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作成: 1999/03/01 海老原 健一
データ番号 :190020
格子ガス気液モデルを用いた相分離の研究
目的 :格子ガス気液モデルを用いた気液2相流現象の解析
研究実施機関名 :日本原子力研究所計算科学技術推進センター数値実験技術開発グループ
応用分野 :気液2相流シミュレーション
概要 :
格子ガス FHP モデルに長距離相互作用を付加し構築された気液モデルによって、一成分粒子系における相分離現象をシミュレーションすることができる。今回は、5つの長距離相互作用を含む気液モデルを用い、流れ場中で相分離のシミュレーションを行った。また、局所的粒子密度を用いて、低密度相中に生成される円形高密度相の表面を決定し、その表面の厚さと長距離相互作用との関係を表面張力の視点から調べた。
詳細説明 :
三角格子を用いた格子ガス(FHPモデル)は、連続極限において、低速度、非圧縮のNavier-Stokes方程式を表すことから、粒子的方法で流体を表すモデルとして注目されている。格子ガスでは、各時刻において、粒子を伝播、衝突させることにより系の時間発展を表すため、多相流などの複雑流体や多孔質中の流れのような複雑な境界条件を持つ環境中の流れを比較的容易にシミュレーションすることができる。
格子ガス気液モデルは、Appert等によって提案されたモデルであり、格子ガスFHPモデルに長距離相互作用を付加することによって構築される。 このモデルは、 van der Waals の気液理論の状態方程式に類似の状態方程式を持ち、一成分粒子系における相分離現象をシミュレーションすることができる。本研究では、図1(a)に示す5つの長距離相互作用を付加したモデルを用いた。このモデルの状態方程式の曲線と、シミュレーションによって得られた圧力の値を図2に示す。

図1 (a) Long-Range Interactions: The solid arrow means the site occupied by the particle and the dash arrow means the hole site. The interaction length is denoted by r. (b) Phase Diagram: The solid lines represent theoretical curves for r=9 and r=rc and two dash lines represent dc and pc respectively. The simulation results for the 256x256 system are plotted with error bars.
この相図から分かるように、この気液モデルは、換算粒子密度(系の粒子密度を1格子点の最大粒子数で割った値) d 、長距離相互作用の距離 r 、系の圧力 p について臨界点(dc,rc, pc)を持ち、相図で傾きが負となる領域では、系が不安定となり相分離を起こす。特に不安定領域中にあり、臨界換算密度以下の粒子密度を持つ系では、低密度相中に円形の高密度相が生成される。そこで、この状態において流れ場中での相分離のシミュレーションを行った。系として、換算密度を0.06、長距離相互作用を9とした200x200の格子を用いた。また流れ場として、上下に平行の壁を設定し、ある割合で下の壁で粒子に右方向の運動量を与える Couette 流を用いた。図 2に粒子密度分布と流速ベクトル分布の変化の様子を示す。

図2 Particle density distribution and velocity vector field in the Couette flow: The simulation is carried out in the 200x200 system with d=0.06 and r=9. The particles in the system are given momentum on the lower wall of the two horizontal parallel walls.(原論文1より引用)
低密度相中に生成される円形高密度相の表面は、local-region clustering 法によって決定することができる。local-region clustering 法は、ある格子点を中心とし、長距離相互作用の距離を半径とする円に内接する六角形内の粒子密度(局所粒子密度)を計算し、その大小によって、六角形が内接する円の中心である格子点を高密度相または低密度相に分類する方法である。分類するための基準となるしきい値は、平衡状態における高密度相の換算密度dL及び低密度相の換算密度dGを用いて(dL+dG)/2となる値を用いる。このように決定された表面の位置は、Gibbs のdividing surfaceの位置となる。
この方法の特徴は、長距離相互作用の距離のみに依存する平衡状態での高密度相と低密度相の換算密度及び局所的な領域で計算した換算密度によって表面の位置を決定できることである。つまり、あらかじめ計算されたしきい値を用いた local-region clustering 法によって、系の時間発展に従って表面の位置を決定することができる。
さらに、Laplaceの式を用いて円形高密度相表面の表面張力の計算を行った。このとき、円形高密度相の半径は、local-region clustering 法によって決定された表面に、数学的な円を当てはめることによって計算した。また内部領域と外部領域において、粒子密度分布と平均自由行程分布が一定であるとした基準から、正味の内部領域及び正味の外部領域を決定し、それぞれの領域で圧力(pin, pout)を計算した。決定された正味の内部領域及び外部領域は、local-region clustering 法によって決定された表面に当てはめた数学的円の円周の位置を中央として、それぞれ、2r内側の領域、2r外側の領域であった。つまり、表面の厚さを 4r としたことになる。これにより、図3に示すように、Laplaceの式から妥当な表面張力を得ることができた。

図3 Laplace's law for r=9, 11, 13 and 15: The slope for each r gives the surface tension. The radius of the circular dense phase is varied by changing the lattice size. (原論文2より引用。 Reprinted from Data source 2 below with permission from World Scientific Publishing Co. Pte Ltd)
コメント :
気液2相流の粒子法によるシミュレーションの可能性を持つ格子ガス気液モデルの基本的性質を調べた。特に相の変化に対して重要となる表面の性質について、いくつかの知見を得た。また、局所的な粒子密度の情報から表面の位置を同定できる local-region clustering 法によって、動的に表面を同定できる可能性を得た。
原論文1 Data source 1:
格子ガス気液モデルによる流れ場における相分離
海老原 健一、渡辺 正、蕪木 英雄
日本原子力研究所計算科学技術推進センター数値実験技術開発グループ、319-1195 那珂郡東海村白方白根2-4
第11回数値流体力学シンポジウム講演論文集(1997) pp. 239-240
原論文2 Data source 2:
SURFACE OF DENSE PHASE IN LATTICE-GAS FLUID WITH LONG-RANGE INTERACTION
Ken-ichi Ebihara, Tadashi Watanabe, Hideo Kaburaki
Center for Computational Science and Engineering, Japan Atomic Energy Research Institute, Tokai-mura, Ibaraki-ken, 319-1195, Japan
International Journal of Modern Physics C, Vol. 9, No. 8 (1998) pp. 1417-1427
参考資料1 Reference 1:
Lattice Gas with a Liquid-Gas Transition
C. Appert, S. Zaleski
Physical Review Letters Vol. 64, No.1 (1990) pp. 1-4
キーワード:格子ガス気液モデル、状態方程式、表面張力、local-region clustering 法
liquid-gas model of lattice gas, equation of state, surface tension, local-region clustering method
分類コード:190201
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