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作成: 1999/10/01 三友 信夫

データ番号   :120024
COBWEBを用いたプラント状態自動分類機能の開発
目的      :将来型プラントである自律型プラントにおける、マンマシンインターフェースの要素技術の開発
研究実施機関名 :運輸省船舶技術研究所 システム技術部
応用分野    :原子力用人工知能、マンマシンインターフェース

概要      :
 将来型の自律型プラントにおけるマン・マシン・インターフェースの役割について検討し、その一つとしてプラント状態の自動分類機能の開発を行った。概念クラスタリング手法として知られているCOBWEBを用いたプログラムを開発し、プラントシミュレータから得られたプラント状態について実際に分類を行ってみた結果、検討事項はあるものの分類としては適当なものが得られた。
 

詳細説明    :
 原子力プラントにおいて、プラント情報の収集、状態判断、操作の一連の作業を運転員が迅速・正確に行うことは、安全を確保するために重要なことの一つである。特に、プラント異常時や緊急時に、プラント状態を正しく把握し、とるべき処置の選択を誤らないようにすることは重要である。また、原子力プラントにおいては、運転モード、異常時、事故時などに対応して種々のプラント状態が存在する。この場合には、運転員が、現在のプラント状態を他の状態との関連において理解することは状態判断、操作に貴重な支援となる。そのためのマン・マシン・インタ-フェ-スの機能は、短時間でプラント情報を処理しオペレ-タに知らせ、また過去のプラント状態の推移および将来の予測の支援をすることであり、適切なマン・マシン・インタ-フェ-スの存在が重要となってくる。
 
 そこで、本研究では、逐次学習の手法のひとつであるCOBWEBを用いてのプラント状態の自動分類機能の検討を行った。COBWEBでは、まず、分類基準となる類似の概念を持つものの集合をクラスCk(k=1,2,...)と定義する。このクラス分けされた概念Ckのi番目の特徴Ai(i=1,2,...)がj番目の値Vij(j =1,2,...)をとる場合、ある事例においてある特徴が認められる確率はPd=P(Ai=Vij)と表される。この時、あるクラスの事例がある特徴をもつ条件付き確率を、クラス内類似性(inter-class similarity)として定義し、このクラス内類似性とBayesの法則等から導き出されるカテゴリユーティリティ(CU: category utility)を定義し、このCU値が最大となるように分類を行うものである。
 
 分類は、プラントシミュレータから送られてくるプラント各部のデータをもとに行なわれる。しかしながら、シミュレータから送られるセンサー値は数値情報であり、数値の微少な差異を問題にするとプラント各部の状態の組み合わせが無限に近く生成されてしまうことになる。そこで、定格運転時のブラント状態量を基準として、温度、圧カ、流量等の数値情報であるセンサー値を、高低、大小等のラベルを用いた判断値により定性的に分類した。一方、自律型原子力ブラントをその機能に着目して、ツリー構造でモデル化し、このツリー構造の末端のノードにおける各サブシステムの状態が、先程のセンサー値を定性化した結果を基に、ルールにより判別し、さらにその判断結果を基に、より上位のサブシステムの状態を順次判別していく機能を開発した(図1)。


図1 プラント判断モデル

 実際に、プラントシミュレータから得られたデータを分類した結果について示したものを示す。プラント状態としては、基本的な起動→定格→停止という状態の変化をとりあげた。まず図2は3個のデータが取り込まれ、それらを分類した結果であるがいずれのデータもお互いに含まれず独立したツリー構造になっている。


図2 分類図(3個のデータ)

 さらに、プラント状態が起動→定格→停止へと変化し、16個のデータが取り込まれた場合の結果について示したものが図3である。


図3 分類図および詳細情報の例

 図中 より近い状態相互がクラスを形成し、また定格に近い状態の中でもより定格に近いものがクラスを形成していることが分かる。また、各クラスをクリックすることにより、下部に示されるような詳細情報も得られる。以上のことから、分類上問題ない結果が得られたと思われる。
 

コメント    :
 プラントの状態の表示方法として、COBWEBを分類方法として採用した結果、プラント状態を自動的に適切に分類し、かなり有効な方法であることがわかった。これにより、運転員にプラントの現在の状態と過去の状態との関係などを知らせることができると思われる。しかしながら、すべての場合に分類が有効ではないと思われ、実際不適切な分類も認められた。これについては、分類分けの基本的な設定により修正されるものと思われる。
 

原論文1 Data source 1:
マン・マシン・インターフェイス・システムの自律型プラントへの適応性評価の研究
松岡 猛、沼野 正義、染谷 実、福戸 淳司、三友 信夫、宮崎 恵子、菅澤 忍
船舶技術研究所 システム技術部
船舶技術研究所報告 第33巻 第5号 (1996年) pp. 245-281.

原論文2 Data source 2:
原子炉プラント状態の自動分類について-COBWEBを用いた自動分類方法-
三友 信夫、松岡 猛
船舶技術研究所 システム技術部
日本原子力学会1995年秋の大会予稿集, 1995年, B36 (1995).

参考資料1 Reference 1:
Toward a New Man-Machine Interface for Autonomous Power Plant Systems -Observation system for Autonomous, Diverse and Cooperative Functions-
松岡 猛、沼野 正義、染谷 実、福戸 淳司、三友 信夫、宮崎 恵子
船舶技術研究所 システム技術部
Proceeding of the International Symposium on Artificial Intelligence, Robotics and Intellectual Human Activity Support for Nuclear Applications (November 1997).

参考資料2 Reference 2:
Knowledge acquisition via incremental conceptual clustering
Douglas H.Fisher
Machine Learning, 2, 139 (1987).

キーワード:プラント状態、自動分類、コブウエブ、自律型プラント、マンマシンインターフェース
Plant state, Automatic classification, COBWEB, Autonomous plant, Man-machine interface
分類コード:120101, 120301, 120402

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