D. 機械部品等の非破壊健全性評価


残留応力測定法の開発  
 
  1. 材料強度とミクロ組織因子の定量的関係の解明 (JRR-3, RESA-T)

    材料の機械的性質はミクロ組織に依存するのでそれを定量的に解明する実験である。中性子回折プロファイル解析ソフトの開発を行い、中性子回折実験で得た回折プロファイルからひずみ、粒径、転位密度を導出した。解析ソフトは、バックグラウンド評価について改良する必要があるが、今後企業における材料研究に利用されることが望まれる。


  2. 工業用鋳造製品の残留応力測定法の開発(粗大結晶粒組織Al合金部品T6処理材の中性子残留応力測定法の検討) (JRR-3, RESA-T)

    結晶粒が大きく数が少ない試料の残留応力の測定例である。試料を3方向各主軸についてそれぞれ±3〜±5傾けて揺動することで、回折角度の中心値がほぼ一定値に収束し、良好な残留応力測定ができた。粗大結晶粒を有する部品の残留応力測定には揺動法が有用であることが示された。


  3. 圧痕法による残留応力測定法の開発 (JRR-3, RESA-T)

    残留応力評価部近傍に鋼球を押付け局部的な塑性変形を発生させることによって評価部に圧縮応力を発生させひずみ挙動を計測することで元の残留応力を求める手法を検証するため、鋼球加圧時に試験体内部に発生する応力を中性子回折により測定した。試験体評価面表面に引張りおよび圧縮の残留応力を入れた2試験体を用意。無負荷状態と鋼球加圧状態について測定し、両者の差から応力変化を求めた。引張残留応力を有する試験体の方が圧縮残留応力試験片と比べ大きな圧縮応力変化が出た。圧痕法は可能ではあるが、素材、降伏条件等の違いによる因子が残留応力評価に加わるとしている。


  4. 表面層における残留応力分布の測定技術の開発 (JRR-3, RESA-U)

    RESA-U では入射中性子強度が低いために,精度よく定量的に評価することはできなかったが,みかけのピークシフト量は試料表面の曲率の影響を受けないことが分かった. つまり、試料表面の曲率は表面近傍の応力に影響していなかったことを示唆している。

 

溶接部材の残留応力  
 
  1. 建設機械における溶接構造物の溶接内部歪み分布評価 (JRR-3, RESA-T)

    FEMによる歪分布の妥当性の検証が目的。引っ張り歪500μの負荷が有りと無しについて格子面間隔分布図を中性子回折により測定した。FEMの結果と比較し、傾向が異なる部分もあり有益な情報を得た。


  2. 建設機械における溶接構造物の溶接内部歪分布評価 (JRR-3, RESA-T)

    FEM(有限要素法)による歪分布の妥当性の検証と疲労寿命設計指針作成が目的。2試験片について引っ張り歪500μおよび200μそれぞれの負荷有りと無しについて歪分布図を中性子回折により測定した。FEMの結果と同様な傾向を示した。妥当性が検証できた。


  3. 溶接部における残留応力の測定 (JRR-3, RESA-U)

    残留ひずみ測定を測定した結果、熱処理による残留応力の低減効果を確認することができた。


  4. 極厚板突合せ溶接部の残留応力測定 (JRR-3, RESA-1)

    極厚板突合せ溶接について溶接後熱処理が溶接部残留応力に与える低減効果を定量的に確認することが目的。ボイラ用炭素鋼の突合せ溶接試験体を2体作製。そのうち1体を625℃で2時間熱処理。2体を中性子回折法により残留応力を測定。結果は定量的で明らかな低減効果が示された。


  5. 980MPa級溶接継ぎ手の残留応力測定 (JRR-3, RESA-U)

    1000MPaを超える引張強度を有する溶接継ぎ手について中性子回折により残留応力分布を測定した。溶接中心部付近の狭い範囲で残留応力分布に大きな変化があることが分かった。


  6. Ni−Cr系厚肉高強度溶接金属の残留応力分布解析 (JRR-3, RESA-1)

    高強度厚肉鋼板をNi−Cr系溶接材を使ってMIG溶接した試験体のNi−Cr系溶接金属部分について中性子回折により残留応力分布を測定した。溶接金属内部の残留応力は低いことが明らかになり、Ni−Cr系溶接金属が残留応力低減に有効であることが確認できた。


  7. アルミ合金溶接部の残留応力の解析 (JRR-3, RESA-1)

    アルミ鋳造部品およびプレス部品を溶接により組み立てた二輪車アルミフレーム実体について、中性子回折により溶接部内部の残留応力を測定した。また無ひずみの比較サンプルとして同一のフレーム実体から溶接部を切り取り、残留応力を測定した。溶接ビード内に残留応力が生じていることがわかった。


  8. ボイラー水管溶接部の残留応力測定 (JRR-3, RESA-1)

    溶接後焼鈍した缶体と焼鈍してない缶体について水管と管寄板の溶接部周辺の軸方向、半径方向、周方向の歪を中性子回折法で測定し各方向の残留応力分布を求めた。焼鈍は水管端部および水管絞り加工部の残留応力の低減に顕著な効果があった。ヘッダ部のプレス加工による曲げが最も厳しい部位の残留応力は顕著な低減効果がないことがわかった。


  9. 配管周溶接継手の残留応力測定 (JRR-3, RESA-T)

    原子力プラントの配管溶接継手を模擬した試験片を、長手方向と板厚方向について溶接残留応力分布の測定をした。また、強加工曲がり配管を模擬した試験片を板厚方向について半径方向、周方向、軸方向の3成分の残留応力分布の測定をした。従来の非破壊法では測定できなかった内部の残留応力が測定できた。その意義は大きい。

 
   
ロケット燃焼器の残留応力  
 
  1. 液体ロケット再生冷却燃焼器の残留応力評価 (JRR-3, RESA-T)

    繰返し燃焼試験が実施された後、内面観察のため切断された燃焼器について残留歪を測定した。結果はFEM解析と概ね一致し、液体ロケット再生冷却燃焼器への適用性が確認された。また、繰返し燃焼試験が実施される前の燃焼器について残留歪を測定した。同様に、液体ロケット再生冷却燃焼器への適用性が確認できた。


  2. ロケット再生冷却燃焼器の残留ひずみ分布の評価 (JRR-3, RESA-T)

    ロケットエンジン燃焼器内部の残留ひずみ分布の測定について検討を行った。外面からは見えない燃焼器内部の冷却溝の位置を把握する方法を確立し,残留ひずみ分布が測定可能であることがわかった。

  3. ロケット再生冷却燃焼器の残留ひずみ分布の評価 (JRR-3, RESA-T)

    燃焼試験実施後の燃焼器について残留ひずみ分布の測定を試みた。回折角のばらつきの幅から測定時間の目安を得た。また、揺動法を試し、回折角のばらつきの幅が小さくなることがわかった。

  4. 液体ロケット再生冷却燃焼器の残留ひずみ分布の評価 (JRR-3, RESA-T)

    FEM解析の評価を目的に残留ひずみの測定をおこなった。FEM解析の結果は測定値より若干大きい傾向を示していることが判明し、解析に使用しているパラメータの再評価に役立てられる。

 
     
  その他部材の残留応力  
 
  1. 浸炭材の深さ方向残留応力分布測定 (JRR-3, RESA-T)

    転動機械部品の転動疲労に対する耐久性向上に利用されている浸炭硬化処理に関する実験で、有効硬化深さが4mm と2mmの試料について中性子回折を測定し、残留応力と格子定数の深さ方向分布を求めた。4mmの試料について浸炭層深さ近傍について有効な情報が得られた。2mmの試料の結果は期待はずれに終わった。


  2. 浸炭炭素鋼の格子定数と残留歪み変化の測定(中性子回折による浸炭炭素鋼の残留ひずみ測定)(JRR-3, RESA-T)

    浸炭処理は残留応力により部品形状が大きく変化し後加工を必要とする。この問題を解決する目的で浸炭処理を施した歯車について中性子回折を実施し、格子面間隔、歯車の半径方向とピッチ円周方向の残留ひずみの分布のデータを得た。浸炭部品の工程管理の観点で評価される結果であった。


  3. 発電機の軸材の残留応力と疲労損傷の評価 (JRR-3, MUSASI)

    発電機軸材を模擬する試験片を作り、引張圧縮試験により3段階の疲労を加えた。中性子回折装置を用いて回折線プロフィル(半価幅)を測定した。得られた半価幅と疲労度との関係が得られ、軸方向と半径方向で反対の傾向があることがわかった。


  4. 構造物内部のボルトの軸力測定 (JRR-3, RESA-T)

    アルミ中空円筒にM8ボルトを締結したものを試験片とした。中性子回折実験により、ボルトの軸力の関数として応力の変化を測定した。結果は負荷公称応力とよく一致した。ボルトの軸力を非破壊的測定できるとわかった。


  5. 鉄系焼結部品の内部歪分布の測定 (JRR-3, RESA-T)

    鉄系焼結材はエレクトロニクス製品等の支持構造部品に使われており、寸法や硬度などの特性の精度向上・把握が要求されている。そこで、プロセス条件による内部歪の制御を考えた。α-Feの粉末をプレスした試験片とプレス後焼結した試験片を中性子回折により格子面間隔を測定し、内部歪について10-4レベルの精度が得られることがわかった。


  6. 鉄筋コンクリート中の応力測定に関する研究 (JRR-3, RESA-T)

    細長いコンクリートの中心に開けた直径20mmの穴に直径16mmの鉄筋を通し、無負荷,2t,4tで加圧した場合のコンクリート中の応力を測定した。高い精度で鉄筋応力が測定できることがわかった。


  7. 残留応力測定用中性子回折装置の建築分野への適用可能性 (JRR-3, RESA-U)

    木材試験体については釘を打った後の回折角の時間変化を測定。鋼材試験体については残留歪と回折角分布の関係を測定。ゴム試験体については中性子の透過強度を測定した。以上建築分野への適用のための基礎情報を得るための一連の試行実験を実施できた。


  8. 超耐熱合金の切削加工面の残留応力測定 (JRR-3, RESA-U)

    インコネル718のブロックの4表面にそれぞれ異なる条件で切削加工を施した4つの加工面に対して中性子回折により残留応力分布を測定した。どのサンプル(加工面)も、深さ0.5から1.5mmの測定範囲で、±50MPa程度の範囲に収まっていた。深さ0.5mmより深い内部では切削加工の影響はないと判断してよいことが確認できた。


  9. コールドスプレー皮膜の残留応力測定 (JRR-3, RESA-U)

    鋳鉄基板にコールドスプレー法にてニッケル粉末を2,5,10mm積層した3試料と基板から剥離したニッケル皮膜試料について、中性子回折を行い、残留応力分布を求めた。5,10mmのサンプルでは表面層下で面内圧力が、界面に近づくに従い引っ張り側に変化する傾向が確認された。10mmのサンプルがより顕著であることがわかった。


  10. 金属材料にコーティングした厚膜(厚さ5mm)の内部ひずみ分布 (JRR-3, RESA-U)

    鋳鉄基板にコールドスプレー法にてニッケル粉末を5mm積層した試料について、中性子回折による残留応力分布を測定し、熱処理の効果を調べた。673Kで残留応力分が下がり、1073Kでさらに下がる傾向があることがわかった。


  11. 鉄道用レールの残留応力測定 (JRR-3, RESA-U)

    実使用レールの頭部表層の格子ひずみおよび集合組織の評価のため、レール頭部表層から約1mm厚 の小板を採取し、それらを積層させた試料について中性子回折測定を実施した。格子ひずみによる残留応力は確認できたが、集合組織の形成は確認できなかった.


  12. 鉄道車輪への中性子残留応力測定法の適用に関する研究 (JRR-3, RESA-U)

    車輪の割損に対する安全性を検討するため、FEM 解析にて内部残留応力を推定し、解析の妥当性について中性子回折法を用いて検証するための基礎的検討を行った。その結果、FEM 解析結果と良好な一致を見た。FEM 解析は、車輪内部残留応力状態を推定できるので、安全性評価に利用できることがわかった。


  13. ひび割れ近傍の付着破壊領域における鉄筋応力の非破壊測定 (JRR-3, RESA-T)

    本研究では、鉄筋コンクリートのひび割れ近傍の鉄筋応力分布を明らかにすることを目的とし、昨年度トライアルユースの成果を踏まえ、試験体精度やひび割れ導入精度の向上を図り、再度ひび割れ近傍における鉄筋コンクリート中の鉄筋応力測定を試み、詳細なデータを得た。


  14. 過大負荷による表面処理材の残留応力緩和挙動の測定 (JRR-3, RESA-T)

    レーザーピーニング表面処理によって生じた引張残留応力が存在する試験片は、引張負荷を増加していくと内部から塑性変形が始まることが明らかとなった。また、内部の塑性変形により残留応力の再配分が生じ、表面層が降伏する前に表面層の圧縮残留応力が緩和し始めることがわかった。


  15. 中性子回折法を用いた酸化物超伝導線材の非破壊分析 (J-PARC, iMATERIA

    超伝導線材Bi2Sr2Ca2Cu3Oy(=Bi2223)の原料粉末試料、および圧延前と圧延後の(Agシースに包まれた)線材試料の中性子回折スペクトルを測定した。中性子回折によりAgシース内部の結晶状態の非破壊評価が可能であることを初めて確認できた

 

 
 
集合組織観察  
 
  1. 球状黒鉛鋳鉄の強度及び切削製とミクロ組織因子の関係の解明 (JRR-3, RESA-U)

    冷却速度を変えることで組織の異なる球状黒鉛鋳鉄の試料を製作した。引張-圧縮を10回繰り返し疲労した状態の試料について中性子回折を行い、残留格子ひずみを求めた。フェライト相のみ有する2試料について、(110),(211)は引張方向、(200)は圧縮方向に残留格子ひずみが残ることが分かった。


  2. マグネシウム合金板材のプレス成形後の残留応力と集合組織の関係 (JRR-3, RESA-U)

    マグネシウム合金板材を試験片とし、MUSASIを用いてプレス成形前後の集合組織形態の変化を調べた。プレス成形前後の集合組織形態の変化は少なく、強い底面集合を有した。プレス成形後の残留応力はRESA-Uを用いて測定した。側部のひずみが大きい。等々詳しいことがわかった。