原子力基盤技術データベースのメインページへ

作成: 1998/11/2 淺間 一

データ番号   :120013
ヒューマン・インタフェースのための通信による群ロボットのモニタリング手法
目的      :複数移動ロボットのモニタリング手法の開発と評価
研究実施機関名 :理化学研究所生化学システム研究室
応用分野    :ロボット工学、計算機科学、製造業、原子力

概要      :
 人間とロボット群の協調によって作業を行うヒューマン・インタフェースを設計するために、人間がロボット群の挙動をモニタリングするいくつかの手法(明示的/非明示的モニタリング、Time-based/Event-basedモニタリング、双方向/片方向通信モニタリングなど)を提案し、各手法の通信量を理論的に解析するとともに、シミュレータを開発し、シミュレータを用いた実験によって、実際の評価を行った。
 

詳細説明    :
 ロボット群の挙動をモニタリングするいくつかの手法を提案し、シミュレータ実験によって評価し、モニタリング手法の比較検討を行った。
 
 まず、多数の自律ロボットから構成される自律分散型ロボットシステムにおけるヒューマン・インタフェースについて議論し、システムの枠組みとそこでの通信を用いたモニタリング機能について検討した。
 
 次に、通信を用いた複数ロボットのモニタリング手法を、必要な情報を直接にロボットに問い合わせる明示的モニタリング手法と、ロボット間で協調のために交わされている通信を傍受する非明示的モニタリング手法に分類した。また、ロボットが十字路とT字路から構成される道路状の環境を移動すると仮定し、明示的モニタリングとして、一定時間ごとにインタフェースがロボットに位置等を問い合わせて情報を受け取る方法(時間双方向明示通信)、一定時間ごとにロボットが一方的にインタフェースに位置等の情報を報告する方法(時間単方向明示通信)、ロボットが新しい道路セグメントに侵入するごとに位置等の情報を報告する方法(侵入イベント単方向明示通信)、ロボットが道を曲がるごとに位置等の情報を報告する方法などを提案した(曲折イベント単方向明示通信)。また、非明示的モニタリングとして、複数のロボットが同じセグメントに侵入し、衝突回避を行うごとに、ロボット間で交信される位置情報を傍受する手法(傍受非明示通信)を提案した。
 
 さらに、特定の道路環境を仮定してシミュレータを構築し、シミュレータ実験を行うことによって、各モニタリング手法の通信負荷と収集できる情報の獲得率の評価を行った。それぞれの評価結果を図1、図2に示す。


図1 ロボットの台数に対する通信負荷(原論文1より引用)



図2 ロボットの台数に対する情報獲得率(原論文1より引用)

 時間ベース手法(双方向明示通信、時間単方向明示通信)は、ロボットの台数によらず、単位時間あたりの通信回数が一定であるため、常に一定の通信負荷がかかる。しかし、ロボットの台数が増えるにつれ、モニタリング通信間隔が長くなるので、情報の獲得率は低下する。イベントベース手法(侵入イベント単方向明示通信、曲折イベント単方向明示通信)は、情報の獲得率は高いが、ロボットの台数の増加につれ、通信量が増大する。また、台数が非常に多くなると、通信の許容量を越え、通信の取りこぼしが生じ、情報の獲得率も低下してくる。非明示通信手法(傍受非明示通信)は、モニタリングのための通信負荷はかからないが、情報獲得率はロボット間の通信頻度の増加につれて、上昇する。ただし、ここでも通信の許容量を越えると、通信の取りこぼしによる情報の獲得率の低下が発生する。また、異なる環境、シミュレーション条件でも実験を行った結果、この傾向は、共通していることが明らかになった。
 
 以上の評価結果から、情報の獲得率に関してはイベントベース手法が、また通信負荷に関しては非明示通信手法が優れていることがわかる。ただし一般に、通信負荷と情報の獲得率はトレードオフの関係にあり、いずれのモニタリング方法も一長一短がある。したがって、システム内のロボットの台数、通信の帯域幅や、通信負荷/獲得率の重要性などに応じて、適切なモニタリング手法を選択する必要がある。また、システム構成が動的に変化する場合などは、状況に応じてモニタリング手法を切り替える必要があろう。適切なモニタリング手法の選択、切り替えには、まさに本研究で報告した評価結果を利用することが可能になると考えられる。
 

コメント    :
 群ロボットによってあらゆる作業を完全自律的に行わせることは技術的に困難である。そこで、群ロボットを操作しながら作業を行わせる場合のヒューマンインタフェースが重要となる。ヒューマンインタフェースを設計する際、どのように群ロボットの行動をモニタリングするかに関して、本研究の結果が非常に有用になると考えられる。
 

原論文1 Data source 1:
ヒューマン・インタフェースのための通信による群ロボットのモニタリング手法
鈴木 剛、横田 和隆、淺間 一、嘉悦 早人、遠藤 勲
埼玉大学大学院、宇都宮大学工学部、理化学研究所
日本機械学会論文集(C編) Vol. 62, No. 602 (1996) pp. 3759-3765.

原論文2 Data source 2:
Cooperation between the Human Operator and the Multi-Agent Robotic System
T. Suzuki, K. Yokota, H. Asama, H. Kaetsu, I. Endo
Saitama Univ., Utsunomiya Univ., The Institute of Physical and Chemical Research (RIKEN)
Proc. of IEEE/RSJ Int. Conf. on Intelligent Robots and Systems, Vol. 1 (1995) pp. 206-211.

参考資料1 Reference 1:
A Human Interface System for the Multi-Agent Robotic System
K. Yokota, T. Suzuki, H. Asama, A. Matsumoto and I. Endo
Utsunomiya Univ., Saitama Univ., The Institute of Physical and Chemical Research (RIKEN), Toyo Univ.
Proc. of IEEE Int. Conf. on Robotics and Automation (1994) pp. 1039-1044.

参考資料2 Reference 2:
A Human Interfacefor Interacting with and Monitoring the Multi-Agent Robotic Systems
T. Suzuki, K. Yokota, H. Asama, A. Matsumoto, Y. Ishida, H. Kaetsu and I. Endo
Saitama Univ., Utsunomiya Univ., The Institute of Physical and Chemical Research (RIKEN), Toyo Univ., Kyushu Univ.
Distributed Autonomous Robotic Systems, Eds. H. Asama, T. Fukuda, T. Arai and I. Endo (Springer-Verlag, Tokyo, 1994) pp. 50-61.

キーワード:マルチロボットシステム,ヒューマン・インタフェース,通信,モニタリング,シミュレーション
Multi-robot system, Human interface, Communication, Monitoring, Simulation
分類コード:120203, 120204, 120201

原子力基盤技術データベースのメインページへ