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作成: 2000/01/18 西森 信行

データ番号   :140026
自由電子レーザー用超伝導リニアックの高周波源
目的      :自由電子レーザーの駆動源である超伝導リニアックの高周波源の開発
研究実施機関名 :日本原子力研究所関西研究所自由電子レーザー研究グループ
応用分野    :同位体分離、光化学、光加工、医療、生物学

概要      :
 原研自由電子レーザーの超伝導加速器は2ヶの前段加速器と2ヶの主加速器からなり、周波数が499.8MHzでそれぞれ各6kW、50kWの電源を必要とする。電源は100Wの汎用半導体RFトランジスターアンプを多数用いてその出力を合成して作る。振幅、位相の制御は加速空洞からのピックアップ信号を見ながらアンプの入力にフィードバックする。ビームが空洞に入っている間の振幅、位相の安定度は各空洞に対してそれぞれ0.5 %と1 度が得られている。
 

詳細説明    :
1. はじめに
 超伝導加速器では、空洞でのパワー消費がほとんどないために、高周波源のパワーはビームパワーにほぼ一致する。原研FELでは230kVの電子銃で加速し、1/6サブハーモニックバンチャー(83.3MHz)で圧縮した電子ビームを2台の前段加速器(499.8MHz)で捕獲し2MeVまで加速する。そのビームを2台の主加速器(499.8MHz)で16MeV程度まで加速する。電源はそれぞれ各、6kW、50kWなので、計112kWとなり6mA程度の電子ビームを加速することができる。安定なFEL発振のためには高周波源の電力を安定に空洞に供給する事が必要で、空洞のピックアップ信号を見ながらアンプの入力信号にフィードバックする必要がある。
 
2. 半導体RFトランジスターアンプ
 もちろんクライストロンも使用できるが、操作の容易さ、UHFの中継局として既に確立された技術であることなどから、半導体アンプを使っている。各素子には500MHz領域で使用可能なMRF393(モトローラ)等を用いる。出力は各々100Wであるが、合成する際の損失やケーブルによる減衰などを考慮して多めに使用する。1Wレベルの入力信号から6kWや50kWの出力を得る場合、前段アンプに用いるものを含めてそれぞれ120個、960個の素子を用いている。また、各素子の効率は55%であるので、6kWの出力を得るには24kW程度の定電圧電源が必要である。実際には30V-20AのDC電源を10Hzでパルス幅2msで運転している(30kWの電源に相当)。できるだけ効率良く運転するためには、ケーブルの減衰や不整合に注意して損失をできるだけ減らす必要がある。
 
3. エネルギー回収システムに対応したRF電源
 将来のエネルギー回収システム導入後は、前段加速器で2MeVまで加速したビームを主加速器で16MeVまで加速し、FEL発振させた後、同じ主加速器で2 MeVまで減速し、ダンプに捨てることになる。その際、主加速器はエネルギーを回収しながら使うので、ビーム量を増やすことが可能である[1]。ところが、前段加速器ではエネルギー回収できないので、ビーム量に比例したパワーがアンプに要求される。この要求に応えるための案として、現在手持ちの2ヶの50kW電源をそれぞれ2ヶづつに分けて25kW電源4ヶとし、加速器にそれぞれ分配すること等が提案されている。最後の合波器等を作り直す必要があるが、100Wアンプの各モジュールはそのまま使用することになり、低コストで実現可能と考えられる。
 
4. RFフィードバックシステム
 加速器の空洞に電力を供給する際、ビームの通過により空洞内でのRFパワーの振幅、位相ともに変化する。この変化をアンプの入力信号にフィードバックして、RFパワーの振幅、位相を一定に保ち、電子ビームのエネルギーを安定化させる必要がある。図1に示すように各空洞内での振幅、位相のずれは0.5%、1度程度である。


図1 前段加速管に2mAビームを通したときの空洞内RFパワーの振幅と位相の変動。RF振幅の変動が0.5%、位相のずれが1°程度であることがわかる。

 

コメント    :
 半導体アンプを用いているため、運転は容易だがAC WALL PLUG効率があまり良くない。できるだけロスを減らす必要がある。
 

原論文1 Data source 1:
A Path Towards the 1 kW or Higher FEL Light Output at the JAERI Superconduction rf Linac based FEL
N. Nishimori, E. Minehara, M. Sawamura, R. Nagai, N. Kikuzawa, M. Sugimoto and T. Yamauchi
Free Electron Laser Laboratory, Advanced Photon Research Center, Kansai Research Establishment, Japan Atomic Energy Research Institute, 2-4 Shirakata-Shirane, Tokai, Naka, Ibaraki 319-1195
FREE ELECTRON LASERS 1998 II-23

原論文2 Data source 2:
An rf system using all-solid-state amplifiers for the JAERI FEL
M. Sawamura, M. Ohkubo, E. Minehar, R. Nagai, M. Takao, N. Kikuzawa, M. Sugimoto, Y. Suzuki, Y. Kawarasaki, K. Nagatsuka, K. Sato, H. Matsumoto and A. Kashiwagi
Free Electron Laser Laboratory, Department of physics, Japan Atomic Energy Research Institute, 2-4 Shirakata-Shirane, Tokai, Naka, Ibaraki 319-11
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A 331 (1993) 323

参考資料1 Reference 1:
First lasing of the Jefferson Lab IR Demo FEL
S. Benson et al.,
TJNAF, Newport News, VA
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A 429 (1999) 27

キーワード:超伝導加速器、superconducting accelerator、
RFトランジスターアンプ、RF Transistor amplifier、フィードバック制御、Feedback
分類コード:140102

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