原子力基盤技術データベースのメインページへ

作成: 1998/02/06 田辺 文也

データ番号   :120004
原子炉シミュレータ実験施設の開発・整備
目的      :知的活動支援研究用の実験施設の開発・整備
研究実施機関名 :日本原子力研究所東海研究所原子炉安全工学部人的因子研究室
応用分野    :原子力発電プラント

概要      :
 知的活動支援研究の一環として、マンマシンインタフェース設計・評価を行うための原子炉シミュレータ実験施設を開発整備した。インタフェースは100インチ大型表示画面2面と原子炉操作卓3台で構成され、各操作卓は2つのCRTから成っており、配置は可変になっている。インタフェース画面を容易に改変することが可能であり、実験データ取得とデータ分析を系統的かつ効率的に行うための機能を備えている。
 

詳細説明    :
 原研は、平成6年度から新たに開始したクロスオーバー研究「原子力施設の知的活動支援の方法に関する研究」のなかで、それまでの経験と知見を生かして、マンマシンインタフェースのあり方と運転員の認知的対処方略の関係を中心とする実験的研究を行うこととした。こうしたヒューマンファクタ実験のより効果的な実施を可能とするインタフェース環境を整備/開発することが必要となり、平成8年度末に新たな原子炉シミュレータ実験施設を完成させた。


図1 Overview of the experimental facility

 新たに完成した原子炉シミュレータ実験施設の概観を写真1に示す。施設は100インチ大型表示画面2面と原子炉操作卓3台から構成されている。各操作卓はそれぞれ専用のワークステーションで制御される2つのCRTを備えており、各CRT画面は、原子炉システムの情報表示ウインドウ、原子炉システム操作パネル・ウインドウ及びアラームリスト表示ウインドウ等のウインドウから構成されている。大型表示画面には、原子炉システムのオーバービュー等のシステムレベルの情報が表示されている。操作卓は移動可能にしてあるので、物理的配置を実験の必要に応じて変更できる。
 
 原子炉システムは原子力船「むつ」(定格出力36MW)のシステムを模擬しており、 47種の事故・故障を発生させることができる。


図2 Simplified data flow in the experiment system

 図2に実験設備におけるデータの流れを示す。シミュレータ計算機から約35Kbytesのデータが0.52秒毎にエンジニアリングワークステーションにブロードキャスト方式で渡される。各エンジニアリングワークステーションは独立に、担当インタフェースに表示すべき変数にデータを処理する。シミュレータ計算機からのデータは大容量ハードディスクにも記憶されて、実験データ分析のための再生(リプレー)等に使用される。
 
 このシミュレータ実験施設は次のような特徴を備えている。
 
(1)インタフェース表示画面を容易に作成、変更できるようになっており、表示内容及び表示方式の違いによる原子炉状態把握、対処の仕方の変化などを観測できる。そのような柔軟なインタフェース作成・改変機能を実現する上で、OECDハルデンプロジェクトで開発されたインタフェース作成・管理用プログラムPICASSO-3の使用が役立っている。
 
(2)運転操作に対するシグナル応答時間は1分以下、画面変更の応答時間は0.25秒以下であり、ヒューマンファクタの観点からも十分な応答速度を実現している。
 
(3)シミュレータの凍結、再開が可能であるとともに、それぞれのインタフェース(大型表示画面およびCRT)に表示する画面を実験者がコントロールする事が可能である。
 
(4)シミュレータ操作者(被験者)のインタフェース画面変更操作を含む実験中のシステム挙動が完全に再現(再生)可能である。このことは、実験データ分析もシミュレータ実験施設を使用して効率的に行うことが可能となる。
 

コメント    :
 
 

原論文1 Data source 1:
JAERI's Activities on Simulator Experiment -Evaluation Methodologies and It's Facility-
Yukichi Yamaguchi, Hiroshi Furukawa, and Fumiya Tanabe
Japan Atomic Energy Research Institute
Presented at the 1997 IEEE Sixth Conference on Human Factors and Power Plants, June 8-13, 1997, Orland, Florida, USA

原論文2 Data source 2:
Simulator Study on Supporting Operators' Intellectual Activities in NPP
Yukichi Yamaguchi, Hiroshi Furukawa, and Fumiya Tanabe
Japan Atomic Energy Research Institute
Proceeding of the International Symposium on Artificial Intelligence, Robotics, and Intellectual Human Activity Support for Nuclear Applications, November 19-21, 1997, Wako-shi, Saitama, Japan

キーワード:原子炉、フルスコープシミュレータ、実験、データ取得、データ分析、大画面、CRT
nuclear reactor, full scope simulator, experiment, data acquisition, data analysis, large wall panel, CRT
分類コード:120402,120403

原子力基盤技術データベースのメインページへ