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作成: 1999/02/16 喜多 伸之

データ番号   :120008
可動カメラと可動光源を用いた鏡面反射物体の探索
目的      :平面上の鏡面反射物体の視覚探索
研究実施機関名 :電子技術総合研究所知能システム部自律システム研究室
応用分野    :漏洩点検システム、巡回点検、監視システム

概要      :
 金属面やガラス状物体などが平面上に存在する場合、光源から照射された光は平面の法線方向に対して光源の方向と鏡対称な方向に反射される。この性質より、平面上のある点に対してその法線方向に鏡対称となる位置にカメラと照明を配置することにより、鏡面物体の存在を信頼性高く検出することができる。探索の効率を考慮して線光源を用い、平面全体を効率良く探索するための計画手法を提案する。
 

詳細説明    :
 原子力プラント環境でロボットが 点検・保守等の作業を自律的に遂行するためには、作業環境の3次元情報の獲得が重要である。そのために、カメラから入力した画像を解析して3次元情報を復元する種々の方法が提案されている。
 
 それらの方法は一般に光を乱反射する表面を仮定しており、金属面やガラス状物体などの鏡面反射をする物体には適用できない。しかし、プラント環境内には鏡面反射をする物体が数多く存在する。
 
 鏡面反射物体の視覚認識については、生産ラインの部品の位置姿勢同定問題をハイライト領域を検出することにより行った例や、照度差ステレオ法から鏡面反射成分も扱えるように拡張した例が報告されているが、作業エリア内の探索計画まで含めたセンシング技術は未開拓であった。そこで、鏡面反射物体の探索を行う能動的なセンシングシステムを構成するために、可動光源と可動カメラを用いる方法を提案する。


図1 Principle to detect specular objects on a plane by using a camera and a line-light source.(原論文1より引用)

 ここでは、探索領域を平面と仮定する。もし平面上に鏡面物体が存在した場合、ある光源から照射された光は、平面の法線方向に対して光源の方向と鏡対称な方向に反射される。したがって、平面上のある点に対してその法線方向に鏡対称となる位置にカメラと照明を配置することにより、鏡面物体の存在を信頼性高く検出することができる。ここでは探索の効率を考慮して線光源を用いることとし、カメラと線光源との組み合わせで定まる線分(以降、これを探索線分と呼ぶ)を平面内で掃引することにより、鏡面反射の検出を行う(図1)。


図2 An example of a search path.(原論文1より引用)

 ただし、例えば床のようにその平面上に多くの物体が存在する場合は、その平面部分のみ効率良く掃引するための計画が重要となる。そこで、移動ロボットのための全平面領域被覆の経路生成アルゴリズムをもとに、スタートからゴールまでの距離変換値と、障害物からの距離変換値を加算したポテンシャル場を用いた手法を考案した。
 
 探索線の方向ベクトルを障害物のエッジに平行にならないようにする、なるべく同じところを掃引しないようにする、探索線ができるだけ直進するようにする、ことを目標に計画した掃引経路の一例を図2に示す。図中の長方形の領域が線光源に照らされる領域であり、これが通過したセルは掃引が完了したと見なしている。


図3 Representation of sensor configuration space using a geodesic cylinder.(原論文1より引用)

 最後にこの掃引経路に従って、カメラと照明の配置計画を導出する。点光源のような焦点を持つセンサの配置空間の表現には、球面を均等に平面分割した測地ドームをよく用いる。ここでは、線光源の配置空間を表現するために図3に示す測地シリンダを導入した。これにより環境内の物体で遮られるカメラ/光源の設定候補位置の抽出を効率化することができた。
 
 能動的なカメラ、あるいは、照明を用いたセンシングについては、タスクや環境に応じた効率的なセンシング計画の立案がポイントである。ここでは、静的な環境を対象にセンシング計画を生成する手法を示したが、評価パラメータを与えてそれを最適化する掃引経路の生成については今後の課題である。
 

コメント    :
 
 

原論文1 Data source 1:
可動カメラと可動光源を用いた鏡面反射物体の平面内探索センシング
坂根 茂幸、永田 和義、雨海 明博、柿倉 正義
電子技術総合研究所知能システム部、茨城県つくば市梅園1-1-4、305-8568
計測自動制御学会学術講演会予稿集 (1994) pp. 705-706.

キーワード:ロボット視覚、能動視覚、視覚探索、画像処理、鏡面反射、協調制御
robot vision, active vision, visual search, image processing, specular, cooperation
分類コード:120202, 120204, 120205

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