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作成: 1998/03/17 下村 理、福島 整

データ番号   :180027
粉末X線回折用X線CCDカメラ
目的      :準実時間での粉末X線回折パターンの観察
研究実施機関名 :科学技術庁無機材質研究所超微細構造解析ステーション(日本原子力研究所関西研究所で実施)
応用分野    :構造解析、X線計測、放射光利用技術

概要      :
 ほぼリアルタイムに近い条件で粉末X線回折パターンの変化を観察する場合の高感度かつ実用的なデバイスとしてのX線CCDカメラについて、イメージングプレート(IP)との比較比較検討を行った。補正ソフトの進展があれば、X線CCDカメラは大変強力な検出系となることが期待できる。
 

詳細説明    :
 試料からのX線回折パターンはイメージングプレート(IP)を用いることにより、二次元データ として得ることが出来る。IPは従来の写真法に比べると桁違いに感度がよく、また、ノイズレベルが低いので、非常に良質のデータ を得ることが出来る。ただし、IPは信号を一定時間蓄積する型の検出器であるので、露光してから最終データになるまで時間がかかる。これは高圧下での圧力ジャンプや温度ジャンプによる構造変化をX線を用いて時分割的に測定する目的には不向きである。また、例えば相転移の境界を決めるための実験などでは、温度変化にX線測定が迅速にフォローする必要がある。この目的のためにはX線CCDカメラが最も適しいると考えられる。
 
 今回、設置したCCDカメラはイメージインテンシファイヤ型のものである。X線入射部は6インチのベリリウム窓で出来ており、回折X線はベリリウム窓の裏に塗布された光電子材料に当たって電子を放出し、イメージインテンシファイヤの中で加速されて蛍光体に当たり蛍光を発する。蛍光体部のイメージはレンズ系で縮小され電子冷却型CCDカメラに取り込まれる。このX線CCDカメラのダイナミックレンジは約5桁、位置分解能は中心付近で約280μmである。リフレッシュレートは最小30分の1秒である。IPは大きさが通常20×25cm、位置分解能は180μmなので、分解能の観点からはIPの方が優れているが、ダイナミックレンジではほぼ同等である。


図1 X線CCDカメラの外観。中央凸部は6インチのBe窓。



図2 X線CCDカメラの構成概念図

 CeO2を標準試料としてX線CCDカメラとIPの比較をしたところ、位置分解能は予想通り数倍悪かったが、感度に関してはバックグラウンドのレベルから判断して10倍程度X線CCDカメラの方が高いことがわかった。シグナルとバックグラウンドの比はほぼ同じであった。また、1分以下の露出時間でも充分に解析できるデータが得られた。このデータから、X線CCDカメラはDAC中の試料からの回折を迅速に測定するのに適していることが確かめられた。


図3 X線CCDカメラの位置分解能(左)とダイナミックレンジ(右)

 X線CCDカメラの問題点は感度の均一性と像歪みであり、これを補正しないと、正確な回折パターンは得られない。Feのアイソトープ線源を用いて測定した強度分布の位置依存性を検討したところ、中心付近と周辺では40%もの感度差が検出された。これはX線が発光点から放射状に出ているのに対し、Be窓が逆方向に凸になっているために斜め入射現象が顕著に起きるためである。これに対しては、ESRF(ヨーロッパ放射光施設)で開発された補正プログラム等の導入が可能であるが、さらなる進展も期待できる。
 

コメント    :
 CCDカメラではイメージングプレートより一桁以上高速にとれることが認められ、最短10秒でも意味のあるデータがとれることがわかった事は、準実時間測定から実時間測定への途を拓く礎となる。また、このシステムは高エ研に設置されたが、研究が終了した平成11年度からは共同利用のための実験装置としても利用されている。多数の、かつ、技術水準の様々な共同利用研究者に開放しても技術的な問題は全く起きておらず、本研究で開発したシステムの完成度の高さを物語っているといえる。また、このシステムについて諸外国からの問い合わせも多くあり、この分野での世界的な技術交流に貢献している。
 

原論文1 Data source 1:
「放射光を用いた低温高圧下での構造変化に関する研究」
下村 理*1)、福島 整*2)
*1)日本原子力研究所関西研究所 〒679-5198 兵庫県佐用郡三日月町光都1-1-1
*2)科学技術庁無機材質研究所  〒305-0044 茨城県つくば市並木1-1
原子力工業 42巻 11号 69-71 (1996)

キーワード:二次元検出器、X線CCDカメラ、準実時間検出、X線回折、放射光
2-dimentional detector,X-ray CCD camera,semi-realtime detection, X-ray diffraction、synchrotron orbital radiation
分類コード:180202

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