992万円は農林省、2,314万円は北海道の補助金が交付された。線源として30,000Ciの60Coを装備した場合、1日に約350トン、1ヶ月に10,000トンの馬鈴薯を処理し、1年に3ヶ月稼働すると仮定して毎年30,000トンの馬鈴薯を照射するように設計されている。なお、馬鈴薯照射プラントには最大1,000,000Ciまで60Coを増やすことが可能な構造になっている。照射プラントの平面図は図1のようになる。
 


図1 馬鈴薯照射プラント平面図

 
 遮蔽用のコンクリート壁を斜線で表してあり、照射室はコンクリート壁の迷路の中にある。照射室の真ん中に円筒状線源(A)があり、円筒状の枠にステンレス製のカプセルに入った60Co線源が収納されている。円筒状線源(A)はプール(B)の中に格納されており、照射する時だけプール(B)の水面上に出てきて、円形の照射コンベア(D)で搬送されるコンテナに入った馬鈴薯を照射する。コンテナは100x160x130cmの金網製であり、1つのコンテナに1.5トンの馬鈴薯が入る。なお、照射の様子はのぞき窓(C)及び照射室に設置されたテレビカメラ通して操作室から見ることができる。照射室内の様子を図2に示す。


図2 馬鈴薯照射プラント内部

 
 コンテナは搬入コンベア(E)により照射室内に搬入されて照射コンベア(D)に載せられて約1時間をかけて照射室を一周する。一周したコンテナは一度照射室外に搬出されて転移コンベア(F)で反転テーブル(G)に載せられて反転し、再び照射室内に搬入されて照射コンベア(D)に載せられて約1時間をかけて照射室を一周する。このようにしてコンテナの両面にガンマ線が照射され、搬出コンベア(H)により搬出されて低温倉庫に移送される。
 
 馬鈴薯1.5トン入りのコンテナ19個を約2時間かけて照射することができ、1日に24時間稼働すると1日に約350トンの馬鈴薯を処理することができる。コンテナが反転するので、コンテナの外側では線量が高く、コンテナの中心部では線量が低くなり、最高線量が150Gy、最低線量が60Gyになるように設計されている。

コメント    :
 わが国唯一の食品の照射施設である。

原論文1 Data source 1:


原論文2 Data source 2:


原論文3 Data source 3:


キーワード:馬鈴薯、照射、照射施設、ガンマ線、士幌、北海道、発芽抑制
potato, irradiation, irradiation plant, gamma-ray, Shihoro, Hokkaidoh, sprout inhibition
分類コード:020408

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