Ni-Cr-W超合金の開発と高温構造物への応用

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作成： 1999/10/06 辻　宏和データ番号　　　：110033 Ni-Cr-W超合金の開発と高温構造物への応用目的　　　　　　：1000℃級の高温構造材料として使用可能な超合金の開発研究実施機関名　：日本原子力研究所複合環境材料研究グループ応用分野　　　　：高温ガス炉、宇宙、燃料電池、化学プラント概要　　　　　　：　原子炉出口冷却材温度1000℃級高温ガス炉の高温部構造材料として用いる超耐熱合金の開発に取り組んだ。Ni-Cr-Wの3元系合金を採用し、α₂-W相の析出による高温強度向上の機構を利用するとともに、製造性と高温耐久性関連の諸特性に及ぼす微量添加元素の影響を系統的に調べた。その結果、製造性にも優れ、高温耐久性関連の諸特性を均衝よく具備している新しいNi-Cr-W系超耐熱合金の開発に成功した。　詳細説明　　　　：　核熱を産業プロセスに直接利用しようとする場合、より高温のヘリウムガスを炉外に取り出せるほど、カスケード的な利用価値が生じる。そのためには、高温部構造用耐熱合金の性能を現行技術水準よりもさらに向上させる必要がある。そこで、原子炉出口冷却材温度1000℃級高温ガス炉の高温部構造用超耐熱合金の開発に取り組んだ。超耐熱合金を開発するに当たって、主要な目標性能を下記のとおりに設定した。　 ① 1000℃で1×10⁵時間のクリープ破断強さが9.8MPa以上であること(通商産業省工業技術院の大型プロジェクト計画開発目標相当以上)。 ② 高温ガス炉1次冷却材を模擬した不純物組成を有する材料試験用標準ヘリウムガス中において、1000℃で10⁵時間の加熱後も粒界侵食や内部酸化傾向が少ないこと(ハステロイXR相当以上)。 ③ 原子炉の熱交換器用伝熱管(外径 32mm、厚さ4～5mm程度で長さが7m以上)の加工が可能であること。 ④ 熱交換器の製作に必要な二次加工および溶接施工が可能であること。　　この開発プログラムでは、これらの各目標性能を同時に均衝よく具備している超耐熱合金の開発を目指した。　　第1ステップにおいては、通商産業省工業技術院の大型プロジェクト計画の成果を踏まえて、Ni-Cr-Wの3元系合金を採用し、α₂-W相の析出による高温強度向上の機構を利用することとした。そこで、α₂-W相が析出するような化学組成領域にある合金の熱間加工性、引張特性、クリープ破断特性、標準ヘリウムガス中の耐食性等の検討を行った。その結果、基本となるNi-Cr-W組成比の最適値がNi-18～19mass% Cr-20～22mass%Wであるという結論を得た。　　第2ステップにおいては、この最適なNi-Cr-W組成比を有する合金の熱間加工性、時効前後の引張特性、クリープ破断特性、標準ヘリウムガス中の耐食性等に及ぼすC, Nb, Fe, Mn, Si, B, Y, Ti等の微量添加元素の影響を系統的に検討した。図1は、この検討過程で得た結果のうち、クリープ破断強度と添加元素量の間の重回帰分析による予測クリープ破断強度と実験データからの外挿値の関係を示したものである。いずれの特性についても、この例と同様に、重回帰分析による予測値と実験値はよい一致をみた。これらの結果に基づいて、微量のBとYを添加して高温強度と標準ヘリウムガス中の耐食性を確保することを特徴とする新合金の化学組成を提案した。この新合金と従来の耐熱合金の特性比較を半定量的に示すと図2のようになり、このプログラムで開発された新合金が、高温耐久性関連の諸特性を均衝よく具備していることが分かる。図1　Relation between extrapolated 1000℃/10⁵h creep rupture strength from experimental values and predicted strength. (原論文3のFig.6の引用). Copyright 1994, with kind permission from Kluwer Academic Publishers. 図2　Comparison of newly developed Ni-Cr-W superalloy with the existing high-temperature alloys. (原論文3のFig.6の引用). Copyright 1994, with kind permission from Kluwer Academic Publishers. 　さらに、第3ステップにおいて、この新合金を工業規模(2トン)で溶製し、原子炉の熱交換器用伝熱管を想定した継ぎ目無し管の試作を行った。その結果、この新合金は、熱間加工性、冷間加工性ともに継ぎ目無し管の製造が可能な特性を有していることが確認できた。　コメント　　　　：　この研究で開発された超耐熱合金は、すでに日米で特許が認められた。この超耐熱合金は、製造性に優れ、かつ高温の耐久性関連の諸特性が均衡良く優れた合金である。鍛造が可能な高温構造用材料としては世界で最も高い高温強度を有した合金であることから、高温ガス炉のような原子力分野のみならず、非原子力分野への応用も期待される。また、本研究の延長上で実施した当該合金用溶接技術の開発研究もかなりの成果をあげてきており、近くその技術を公開できる見通しである。　原論文１ Data source 1： Effects of Minor Elements on High Temperature Properties and Producibility of Ni-Cr-W Superalloys for HTGR Application Hirokazu Tsuji, Hajime Nakajima and Tatsuo Kondo Japan Atomic Energy Research Institute, Shirakata Shirane 2-4, Tokai-mura, Naka-gun, Ibaraki-ken, 319-1195 Japan Proceedings of the 2nd ASME/JSME International Conference on Nuclear Engineering, ASME/JSME (USA/Japan) (1993) pp. 167-172. 原論文２ Data source 2： Prediction of High-Temperature Properties and Producibility of Ni-Cr-W Superalloys by Multiple Regression Analyses Hirokazu Tsuji, Hajime Nakajima and Tatsuo Kondo Japan Atomic Energy Research Institute, Shirakata Shirane 2-4, Tokai-mura, Naka-gun, Ibaraki-ken, 319-1195 Japan Proceedings of International Conference on Computer-Assisted Material Design and Process Somulation, ISIJ (Japan) (1993) pp. 398-403. 原論文３ Data source 3： Development of a New Ni-Cr-W Superalloy for Application to High Temperature Structures Hirokazu Tsuji, Hajime Nakajima and Tatsuo Kondo Japan Atomic Energy Research Institute, Shirakata Shirane 2-4, Tokai-mura, Naka-gun, Ibaraki-ken, 319-1195 Japan D. Coutsouradis et al. (eds.), Materials for Advanced Power Engineering, Part I, pp. 939-948, Kluwer Academic Publishers (Netherlands) (1994). キーワード：高温ガス炉、超耐熱合金、ニッケル基合金、構造材料、製造性、クリープ、腐食、高温強度 HTGR, superalloy, nickel-base alloy, structural material, producibility, creep, corrosion, high-temperature strength 分類コード：110201, 110501, 110502
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