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作成: 1998/01/06 淺間 一

データ番号   :120002
通信を用いた分散的管理に基づく複数の自律型ロボットの協調的作業分担決定手法
目的      :複数台自律ロボットの作業分担決定手法の開発
研究実施機関名 :理化学研究所生化学システム研究室
応用分野    :ロボット工学、計算機科学、原子力、製造業、宇宙

概要      :
 複数の自律型ロボットで作業分担を自律的かつ分散的に決定する手法を開発した。荷片付け作業を例に取り、通信を用いながら作業やロボットの状況を分散的に管理する手法、ロボットが状況に応じて協調的に行動するアルゴリズムを開発した。また、ロボット間の無線通信システムを開発し、シミュレーション実験を行った結果、本手法の妥当性を検証し、並列行動による効率化、協調行動による高度な作業の遂行可能性を確認した。
 

詳細説明    :
 複数の自律型ロボットが並列的な行動および協調行動によって作業を行う場合を想定し、各作業をどのロボットが処理するかを自律的かつ分散的に決定する手法を開発した。ここでは、具体的に、荷片付け作業を例に取りあげた。これは、ある部屋の中に複数の荷が散在している状況で、これをロボットが壁際まで押していくことによって片付けるという作業である。ただし、荷には、ロボット単独で押すことが可能な「軽い荷」と、複数のロボットが共同で押さなければならない「重い荷」が存在することとし、荷の重さは実際に押してみるまで未知とした。
 
 まず、通信を用いながら荷の状況を分散的に管理することによって、各ロボットが任意の時点で作業および環境情報を得ることができる手法を開発した。荷の状況の管理に関しては、各ロボットが、荷の選択時、各荷の片付け完了時にブロードキャスト通信を行うことによって、すべてのロボットが荷の状況を把握する手法である。ロボットの行動に関しては、単独行動、協調行動(依頼)、協調行動(支援)、待機という4つの行動モードを定義し、その行動モードの遷移で表すこととした。ロボットは通常単独行動によって、未片付けの荷から1つを選択し、それが軽い荷であれば単独で処理する。
 
 処理後、他のロボットから重い荷を片付ける協調依頼が受信されていればその支援を行い、受信されていなければ、単独行動による処理を継続する。荷の処理中に荷が重いことが判明した場合には、協調が必要と判断する。その際、他のロボットからの依頼を受信していれば、その支援を優先して行い、受信していない場合に限り、他のロボットに協調依頼をブロードキャストによって送信し、他のロボットの支援を受けて重い荷を処理する。
 
 他のロボットからの協調依頼の承諾を優先的に行うという、本アルゴリズムの一種の思いやり機構によって、複数のロボットが依頼しあって永遠に待たされるような競合が生じないような、飢餓デッドロック対処機能が実現されている。また、ここでの通信によって、各ロボットは、他のロボットの行動状況も分散的に管理することが可能である。
 
 次に、無線モデムを用い、ポーリング方式によって複数のロボット間で通信が可能な無線通信システムを開発した。また、無線モデムをパソコンに接続し、1台の移動ロボットの行動をシミュレートするパソコン複数台を用いたシステムを構築した。これによって、実際に複数のロボットを動作させることなく、実際の無線通信システムを用いて模擬実験を行うことが可能である。
 
 本システムを用い、2次元平面上に配置した10個の荷を、2台の自律移動ロボットによって片付けるシミュレーション実験を行った。実験の結果、本手法によって、通信システムが正常に機能していること、荷の状況やロボットの状態が正しく管理されていること、さらに各ロボットが作業分担を自律的に決定しながら、並列的な単独行動および協調行動によって、すべての荷を片付け、ミッションを達成することが確認された。すべての荷を軽い荷と仮定して、移動ロボット1台の場合と移動ロボット2台の場合についてシミュレーションを行った結果、2台による作業処理時間が、1台による場合の57%となり、並列行動による効率化が観察された。重い荷が含まれる場合には、1台では処理不可能であるのに対し、協調行動による高度な作業の遂行可能性も示唆した。
 
 ロボットの特性や作業全体の効率・最適性までも考慮した作業分担決定手法の開発、本アルゴリズムの実際のロボットへの搭載などが今後の課題である。
 

コメント    :
 
 

原論文1 Data source 1:
通信を用いた分散的管理に基づく複数の自律型ロボットの協調的作業分担決定手法
淺間 一、尾崎 功一、松元 明弘、石田 慶樹、遠藤 勲
理化学研究所、東洋大学工学部、東京大学工学部
日本ロボット学会誌 10 (1992) pp. 955-963

原論文2 Data source 2:
Development of Task Assignment System Using Communication for Multiple Autonomous Robots
H. Asama, K. Ozaki, A. Matsumoto, Y. Ishida, and I. Endo
The Institute of Physical and Chemical Research (RIKEN), Toyo Univ., The Univ. of Tokyo
Journal of Robotics and Mechatronics 4 (1992) pp. 122-127

原論文3 Data source 3:
Design of an Autonomous and Distributed Robot System: ACTRESS
H. Asama, A. Matsumoto, and Y. Ishida
The Institute of Physical and Chemical Research (RIKEN), Toyo Univ., The Univ. of Tokyo
Proceedings of 1989 IEEE/RSJ Int. Workshop on Intelligent Robots and Systems (1989) pp. 283-290

原論文4 Data source 4:
Communication in the Autonomous and Decentralized Robot System ACTRESS
A. Matsumoto, H. Asama, Y. Ishida, K. Ozaki, and I. Endo
The Institute of Physical and Chemical Research (RIKEN), Toyo Univ., The Univ. of Tokyo
Proceedings of 1990 IEEE/RSJ Int. Workshop on Intelligent Robots and Systems
(1990) pp. 835-840

キーワード:作業割当て、多数台自律ロボット、分散管理、通信、協調問題解決
Task assignment, Multiple autonomous robots, Decentralized management, Communication, Cooperative problem solving
分類コード:120203

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