レーザ照射によるセラミックス系中性子遮蔽材料の熱衝撃強度評価

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作成： 1999/10/14 秋山　繁データ番号　　　：110078 レーザ照射によるセラミックス系中性子遮蔽材料の熱衝撃強度評価目的　　　　　　：レーザ照射によるセラミックス材料の熱衝撃強度評価研究実施機関名　：船舶技術研究所材料加工部強度評価研究室応用分野　　　　：材料一般の熱衝撃強度評価、材料欠陥検出概要　　　　　　：　炭酸ガスレーザをセラミックス系遮蔽材料に単位時間(1秒間)照射し、材料表面のレーザスポット径に依存しない材料が破壊する最小エネルギー密度を求めて、セラミックス系遮蔽材料の熱衝撃強度を評価する手法を提案した。　詳細説明　　　　：　舶用動力や海中作業用動力として原子力を利用するためには、スペースおよび重量の制限内で所要の放射線遮蔽性能を達成しなければならない。そのため、遮蔽特性だけでなく耐熱強度を含む構造強度特性にも優れた材料の開発が望まれる。セラミックスは耐熱性に優れた材料であり、また遮蔽性能に優れた元素の組み合わせも可能であるため、中性子遮蔽材料としてホウ化チタン(TiB₂)、炭化クロム(Cr₃C₂)等の検討を行った。しかし、セラミックスは一般に脆性材料であり、耐熱性には優れているが熱衝撃に対しては問題があると考えられている。従来より、セラミックスの熱衝撃強度評価法としては、加熱したセラミックス試験片を水中に投下し、急冷した後に曲げ試験を行い、曲げ強度が急激に低下する臨界温度差を用いて評価する水中急冷法が用いられている。　　しかし、水中急冷法では、試料落下中に試料表面に形成される蒸気膜や落下速度、落下高さ、試料の密度等の影響によって熱伝達係数が大きく変化したり、複数の臨界温度差が得られるなどのため、臨界温度差が不明確になる場合が多い。特に、急冷初期に生じる沸騰熱伝達の変化は、試料に誘起する熱応力に著しい影響を与える。これに比べ、レーザ熱衝撃強度試験法は、簡便なこと、高い熱流束が得られること、熱伝達係数の変動が小さいなどの多くの利点を有する。そのため、近年、レーザ照射によるセラミックス材料の熱衝撃強度の研究が行われているが、まだ定量的なデータは十分ではなく、評価法として確立されていないのが現状である。　　図1にレーザ熱衝撃強度試験法を示す。試験片寸法が一定の元で、炭酸ガスレーザのスポット径と出力密度を変えて、ディフォーカスビームを試験片表面に単位時間(1秒間)照射し、試験片にき裂が生じる臨界出力密度(エネルギー密度)を求める。そして、スポット径に依存しない最低の臨界出力密度を指標として、材料の熱衝撃強度を評価する。あるいは、一定のスポット径に対する臨界出力密度を指標として、材料の相対的な熱衝撃強度を評価することも可能である。き裂発生の確認・検出は、走査型電子顕微鏡、浸透探傷試験およびAE(Acoustic Emission)計測装置によって行った。図1　Setup of thermal shock test with CO₂ laser.（原論文1より引用）　また、レーザ熱衝撃強度試験の有効性を確認するため、有限要素法(FEM: Finite Element Method)による弾性熱応力解析を行った。解析モデルは、半無限体モデルおよび試験片と同じ寸法のモデルを用いた。最大熱応力が材料の引張強さあるいは圧縮強さを超えるとき材料が破壊すると考えて、図2の白丸印で表される臨界出力密度を求め、スポット径との関係を表すと、半無限体モデルの解析においては、種々のセラミックス材料について図3の結果が得られた。図3よりスポット径に依存しない最低の臨界出力密度P_L(W/mm²)を求めると、ホウ化チタン(TiB₂)P_L=16.5 W/mm²、炭化クロム(Cr₃C₂)P_L=3.4 W/mm²、アルミナ(Al₂O₃)P_L=2.9 W/mm²、マコール(商品名：MACOR、石原薬品㈱製)P_L=0.62 W/mm²となった。図2　Relationship between maximum stress and spot diameter. 図3　Critical fracture curves for various ceramics by FEM calculation. 　これらの結果より、この最低の臨界出力密度P_Lをもって熱衝撃強度の指標とすることができることがわかった。ただし、解析には、熱衝撃強度に対する寸法効果が無視できる半無限体モデルを採用すべきであると考える。また、ホウ化チタンの熱衝撃強度は、アルミナの約5.7倍となり、非常に高い熱衝撃強度特性を示した。よって、熱衝撃を受ける環境においては、ホウ化チタンは中性子遮蔽材料として有力であることがわかった。　コメント　　　　：　材料に初期欠陥が存在したり、気孔率が大きい場合は、試験結果から得られた熱衝撃強度は、試験片と同じ寸法モデルの有限要素法解析の結果より小さくなる傾向が得られた。この特性を利用して、レーザ熱衝撃強度試験法は、定量的な検討が必要であるが、セラミックス材料の品質評価や欠陥の検出に応用できるものと考えられる。　原論文１ Data source 1：レーザ照射によるセラミックスの熱衝撃疲労強度に関する研究秋山　繁、天田　重庚、島田　道男、千田　哲也、古谷　典ゆき船舶技術研究所、東京都三鷹市新川6-38-1 日本機械学会論文集(A編) 63巻 614号 (1997-10) pp. 2129-2134. 参考資料１ Reference 1：中性子遮蔽に対するセラミックスの適用に関する研究　-多機能遮蔽材料の提案- 千田　哲也、秋山　繁、松岡　一祥、植木　紘太郎、大橋　厚人、天田　重庚船舶技術研究所船舶技術研究所報告、36-4 (1999). キーワード：熱衝撃強度、セラミックス、中性子遮蔽材料、レーザ thermal shock strength, ceramics, neutron shielding material, laser 分類コード：110403, 110503
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