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作成: 1998/10/30 淺間 一

データ番号   :120012
マルチ移動ロボット環境における衝突回避のための局所的な通信を利用したセンサシステムの開発
目的      :複数移動ロボット環境下で動作可能な赤外線局所的通信を用いた衝突回避用センサシステムの開発
研究実施機関名 :理化学研究所生化学システム研究室
応用分野    :ロボット工学、製造業、原子力

概要      :
 群移動ロボット環境下で、赤外線を用いて移動ロボットと障害物を検出する手法を提案した.ロボットの外周に赤外線の送受信素子を配置し、各ロボットは自分のID情報をのせた信号を局所的に送信しながら移動する。衝突の検出は、他のロボットからの赤外線信号および障害物からの反射信号の受信によって行われる。この原理に基づいて赤外線通信センサシステムLOCISSを開発し、その基本性能を調べ、有効性を検討した。
 

詳細説明    :
 群移動ロボット環境下で、赤外線を用いて各移動ロボットが周囲に存在する他の移動ロボットや障害物を検出するセンシング手法を開発した。
 
 センシングの基本的原理を図1に示す。


図1 衝突検出原理(原論文1より引用)

 ロボットの外周に赤外線の送受信素子を配置し、各ロボットは自分のID情報をのせた信号を送信しながら移動する。この信号を受信したロボットは、受信したセンサの方向に他のロボットが存在することを検出することができ、またその信号の情報から衝突対象のロボットのIDも同時に知ることができる。すなわち、ロボット間の通信によって衝突検出センシングを実現することが可能となる。また、衝突対象がロボット以外の障害物である場合、ロボットは対象物から反射された自分自身のIDを受信する。すなわち、赤外線信号受信によって、受信方向に衝突対象が存在することを検出できるが、受信したID情報から、相手が障害物か、ロボットかの区別をすることが可能であり、またロボットの場合、それが誰であるかを認識することができる。
 
 赤外線の到達距離を限定することによって、それより外側の領域に赤外線を影響させないようにでき、それによって複数台のロボットからの赤外線信号の干渉が生じることを防ぐことができる。また、送信信号の1bitを3pulseのHとLの組み合わせによって冗長に表わすことによって、複数の信号が干渉した際の検出も可能にした。
 
 次に、本手法に基づき、8個の送受信素子をロボットの外周45[deg]おきに配置したセンサシステムを開発した。素子は、太陽光や室内照明のノイズ対策として、38[kHz]の周波数で変調した赤外線を伝送媒体とし、発光素子、受光素子は、それぞれ約45[deg]の測定領域を持つものを使用した。センサ制御部は、信号処理の高速化のために、CPU(Z80)を4個使用し、各CPUが2対の送受信素子を制御することとした。1[byte]の送信時間は約18[msec]である。
 
 さらに、開発したセンサの基本性能を実験によって求めた。赤外線送信出力調整を行った結果、ロボットの検出(他のロボットから送信した赤外線信号の受信)領域は約1[m]、障害物の検出(自分のロボットから送信した赤外線信号の反射の受信)領域は約0.4[m]となった。また、それぞれの素子の検出幅は約45[deg]となった。ただしここで、検出領域とは、確実に送信した信号が受信できる領域である。また、複数の赤外線信号の干渉検出も可能であることが明らかになった。以上の実験結果から、実際のセンサシステムの特性が明らかになったと同時に、赤外線の到達距離を限定し、局所的にすることでアクティブセンサの信号干渉を問題を解決するとともに、検出すべき情報を赤外線信号の上にのせ、それを受信することによって、他のロボットおよび障害物の衝突検出が可能であることが実証された。
 
 本センサは、送信赤外線信号にロボットのIDのみならず、移動方向や移動速度などの情報をのせることによって、衝突対象のロボットのIDのみならず、そのロボットの動きも検出するセンサとして用いることができる。
 

コメント    :
 群ロボット環境下では、アクティブセンサは信号どうしの干渉が問題となり、パッシブな画像処理は処理量が大きいなどが問題となる。本赤外線通信センサシステムは、大局的通信に負担をかけることなく、近接状態で周囲の状況を認識することが可能でり、原子力プラント内や工場内などの屋内環境で、多数の移動ロボットを動作させる際の、衝突回避用センサとして非常に有用であると考えられる。
 

原論文1 Data source 1:
マルチ移動ロボット環境における衝突回避のための局所的な通信を利用したセンサシステムの開発
鈴木 昭二、新井 義和、琴坂 信哉、淺間 一、嘉悦 早人、遠藤 勲
大阪大学工学部、埼玉大学大学院、ATR、理化学研究所
日本機械学会論文集(C編)Vol. 62, No. 602 (1996) pp. 3752-3758.

原論文2 Data source 2:
Development of an Infrared Sensory System with Local Communication Facility for Collision Avoidance of Multiple Mobile Robots
S. Suzuki, Y. Arai, S. Kotosaka, H. Asama, H. Kaetsu and I. Endo
Osaka Univ., Saitama Univ., ATR, The Institute of Physical and Chemical Research (RIKEN)
J. of Robotics and Mechatronics 9 (1997) pp. 354-361.

参考資料1 Reference 1:
An Infra-Red Sensory System with Local Communication for Cooperative Multiple Mobile Robots
S. Suzuki, H. Asama, A. Uegaki, S. Kotosaka, T. Fujita, A. Matsumoto, H. Kaetsu and I. Endo
Osaka Univ., The Institute of Physical and Chemical Research (RIKEN), Toyo Univ.
Proc. of 1995 IEEE/RSJ Int. Conf. on Intelligent Robots and Systems, Vol. 1 (1995) pp. 220-225.

参考資料2 Reference 2:
移動ロボットの協調のための赤外線センサ通信システム
鈴木 昭二、新井 義和、琴坂 信哉、淺間 一、嘉悦 早人、遠藤 勲
大阪大学工学部、埼玉大学大学院、理化学研究所
ロボティクス・メカトロニクス講演会'95講演論文集

キーワード:ロボット、移動ロボット、センサ、衝突検出、赤外線通信、局所的通信、障害物検出、干渉検出
Robot, Mobile robot, Sensor, Collision detection, Infrared communication, Local communication, Obstacle detection, Interference detection
分類コード:120203, 120204, 120201

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