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作成: 1998/03/17 下村 理、福島 整

データ番号   :180025
高圧低温用ダイアモンドアンビルセル
目的      :極低温高圧力下での物質の挙動解析
研究実施機関名 :科学技術庁無機材質研究所超微細構造解析ステーション(日本原子力研究所関西研究所で実施)
応用分野    :高圧物性、極低温物性、新材料合成、構造解析、地球科学

概要      :
 極低温高圧力下での試料の結晶構造を精密に測定するシステムを構築するために、10K・30GPa程度の領域で温度圧力を連続的に変えられるダイヤモンドアンビルセルを開発した。放射光をX線源に使用しイメージングプレートなどの2次元検出器を用いるX線回折計に設置することにより、資料の低温下での挙動に対しほぼ実時間に近い計測を可能とした。
 

詳細説明    :
 このセルは、極低温下での任意の圧力での測定を可能にするために開発されたもので、単結晶ダイヤモンドアンビルセルと循環式冷凍機の組み合わせにより実現されたものである。この系は、放射光ビームライン上に設置された、ビームに対して位置調整ができる架台の上にセットされたX線回折計上に設置することができる。放射光はコリメータを通ってセル中の試料に照射され、回折されたX線はイメージングプレートないしX線CCDカメラで検出される。イメージングプレートは高精度測定用に、X線CCDカメラは(準)実時間測定に用いる。これにより、低温高圧下での結晶構造の変化を直接ほぼ実時間で観察できる。


図1 ダイヤモンドアンビル実験ステージの側面図

 単結晶ダイアモンドアンビルセルは、ヘリウムガスでメンブレンを通して加圧する方式の低温ダイヤモンドセル(ダイアセル・プロダクツ社製DXR-GMB)であり、本体は銅Be製、ダイアモンド受け皿はBe製である。特にダイヤモンド受け皿がX線の透過度の高い強化Beであるため、デバイリングがほぼ全周で取れるので、回折線強度の信頼性が増すと共に、試料の配向性についての情報もより多く得られるようになっている。また、開口角も従来35°程度であったが、今回は45°まで広がっているので、観測できる回折線の本数が増えている。このセルにより、10K下で30GPaまでの圧力制御ができる。
 
 このセルを循環式冷凍機(クライオスタット)にセットし、10Kまでの温度制御を行う。放射光はコリメータを通ってセル中の試料に照射され、回折されたX線はイメージングプレートないしX線CCDカメラで検出される。このクライオスタットではX線測定とルビー測圧用の光学測定を同時に行う。したがって、一つの窓を光学測定及びX線測定に共通用窓で用いることから、窓材としては光もX線も通すマイラーフィルムとした。また、入射側も、試料部の観察のために、出射側と同じ構造にしてある。


図2 低温ダイヤモンドアンビルセル用クライオスタット及びアンビルセルの断面図

 

コメント    :
 このシステムは高エ研に設置されたが、研究が終了した平成11年度からは共同利用のための実験装置としても利用されている。多数の、かつ、技術水準の様々な共同利用研究者に開放しても技術的な問題は全く起きておらず、本研究で開発したシステムの完成度の高さを物語っているといえる。また、このシステムについて諸外国からの問い合わせも多くあり、この分野での世界的な技術交流に貢献している。
 

原論文1 Data source 1:
「放射光を用いた低温高圧下での構造変化に関する研究」
下村 理*1)、福島 整*2)
*1)日本原子力研究所関西研究所 〒679-5198 兵庫県佐用郡三日月町光都1-1-1
*2)科学技術庁無機材質研究所  〒305-0044 茨城県つくば市並木1-1
原子力工業 42巻 11号 69-71 (1996)

原論文2 Data source 2:


原論文3 Data source 3:


参考資料1 Reference 1:


参考資料2 Reference 2:


参考資料3 Reference 3:


キーワード:高圧力、極低温、単結晶ダイアモンドアンビルセル、X線回折、放射光
ultra-high pressure,ultra-low temperature,single crystal diamond ambil cell, X-ray diffraction、synchrotron orbital radiation
分類コード:180204

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