C. 多成分高分子材料の構造評価


ゴム材料  
 
  1. バルクゴム中の分子鎖の広がりと外部歪依存性の測定 (JRR-3, SANS-J-U)

    試料としてポリブタジエン(PB)、ポリイソプレン(PI)、SBR、それぞれの通常水素体および重水素体を重合した。各ゴムは重水/軽水比を変えて製作した。測定した小角中性子散乱曲線からfitting解析し分子鎖1本の慣性半径を求めた。重水/軽水比を変えることによりゴム固体中での1分子鎖の慣性半径の広がりを知ることができた。また、PBについて加硫した試料について調べた結果、慣性半径は加硫によって余り変わらなかった。


  2. 硫黄架橋ゴムの架橋構造の不均一性に関する研究 (JRR-3, SANS-J-U)

    カーボンブラック充てん系ゴムを散乱長密度の異なる重水素化トルエン/トルエン混合溶媒で膨潤させ、コントラスト変調小角中性子散乱法を用いて、カーボンブラック凝集体表面のゴムの吸着層の存在を定量的に明らかにすることを試みた.その結果,吸着層の厚みのみならず、カーボンブラック粒子の凝集構造などを明らかにすることができた。


  3. オレフィン系熱可塑性エラストマー中の架橋ゴム粒径の解析 (JRR-3, SANS-J-U)

    オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPV)を乾燥状態にした3試料を小角中性子散乱測定し、その後Dトルエンで膨潤させた試料を再度小角中性子散乱測定した。分散性が高かった3試料がトルエンで膨潤させた後は散乱曲線が近づき分散形態が同程度になることがわかった。


  4. 末端を官能基修飾した高機能ゴム材料中のフィラーの構造解析 (JRR-3, SANS-J-U)

    タイヤコンパウンド中において、末端を官能基修飾した溶液重合SBR(末端変性SBR)が架橋網目構造、補強剤(シリカ)凝集構造、相分離構造に与える影響を解明するため、小角中性子散乱測定を試みた。その結果、末端変性SBR を用いたコンパウンドでは、IR(イソプロピレンゴム) やBR(ブタジエンラバー)をブレンドすることによりシリカの高次凝集構造が変化することが明らかとなった。

 

磁性材料  
 
  1. ナノ磁性粒子窒化鉄の磁気構造解析 (JRR-3, SANS-J-U)

    始めに純鉄微粒子を試料として偏極中性子回折と中性子小角散乱を測定した。偏極中性子回折実験では1Tの磁場で試料を飽和磁化させておき偏極中性子のスピンを平行と反平行にして入射した場合の中性子の回折強度パターンを測定した。解析により磁気形状因子を求め文献値を再現していることを確認した。次にFe16N2を主成分とする窒化鉄磁性微粒子の試料を飽和磁化させておき偏極中性子小角散乱実験を行った。偏極中性子散乱強度の2次元分布をfitting解析して、純鉄の磁気形状因子及び窒化鉄磁性微粒子の表面非磁化層の平均厚さと微粒子内部磁化領域の平均半径を決定することができた。


  2. フェライト系合金の構造と機能に関する研究 (JRR-3, SANS-J-U)

    フェライト系耐熱鋼の長時間時効に伴う微細析出物の経時変化を小角中性子散乱で調べた。Crの濃度の異なる2鋼種を650℃で異なる4つの時効処理をした試料(合計8試料)について小角中性子散乱を測定した。長時間にわたる連続的な組織変化の追跡が可能であることがわかった。


  3. 工業材料の介在物、キャビティ及び第2相粒子定量測定法の開発 (JRR-3, SANS-J-U)

    Fe-C-Nb-Ni合金を熱処理によりNbC相を分散析出させた材料に水素を異なる濃度で浸透させた4試料を1Tの磁場で中性子小角散乱プロファイルを測定した。印加磁場の平行成分である核散乱、垂直成分である核散乱+磁気散乱のプロファイルを得た。水素偏析の影響がプロファイルに捉えられている可能性が高いとしている。

 
   
触媒  
  TiO2系光触媒の中性子小角散乱によるナノ構造解析 (JRR-3, SANS-J-U)

TiO2ナノシートと高触媒活性のTiO2について、光触媒活性と構造との間に相関関係を見出すため、小角中性子散乱を行った。構造については知見が得られたが、光触媒活性との相関関係は見出せなかった。


 

 
 
電池材料  
  中性子小角散乱による多孔質高分子膜の構造評価 (JRR-3, SANS-J-U)

固体高分子型燃料電池の電解質膜に使用される多孔質高分子膜について中性子小角散乱を測定し、クラスター構造について評価を行った。その結果、2つの試料で大きさや分布の異なるクラスターが存在していることが分かった。また、溶媒に重水を用い測定すると、X線小角散乱測定では得られないクラスター界面の構造が解析できる可能性があることがわかった。

 

 
 
鉄鋼材のさび  
 
  1. 橋梁用耐候性鋼材の異常さび層の健全性評価 (JRR-3, SANS-J-U)

    実橋梁より採取した異常さびを用いて、水濡れなどの条件下で、中性子散乱スペクトルを測定した。その結果、中性子散乱実験は、保護性や水濡れの影響を感度よく、検出できることがわかり、鋼材さびの健全性評価やさびの保護性機能発現メカニズム究明のツールとして有用であることがわかった。


  2. 橋梁用耐候性鋼材の生成さび層の評価 (JRR-3, SANS-J-U)

    人工さび、β-FeOOH、を用いて、生成さびの形態・性状や水濡れなどへの影響について、中性子散乱実験で調査した。その結果、さびのサイズ評価を定量的に行うことができた。また、さび構造との関連で、乾燥・湿潤実験の影響を検出できることがわかった、以上から、中性子散乱法は、鋼材さびの健全性評価やさびの保護性機能発現メカニズム究明のツールとして有用であることがわかった。

 

 
 
ソフトマター  
 
  1. 流動場における結晶性高分子の構造形成に関する研究 (JRR-3, SANS-J-U)

    中性子小角散乱法を用いて溶融延伸したバイモーダル系ポリプロピレンの形態を評価することを試みた。超高分子量をラベルした延伸試料においてシシ(高分子が伸びきった繊維状)構造に由来すると思われるストリーク散乱(延伸方向と直交する方向に伸びる散乱部分)が観測された。


  2. 皮膚角層細胞間脂質がつくるラメラ構造中の水層の解析 (JRR-3, SANS-J-U)

    4つの異なる重水/軽水比割合の水に乾燥ヒト角層を浸漬した試料を細かく砕いて中性子小角散乱測定した。散乱プロファイルは明らかな重水比割合による差を示した。長周期のラメラ構造に水が含まれていることを示唆する結果を得た。


  3. SANSによるペプチド両親媒性分子ミセル構造解析 (JRR-3, SANS-J-U)

    ペプチド両親媒性分子を水系バッファーに溶解し石英製セルに入れ、小角中性子散乱プロファイル をその場観察した。開始してから44.8℃へ温度ジャンプさせ転移を誘起させ時分割測定を行った。小角領域の散乱プロファイルの増加が観測され、小角領域の積分散乱強度と慣性半径の時間変化が求められた。次に、重水/軽水比を変えた溶媒系を用いて紐状構造の内部を調べた。温度ジャンプ誘発転移後の紐状構造はcore-shell型のミセル構造をしていることが分かった。SANSを用いることによってミセル構造の転移をその場観察することに成功した。


  4. 溶媒で膨潤したポリフェニレンサルファイドの構造解析 (JRR-3, SANS-J-U)

    d−トルエンおよびh−トルエンに浸漬したPPS樹脂と浸漬してないPPS樹脂の3試料について、熱処理有り無しの2条件で、乾燥状態にして小角中性子散乱を実施した。d−トルエンに浸漬したPPS樹脂は、ラメラ晶が確認され、熱処理有り無しで構造に差があることを示唆するデータを得た。h−トルエンに浸漬したPPS樹脂と浸漬してないPPS樹脂はラメラ晶が確認されなかった。。


  5. 中性子小角散乱法による樹脂中無機質フィラー分散状態の検討 (JRR-3, SANS-J-U)

    ポリプロピレン(PP)にフィラーとしてタルク微粒子または酸化チタン微粒子を混練した材料2種類を、電子顕微鏡等でフィラーの粒径分布測定と形状観察を行い、小角中性子散乱を実施した。小角中性子散乱の散乱プロファイルで明らかになったことは、フィラーの材質および粒径分布による大きな差異があった。平均粒径が小さかった酸化チタン微粒子の場合はqの小さい領域の散乱プロファイルから、フィラー粒子が凝集しているとの知見が得られた。


  6. せん断変形下の高分子溶液のSANS解析 (JRR-3, SANS-J-U)

    重水素ジメチルスルホキシドを溶媒として分子量30万のPAN20wt%を重合した試料と超高分子量670万のPANを0.3 wt%追加して重合した試料について、せん断速度を変えて小角中性子散乱実験を行った。超高分子の追加とせん断印加により溶液構造の不均一性(濃度のゆらぎ)が増す傾向が見られた。


  7. コロイド結晶固定高分子ゲルにおけるゲル網目の不均一性の評価 (JRR-3, SANS-J-U)

    ゲル化固定コロイド結晶の5試料について小角中性子散乱を実施した。重水を用いたコントラストマッチングによりコロイド粒子からの散乱を低減しゲルの構造を正確に把握する手法が得られた。


  8. 結晶性フッ素樹脂透明ファイバーの変形に伴う構造変化の解明 (JRR-3, SANS-J-U)

    結晶性フッ素樹脂透明ファイバーを一定の温度で延伸したとき延伸倍率を増すと散乱強度が反比例的に減少することから、延伸による透明性向上に伴い散乱強度が減少することがわかった。

 
   
その他  
 
  1. Organoclayのナノ構造解析 (JRR-3, SANS-J-U)

    Ti系とAl系のOrganoclayを試料として小角中性子散乱を測定し、円盤モデルによるフィッティングにより形状を定量的に決定することができた。


  2. 中性子回折装置用V合金ウィンドウ材の中性子線を用 いた評価 (JRR-3, SANS-J-U)

    V,V-Al,V-Cr,V-Fe,V-Niの圧延材5種類を試験。検出器を替えて、高q領域と低q領域の小角中性子散乱を測定した。いずれの試料でも有意な小角散乱が観測された。V-Feは純Vと同程度の散乱強度であり窓材などの余分な散乱がなく、中性子透過能力にも優れた材料として適していることが明らかになった。また中性子光学システム評価装置(NOP)を用いてウィンドウ材試料の偏析や粒界による小角散乱の評価を行った。V-Alで有意な微少析出物に起因する小角散乱が観測されたが、V-Niではなかった。ホルダーは結果出ず。


  3. メソポーラスシリカ水熱合成反応のin-situ中性子散乱による反応機構解明 (JRR-3, SANS-J-U)

    反応用石英セルに反応溶液と試料のシリカガラスを入れ60℃で反応を進めながら中性子小角散乱プロファイルの時間変化を測定した。基板上に形成されたメソ構造体の散乱は観測できなかったが、溶液中に浮遊するポーラスシリカの形成過程を時分割で観察することができた。