原子力基盤技術データベースのメインページへ

作成: 1999/10/01 三友 信夫

データ番号   :120023
プラント状態判断機能の開発
目的      :将来型プラントである自律型プラントにおける、マンマシンインターフェースの要素技術の開発
研究実施機関名 :運輸省船舶技術研究所 システム技術部
応用分野    :原子力用人工知能、マンマシンインターフェース

概要      :
 将来型の自律型プラントにおけるマン・マシン・インターフェースの役割について検討し、その一つとしてプラント状態の判断機能の開発を行った。ルールベースに基づく状態判断を行う機能を開発した。本機能においては、自己修正・拡張機能もあり将来的に様々な場合にも対応しうるものと思われる。プラントシミュレータから得られたプラント状態について実際に判断を行ってみた結果、検討事項はあるものの適当な結果が得られた。
 

詳細説明    :
 将来型の自律型プラントでは、単純作業や危険作業は機械に任せ、人間はより高度で大局的な判断に携わっていることが想定される。そのためのマン・マシン・インターフェイスには、運転員がプラント状態を理解するためのプラント機能モデルが存在し、そのモデルに基きマン・マシン・インターフェイスが各種の判断を下し、情報提示・運転支援を行うことが期待される。またこのプラント機能モデルはプラント状態の変化、運転経験の蓄積、運転員(人間)の習熟等に合わせて柔軟に変化していくべきものである。それゆえ、プラント機能モデル自体に自律的に修正・拡張される機能を持たせた。
 
 全体の構成を図1に示す。階層的な判断ツリーが、プラントシミュレータからのセンサー値をもとにプラント全体の判断値を導出するまでの処理の流れを説明する。


図1 状態判断の流れ

 
(1)センサー値の判断値への変換
 プラントシミュレータから送られるセンサー値は数値情報であり、数値の微少な差異を問題にするとプラント各部の状態の組み合わせが無限に近く生成されてしまうことになる。そこで、定格運転時のプラント状態量を基準として、温度、圧カ、流量等の数値情報であるセンサー値を定性的に分類した。また、この定性的な分類により、数値を人間に理解しやすい形に表現できる。つまり、原子炉容器の入り口温度を例とした場合には、280℃以下を「異常低」とし、280〜286℃以下を「やや低」とするものである。この高低、大小等のラベルを以後、判断値という。
 
(2)ルールベースによる階層的な判断
 前述のセンサー値を定性化した結果をもとに、ツリー構造の末端のノードにおける各サブシステムの状態がルールにより判別される。さらにその判断結果を基に、より上位のサブシステムの状態を順次判別していく。たとえば、「加圧器機能」は "加圧器"にある"液相温度"、"圧力"そして"サージ流量"の3つの判断値から決定されるものである。また、この推論過程により、最終的なプラント状態のみならず、一次ループ機能や二次側機能などのサブシステムの状態に関して定性的な判断を得ることが出来る。
 
 状態判断をするルールは、各機器およびサブシステムごとに用意した。プラント状態は14種類の状態を想定し、これら14種類のプラント状態は、原子力プラントの立ち上げからシャットダウンを含む通常の運転状況および緊急事故時において想定される典型的なケースを扱ったものである。また、各々のルールにおける条件部が完全には満足されておらず、一部隣接判断値で満たされている場合は、概ね合致しているとしてその結論を採用する。それ以外の場合は、未経験状態と判定するようになっている。さらに、本機能は自己修正・拡張を行うことが可能なものとなっている。
 
 図2にプラント状態判断機能の図を示す。


図2 プラント状態判断図、詳細情報図

 図中、aのボタンをクリックすることにより状態判断が行われ、その結果のプラント状態がbに示される。判断結果は各要素についても示され、ツリー上に示された各要素について、その状態が好ましい状態なのかそうでないのかが識別されるようになっている。また、各要素についてそのボタンをクリックすることにより下図に示されるような詳細情報が得られものである。また、前述の自己修正・拡張機能もcに代表されるボタンをクリックすることにより行われる。さらに、図3に示すように、プラントのレイアウトを模擬した表示画面では、各部の情報を得ることができる。


図3 プラント表示図

 

コメント    :
 プラントの状態の判断機能を整備した。この機能により、運転員にルールベースに基づいたプラントの状態判断を提供でき、プラント状態が的確に判断され、かなり有効方法であることがわかった。また、表示方法を変えることにより必要な情報を選択して得ることも有効なものであった。しかしながら、すべての場合に判断が有効ではないと思われ、しきい値の設定の検討の必要性も認められた。さらに、処理速度の点についても改良の必要性が感じられた。
 

原論文1 Data source 1:
マン・マシン・インターフェイス・システムの自律型プラントへの適応性評価の研究
松岡 猛、沼野 正義、染谷 実、福戸 淳司、三友 信夫、宮崎 恵子、菅澤 忍
船舶技術研究所 システム技術部
船舶技術研究所報告 第33巻 第5号 (1996年) pp. 245-281.

原論文2 Data source 2:
階層的なプラント機能モデルによる原子力プラント状態判断機能
菅澤 忍、松岡 猛
船舶技術研究所 システム技術部
日本原子力学会1994年秋の大会予稿集, 1994年, C45 (1994).

参考資料1 Reference 1:
Toward a New Man-Machine Interface for Autonomous Power Plant Systems -Observation system for Autonomous, Diverse and Cooperative Functions-
松岡 猛、沼野 正義、染谷 実、福戸 淳司、三友 信夫、宮崎 恵子
船舶技術研究所 システム技術部
Proceeding of the International Symposium on Artificial Intelligence, Robotics and Intellectual Human Activity Support for Nuclear Applications (November 1997).

キーワード:プラント状態、プラント状態判断、自律型プラント、マンマシンインターフェース
Plant state, Judgemnet on plant states, Autonomous plant, Man-machine interface
分類コード:120101, 120301, 120402

原子力基盤技術データベースのメインページへ